一度退職した元社員を再び雇う「アルムナイ採用」への関心が高まっています。マイナビの2026年調査では、対象企業の43.6%が実施していると回答しました。
ただ、元社員が会社へ戻ること自体は、以前からある出来事です。本人から応募する、元同僚が声をかける、会社が退職者とのネットワークを作る。同じアルムナイ採用でも、企業の関わり方は大きく異なります。
では、なぜ今、退職後もつながりを保つ制度へ投資する企業が出てきたのでしょうか。
採用競争が厳しくなる中、仕事ぶりや自社との相性を知る元社員は、有力な採用候補です。個人の縁や本人からの応募を待つだけでは、再び働ける機会を逃すことがあります。
本記事では、定義・メリット・待遇の調査に加え、企業が戻ってほしい人材と、再入社を実際の採用につなげる条件を整理します。制度を検討する経営・人事にも、退職や再入社を考える人にも、判断の材料になる内容です。
アルムナイ採用とは?出戻り・カムバック・リファラルとの違い
アルムナイ(alumni)は、英語で卒業生や同窓生を指す言葉です。人事領域では元社員・退職者を指し、その人を再び雇用することを「アルムナイ採用」と呼びます。[1]
「出戻り採用」「カムバック採用」と重なる言葉で、新しい名称が付いたからといって、すべてが新しい採用手法になるわけではありません。
企業によっては、育児・介護・転居などで退職した人向けのジョブリターン制度と、転職・起業などを経た人向けの採用制度を分けています。一方、まとめて運用する企業もあります。名称だけでなく、対象者と選考・処遇の条件を読むと実態が分かります。
アルムナイは採用対象、リファラルは採用経路
リファラル採用は、社員の知人・友人などを紹介してもらい、採用につなげる方法です。アルムナイ採用は「誰を採るか」、リファラル採用は「どう出会うか」という分類です。
在籍社員が元同僚を紹介し、その元同僚が再入社するなら、元社員の再採用であると同時に、社員紹介を経由した採用でもあります。ただし、「元上司から誘われた」という回答だけで、正式な紹介制度を利用したかまでは分かりません。
元社員を採った実績があることと、会社が退職者を継続的に採用候補として把握していることは、分けて考えられます。
同じアルムナイ採用でも、企業の関与には4つの形がある
ここでは、連絡の起点と会社の関わり方から、次の4つに整理します。公的な分類や、必ず順番に進む段階ではありません。

本人から応募があり受け入れる「出戻り」も、広い意味ではアルムナイ採用です。個人の声かけでは、元上司や同僚が関係をつなぎます。半組織的な対応では、人事や役員が個別に人を選び、声をかけます。組織的な運用では、退職者との接点や現在の経験を共有し、募集する仕事と結びつけて働きかけます。
組織的に取り組む場合も、連絡役は元同僚で構いません。違いは、人事が直接電話するかではなく、誰に何のために声をかけるかを会社として把握し、継続できるかです。
なぜ今注目?検索関心の上昇と企業が変え始めたこと
実施率43.6%でも、企業の関与度までは分からない
マイナビ「2026年3月度 中途採用・転職活動の定点調査」では、アルムナイ採用を現在実施する企業が43.6%、今後検討する企業が28.6%でした。対象は、中途採用業務に関わり、直近の採用活動や採用予定などの条件を満たす企業側回答849件です。[2]
規模別の実施率は、従業員50名以下で24.0%、51~300名で44.0%、301名以上で55.4%。調査対象では、規模が大きいほど実施が多くなっています。
これは、すべての企業の普及率でも、退職者へ組織的にスカウトしている割合でもありません。「実施している」という数字には、企業の関わり方が異なる再採用が含まれ得ます。実施率の高さだけで、新しい人材戦略が浸透したとは言い切れません。
2022年夏ごろから関心が上がり、2024年1月にはテレビでも特集
Googleトレンドで、日本の検索キーワード「アルムナイ」を見ると、2022年夏ごろから水準が上がり、2024年1月にはさらに一段高くなっています。[3]

