副業から転職は成功しやすい?実態と企業が学べること

副業から転職へ。働いてから会社を選び、企業も自社の人材競争力を学ぶ 組織・人材設計

面接では話が合ったのに、入社すると仕事の進め方が合わない。上司は親切そうだったのに、困ったときには相談しにくい。転職で難しいのは、条件を比較することだけでなく、働き始めないと見えない部分を判断することです。

その順番を変えるのが、副業先で働いてから入社を決める「副業から転職」という経路です。現在の仕事を続けながら、次の職場の仕事内容や人間関係を体験できる。企業も、経歴や面接での説明に加えて、実際の働きぶりを見て採用を考えられます。

副業からの転職は、相性を確かめ、納得できる職場を選ぶ方法として有力です。 調査では、副業経験者の6.7%が副業先への転職を経験し、20代では13.6%でした。副業先へ転職した人は、通常の転職者よりも入社前に職場を理解し、転職後の仕事への前向きさも高い結果が出ています。[1]

もっとも、副業の成果が必ず転職である必要はありません。他社を知った結果、今の会社に残る判断もあります。この記事では副業転職の実態、メリットと進め方を整理したうえで、経営にとっても副業が「自社は働く人からどう評価されるのか」を確かめる機会になる理由を考えます。

  1. 副業から転職する「お試し転職」とは
    1. カジュアル面談やリファラルと何が違う?
    2. 副業契約から正社員へ自動的に変わるわけではない
  2. 副業から転職する人はどれくらい?年代と受入企業の実態
    1. 副業経験者の6.7%、20代では13.6%が副業先へ転職
    2. 受入企業の55.6%に転職の受入実績がある
    3. 副業をする人と、受け入れる企業の接点も広がっている
  3. どんな副業が転職の接点になる?IT以外の仕事内容も確認
    1. 副業はエンジニアやデザイナーだけの働き方ではない
    2. 転職の判断材料が増えるのは、仕事と人を知れる関わり
  4. 副業先に転職するメリットは、実際の仕事と人を知って選べること
    1. 入社の決め手は、信頼関係と仕事内容への理解
    2. お試し転職を求める意向は、以前から表れている
    3. 通常の転職より、入社前の理解と転職後の評価が高い
  5. 副業から転職を目指すには?案件探しと入社条件の確認
    1. 紹介や副業求人から、仕事を通じた接点をつくる
    2. 副業で見えた仕事と、正社員になって任される仕事をつなげる
    3. 両立の負担は、相性確認の価値とは別に管理する
  6. 副業は転職を増やすだけではない|今の会社を再評価して残る人も
    1. 社外に求めていたものを得られれば、本業を続けられる
    2. 外を経験して、自社の良さに気づくこともある
  7. 副業禁止で人材流出を防げるか?採用と定着の関係
    1. 副業を制限すること自体が、会社を選ぶ理由になる
    2. 採用を続けても、人材不足が解消しない理由
  8. 経営は副業を、自社の人材競争力を知る機会にもできる
    1. 送り出す社員と、受け入れる他社社員の両方から見えるもの
    2. 他社と同程度なら、改善しない判断にも根拠ができる
    3. ビジョンだけでなく、仕事・成長・報酬の実態が比較される
  9. 副業から転職についてのFAQ
    1. 最初から転職するつもりがなくても、副業先へ転職できますか?
    2. 副業先から正社員として誘われたら、何を確認するとよいですか?
    3. 正社員でも、副業から転職を目指せますか?
    4. 副業を経験して転職しない判断にも意味がありますか?
  10. まとめ|働いて選ぶ人が増えると、職場の中身が比較される
  11. 参考資料

副業から転職する「お試し転職」とは

副業転職とは、本業を持ちながら別の企業で副業し、その企業へ転職することです。先に仕事を経験できることから、「お試し転職」とも呼ばれます。

例えば、会社員が週に数時間、別企業の広告運用やシステム開発を担当する。仕事を続けるうちに企業から入社を打診され、本人も仕事内容やチームを気に入り、正社員として加わる。最初から転職先を探していた場合も、追加収入や経験を求めて始めた場合も考えられます。

ポイントは、退職前に別の会社の仕事を経験できることです。「副業ができる会社を探して転職する」「副業で身につけたスキルを別企業への応募に生かす」とも関係しますが、本記事の中心は、実際に働いた副業先への入社です。

カジュアル面談やリファラルと何が違う?

カジュアル面談では、選考前に仕事内容や会社への理解を深められます。リファラル採用では、社員の紹介を通じ、求人票だけでは分からない情報を得やすくなります。

副業では、話を聞くことに加え、実際の業務を一緒に進めます。納期が厳しいときに誰が判断するのか。提案が通らない場合に理由が説明されるのか。現場が困ったときに上司が動くのか。会社紹介では伝わりにくい日常の対応も、判断材料に加わります。

接点 主に得られる判断材料
面接・カジュアル面談 会社や候補者の説明、質問への回答、会話の印象
社員からの紹介・リファラル 紹介者が知る社内事情、仕事や候補者