2022年7月20日、JALは3年ぶりの業務企画職の経験者採用再開・通年化とともに、元社員向けのアルムナイ採用を発表しました。この時点で退職者ネットワークは導入検討としています。検索水準が上がり始めた時期に、大手企業の採用施策としても発信されていました。[4]
2024年1月22日には、テレビ東京系WBSがアルムナイ採用・交流を特集。JBSのネットワークや再入社した社員・チームの声が紹介され、翌朝のモーニングサテライトでも取り上げられました。[5]
検索は用語への関心を示すもので、採用件数そのものではありません。また、2022年夏の変化を一社の発表だけで説明することもできません。それでも、企業施策の発信とテレビでの紹介を重ねると、従来の出戻りが、広く知りたい人のいる採用テーマになった経緯が見えてきます。
三菱電機:再入社制度があっても、つながりがなければ機会を逃す
2024年1月18日の三菱電機の発表は、企業が何を変えようとしたかを具体的に示しています。
同社は、以前からカムバック採用を導入していました。しかし、退職後のつながりを仕組みとして維持できず、求人・求職のニーズを共有できないため、実効性が十分ではなかったと説明しています。[6]
そこで「Re-MELCO~アルムナイネットワーク~」を新設し、求人などの定期的な情報提供、直接応募、専任コーディネーターへの相談につなげました。
制度があるだけなら、本人が求人を見つけ、応募を決めるまで会社は待つことになります。関係を維持できれば、会社の仕事が変わったとき、本人が次の働き方を考えるときに、再び接点を持てます。企業が投資し始めているのは、再採用の許可だけでなく、この機会を失わない仕組みです。
アルムナイ採用のメリット|企業が元社員を再び採る合理性
仕事ぶりを知っていることが、採用の不確実性を下げる
通常の中途採用では、職歴、面接、課題などから、本人の能力や自社との相性を推測します。元社員なら、成果だけでなく、困ったときの対応、周囲との連携、得意不得意まで判断材料を持っています。
本人も、社内の意思決定や仕事の進め方を知っています。双方が実際に働いた経験を持つことが、採用の不確実性と、入社後に仕事を覚える負担を抑えます。
ここでいう費用の抑制は、元社員の給与を安くすることとは別です。募集・紹介・選考・初期育成にかかる費用や時間を減らせることが、企業側の利点になります。
マイナビ調査でも、実施企業370件が挙げた利点は、即戦力としての活躍52.2%、採用・育成費用の削減43.8%、採用ミスマッチのリスク軽減38.1%などでした。社外で身につけたスキルの還元も37.0%が挙げています。[2]

ただし、昔の評価をそのまま現在へ当てはめることはできません。事業や仕事も、本人の経験も変わります。既知の情報を出発点に、今の役割に合うかを確認する採用です。
人材不足が続くほど、既に知る人との接点を残す意味が大きくなる
採用競争が厳しくなると、求人を出すだけでは必要な人に会えず、紹介会社や広告などへの支出が増えます。その中で、仕事ぶりを知る人へ再び連絡できることの価値は相対的に高まります。
JX金属の人事担当者は、求める専門人材が市場に少なく、他社との競合や採用費用の高騰もある中で、社員と元社員という既存の接点に着目したと説明しています。[7]
個人の紹介は、その人が連絡を取り合う範囲では有効です。しかし、元上司が異動・退職した人、別部署なら力を発揮できる人、外で新たな専門性を得た人は、自然には採用候補へ上がらないことがあります。会社が関係を把握する意味は、この取りこぼしを減らすことにもあります。
こうした採用上の利点を生かす制度に、前向きな企業は増えていくと考えられます。出戻りという現象の新しさより、退職後の関係も採用活動に組み込む企業が出ている点に変化があります。
シンディオ:必要な役割を見直し、元社員を再採用
元社員を必要とし直す理由には、会社側の判断や、任せる仕事の見直しもあります。
Business Insider Japanは2026年10月7日、給与分析プラットフォームを提供するシンディオが、AIを軸とした再編で5人をレイオフした後、そのうち1人を新設された役職で再雇用したと報じています。CEOは人員削減を急ぎすぎたと認め、削減前に新しい役割へ適応する機会を与えるべきだったと振り返っています。[14]
再入社した本人は、元同僚から求人を知り、再応募しました。自主退職者が戻る場合とは事情が異なりますが、以前の職務を離れた人にも、新たに任せられる仕事があった例です。
社外で経験を積んだことだけが、元社員を再評価する理由ではありません。会社が必要とする役割を捉え直した結果、以前から知る人の能力が再び採用候補になることもあります。過去の在籍歴だけでなく、今どの仕事を任せたいかを具体的にすることが、再採用の判断につながります。
企業が戻ってほしい人材とは?過去の評価と今の役割で考える
在籍時に、成果と協働への信頼がある人
出発点は、以前よい仕事をしていた人です。何を達成したか、誰とどう連携したか、難しい状況でどのように動いたかを具体的に説明できると、再採用の理由も明確になります。
円満退職だったことと、仕事ぶりを高く評価していたことは別です。退職者全員が、会社に戻ってほしい人とは限りません。一方で、会社や上司に改善を求めたことだけを、能力や協働性の低さと同一視すると、採りたい人を見失います。
元上司の好みや「辞めた人」への感情ではなく、実際に任せていた仕事とその成果を基準に置くことが、元社員を知っている利点を生かします。
現在の仕事に合う人|能力の再発揮と、社外経験の上乗せ
大林組は、過去に活躍した人材の再採用制度としてアルムナイ採用を案内し、現在の求人条件に合う人へ選考を案内するとしています。給与も社外経験、習得した資格、実績を勘案して個別に定めています。[8]
戻ってほしい人には、二つの方向があります。
一つは、以前の力をもう一度発揮してほしい人です。家庭事情が変わって働けるようになった人や、他社を経験して元の会社が自分に合っていたと評価し直した人が考えられます。大きなキャリアアップがなくても、必要な仕事を任せられれば採用価値があります。
もう一つは、外で増やした力も発揮してほしい人です。技術、顧客対応、マネジメントなどの経験が加わり、以前より広い役割や、新しい事業の仕事を任せられる場合です。
例えば、元営業社員が他社で営業企画を経験して戻るなら、以前と同じ顧客対応に加え、営業の仕組みづくりを任せる選択肢もあります。ただし、会社が必要としているのが現場営業だけなら、経験が増えたことだけで採用が成立するわけではありません。
辞めた理由と戻る条件を説明でき、今の組織で働ける人
給与が不満で辞めた人に、以前と同じ役割・条件を提示しても、戻る理由は作りにくいでしょう。上司との関係が原因なら、別部署への配属で働きやすさが変わることがあります。育児・介護・転居などが理由なら、本人の事情と会社の働き方の両方が判断材料になります。
会社が変わる場合だけでなく、他社と比較して本人の評価が変わる場合もあります。大切なのは、以前の不満が全部消えたと装うことではなく、何が変わり、何は変わらないかを双方が理解していることです。
また、再入社時には、元部下が上司になっていたり、以前の仕事の進め方が変わっていたりします。昔の肩書きではなく、今任される役割で協働できるかが関わります。年齢が上がったことだけで判断するより、仕事と周囲への対応を具体的に見るほうが、再採用の可否につながります。
再入社の年収・待遇は下がる?調査と処遇の考え方
年収が下がる人はいるが、一律に下がるわけではない
パーソル総合研究所の2019年12月調査では、過去5年以内に元の企業へ再入社した正社員300人のうち、離職時より年収が上がった人は31.3%、変わらない人は42.3%、下がった人は26.3%でした。[9]

従業員1,000人以上の企業では、年収が下がった人が32.9%。同調査では大企業ほど年収低下の割合が高い結果でした。これは、再入社直前の勤務先ではなく、以前その会社を辞めた時との比較です。
一方、2024年に全国の再入社経験があるITエンジニア105人を調べたサーバーワークスの調査では、退職前より年収が上がった人が46.7%、変わらない人が42.9%でした。調査対象と時期が異なるため、2019年から待遇が改善したという比較にはできませんが、年収を上げて戻る採用も成立しています。[10]
「再入社だから下げる」と「役割を評価した結果下がる」は違う
以前より小さい役割や短い勤務時間を選ぶなら、年収が下がることには説明が付きます。反対に、社外で経験を積み、より大きな責任を担うなら、上げる理由があります。
再入社という理由だけで原則一段下げる運用と、現在の仕事・能力・勤務条件を評価して決める運用は異なります。同じ年収低下でも、何を基準にしたかで意味が変わります。
ただ、調査で見えるのは処遇の変化であり、低下した企業すべてが再入社者を一律に低く扱う制度を持つという結果ではありません。
また、企業から誘われた人だけが給与を上げられるとも限りません。先のITエンジニア調査では、本人からの積極的な働きかけが75.2%を占めました。年収との組み合わせは公表されていませんが、本人から動く人が多い集団にも、年収を上げて戻る人がいます。
アルムナイ採用の課題|既存社員への影響と退職に対する意識
一人を迎える条件が、残る社員の評価への疑問を生む
図で示したマイナビ調査では、実施企業が挙げる課題の上位に、既存社員との処遇差への不満41.1%、退職するハードルの低下35.9%、人間関係のトラブル34.6%が並びます。[2]
会社にとって魅力的な人材でも、高い条件で再採用すれば、残る社員から「外に出たほうが評価されるのか」という疑問が出ることがあります。一人を採用する価値だけでなく、社内全体への影響が判断に入るわけです。
しかし、再入社者の条件を低く抑えるだけでは、能力・役割と処遇のずれは解消されません。例えば、戻る人と同じ仕事を担う既存社員の給与が市場や社内の役割に対して低いなら、既存社員側の処遇も検討対象になります。
公平性は、全員を同じ給与にすることではありません。現在の仕事と貢献を、説明できる基準で評価することです。初任給引き上げと既存社員の給与差にも、採用のための条件変更が在籍社員の評価の受け止めに影響する問題があります。
退職者への感情と、制度化を避ける事情
一度辞めた人を、会社から誘うことへの抵抗もあります。プロフェッショナルバンクが2023年に顧客299人へ行った調査の自由回答には、経営層に、一度去った人を否定的に見る意識があるという声が記載されています。[11]
退職を自社への不義理と捉えるなら、会社から再び選んでほしいと伝えることは、これまでの立場を変える行動になります。そこでメンツが採用判断に入り込むことは、検討すべき問題です。ただ、処遇が下がったという結果だけで、その原因をメンツと決めることはできません。
制度化しない企業が、すべて消極的なわけでもありません。信金中央金庫の研究所がまとめた研修参加者の声には、制度は作らず、戻ってほしい人へ個別に声をかける例があります。再採用したくない人からの応募対応を避けたいという理由も挙がっています。[12]
反対に、制度化したことで、退職者への電話や情報送付を仕事として始められた例もあります。制度の有無と、会社から働きかけているかは別の軸です。
制度を採用につなげるには?関係の維持から役割の提示へ
元社員の名前だけでなく、任せたい仕事と戻る条件を把握する
企業が最初に整理したいのは、退職者の人数だけではなく、誰にどのような仕事を任せたいかです。
在籍時の仕事ぶり、退職した理由、現在の経験、今後の働き方への希望がつながると、募集する仕事との照合ができます。以前よかった人という記憶だけでは、退職後に何が変わったかを見落とします。
プロフェッショナルバンクの調査でも、当時のスキルしか分からず、その後の成長の把握が難しいという企業の声があります。過去の人物評価を持つ利点は、現在の確認を省く理由にはなりません。[11]
退職時の面談は、引き留めるか送り出すかだけで終わらせず、本人が望む範囲で、何が変われば再び働く選択肢になるかを知る接点にもなります。その理由を会社が改善できるなら、現在の社員の定着にも関わります。
名古屋銀行:個人のつながりを、人事からも届く関係へ
名古屋銀行の人事担当者は、キャリア採用目標を1.5倍へ増やした際、退職者との連絡手段が整っておらず、人事から直接働きかける手段が限られていたと説明しています。[13]
そこで、社員個人が持つ関係を人事も把握できるよう体系化し、退職者へ情報を届ける運用へ進めました。育児・介護との両立支援など、在籍当時から変わった働き方を発信するとともに、現役社員から退職者へ登録を案内する取り組みも行っています。
会社が変えた点を届ければ、以前の理由で戻れないと思っていた人が再検討できます。一方、本人が今は転職を考えていなくても、接点を残しておけば、将来その状況が変わったときに話せます。
登録者が増えたことだけで採用成功とは言えませんが、連絡できなかった状態から、仕事や条件を伝えて反応を知れる状態へ変えた事例です。
通常採用と比較し、再入社後の仕事まで見る
ネットワークには、登録管理、情報更新、連絡、面談、運営担当の時間がかかります。紹介料が減ったとしても、関係維持の費用がなくなるわけではありません。
企業が見る成果は、登録人数だけではなく、必要な職種の候補者と話せたか、応募・採用へ進んだか、採用までの費用と時間がどう変わったか、入社後に期待した仕事を担えているかです。
例えば、専門職を一人採るために多くの紹介費用を使っていた会社なら、元社員と継続して話せる価値は大きくなります。一方、戻ってほしい人が数人で、連絡も取れているなら、まず担当者と連絡の時期を決める運用から始められます。大規模なコミュニティの開設が常に出発点になるわけではありません。
再入社後も、昔を知っているから説明不要とは限りません。システム、上司、顧客、権限が変わった部分を共有し、現在の役割で働けるようにすることが、採用価値を実際の成果へ変えます。中途採用の定着と受け入れ設計は、元社員を迎える場合にも関わります。
退職・再入社を考える人が知っておきたいこと
退職した事実だけでなく、仕事と信頼の履歴が判断材料になる
会社を辞めたことだけで、再入社の可能性がなくなるわけではありません。在籍中にどのような仕事をし、何を任され、どのような信頼を築いたかが評価の材料になります。
退職を考える人にとっては、実績や担当業務を整理し、必要な引継ぎを行い、伝えられる範囲で退職理由を共有することが、後の関係にもつながります。無理に会社を褒めたり、正当な不満を隠したりするという意味ではありません。
社外で大きな成功を収めてからでなければ戻れない、とも限りません。自分が力を発揮できる仕事と条件が、会社側の必要と合えば再採用は成立します。外で経験を積んだ場合は、その経験を今の会社のどの仕事に生かせるかまで説明すると、待遇の話もしやすくなります。
戻りたい理由と、再び辞める原因を分けて考える
転職先が合わず元の会社へ戻ることも、働き方の選び直しです。ただ、転職先を離れたい理由と、元の会社なら働き続けられる理由は別です。
以前の退職原因、今の上司・仕事、評価、勤務条件を具体的に比べると、解消した部分と残る部分が分かります。生活を立て直すために戻る場合も、どの仕事を担い、どの条件で続けるかを考える材料になります。
会社側にも、変わった点を伝え、役割に合う条件を提示し、受け入れを支える仕事があります。再入社の成否を、社員の辞め方だけで説明することはできません。
他社を経験して勤務先を評価し直す視点は、副業から転職する人と、今の会社に残る人の違いにも通じます。比較した結果、戻ることも、別の職場を選ぶこともあります。
アルムナイ採用についてのFAQ
アルムナイ採用でも落ちることはありますか?合格率は高いですか?
応募条件を満たしても、現在の募集職種、能力、勤務条件が合わなければ採用されないことがあります。元社員であることと、再採用の保証は別です。
合格率は、誰へ声をかけ、どの時点を応募者として数えるかでも変わります。特定調査の採用率を、そのまま自分の合格確率にはできません。JX金属も、通常のキャリア採用と同様に選考を行い、以前の職場・職位・給与を保証するものではないと説明しています。[7]
年齢制限や勤続年数の条件はありますか?
企業・制度によって異なります。例えばJX金属の公表事例では、勤務期間1年未満の人や定年退職者を対象外としています。年齢、在籍年数、退職後の経過期間などは、応募先の現在の募集要項で確認する部分です。アルムナイ採用に全国共通の応募条件があるわけではありません。
会社への不満で辞めた人は対象外ですか?
不満があったことだけで、一律に対象外になるとは限りません。例えば大林組は自己都合退職者を対象とし、不正等による退職は除外しています。[8]
再採用の判断には、以前の仕事ぶりに加え、不満の原因と現在の職場・条件の関係が関わります。退職理由が残っている場合には、別部署や別の働き方で続けられるかを含め、双方が検討することになります。
まとめ|再入社を待つ制度から、選ばれる採用活動へ
アルムナイ採用には、以前からある出戻りや個人の紹介も含まれます。実施率が高いことだけでは、会社が組織的に働きかけているとは分かりません。
変化は、採用難を背景に、元社員との関係を維持し、仕事や会社の変化を届ける活動へ投資する企業が出てきたことです。採用機会の取りこぼしを減らし、仕事ぶりを知る人へ再び働く選択肢を提示できます。
戻ってほしいのは、単に以前いた人ではなく、過去の信頼を土台に、今の会社で任せたい仕事がある人です。以前の力を再び発揮する人も、社外経験によって役割を広げる人もいます。その違いを待遇と受け入れへ反映してこそ、再採用の価値が生まれます。
「戻りたいなら歓迎する」という制度から、「この仕事を任せたい」と伝え、選ばれる採用活動へ進めるか。企業の関与の深さは、制度の名前より、その行動に表れます。
参考資料
- [1] doda人事ジャーナル「アルムナイ採用とは?」(2025年4月30日、5月1日更新)。用語・制度の基本。本文では元社員の再採用という広い定義を採用し、企業の関与形態と区別しています。
- [2] マイナビ「2026年3月度 中途採用・転職活動の定点調査」(2026年4月30日公表、4月1~7日調査)。原表PDFの24~26ページ(ビューアーの24~26枚目)。企業側849件、利点・課題は実施企業370件の複数回答。図は数値から当サイトが作成。
- [3] Googleトレンド「アルムナイ」日本・全期間(2026年10月22日取得)。検索キーワード、全カテゴリー、ウェブ検索。2004年~取得時点の月次相対指数から2021~2025年を抜粋して作図。表示期間内で再度100へ換算していません。指数は絶対検索数・採用件数ではなく、取得条件で変わります。
- [4] JAL「3年ぶりに業務企画職の経験者採用を再開」(2022年7月20日)。アルムナイ採用の実施と、当時のネットワーク導入検討。検索変化の単独原因とは認定していません。
- [5] JBS「WBSでアルムナイ・ネットワークの取り組みが紹介」(2024年1月23日)。1月22日のWBS、23日のモーニングサテライトでの紹介内容と放送日。
- [6] 三菱電機「アルムナイネットワークを新設」PDF(2024年1月18日、1ページ)。既存カムバック採用の不足、関係維持と情報提供・応募・相談の仕組みへの変更。
- [7] TalentX「JX金属のアルムナイ制度設計とリファラル採用」(表示更新2026年3月27日)。人事担当者の登壇内容。採用上の課題、制度・選考・連絡方法。ベンダー掲載の当事者発言で、全企業の代表値ではありません。
- [8] 大林組「アルムナイ採用」。対象者、求人との照合、社外経験・資格・実績を勘案する処遇。
- [9] パーソル総合研究所「コーポレート・アルムナイに関する定量調査」(2020年6月16日公表、2019年12月20~24日調査)。原表PDF18ページ(ビューアー18枚目)。過去5年以内に再入社した正社員300名の離職時との処遇比較。図は数値から当サイトが作成。
- [10] サーバーワークス「出戻り入社に関する調査」(2024年10月23日公表、9月25~30日調査)。全国の再入社経験があるITエンジニア105人。同社社員だけの調査ではありません。年収と応募発意のクロス集計は公表されていません。
- [11] プロフェッショナルバンク「再雇用の実態に関する調査」PDF(2023年2月9~17日調査)。同社顧客299人。8~9ページの自由回答から処遇・経験把握・組織変化・退職者への意識を参照。回答例を企業全体の割合として扱っていません。
- [12] 信金中央金庫 地域・中小企業研究所「アルムナイ採用の実施動向」PDF(2024年3月18日、2ページ)。2023年度研修の意見交換に基づく例。参加者個人の意見・感想を含み、各信用金庫の正式見解や全国の実施率ではありません。
- [13] TalentX「名古屋銀行のタレントプール採用」(表示更新2026年4月1日)。人事担当者へのインタビュー。連絡手段の不足、関係の体系化、働き方の変化の発信。採用成果のうち元社員だけの人数は本文に採用していません。
- [14] Business Insider Japan「『AIリストラ』からの揺り戻し…アマゾンなどが相次いで『ブーメラン採用』を強化する理由」(2026年10月7日)。シンディオのCEOと再入社者の発言を報じた取材記事。Amazonの再採用理由とは区別しています。
本記事の文章・表・図解・グラフは、Skill Business Architecture Labが独自に編集・作成しています。引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名・サイト名・記事URLをご記載ください。


コメント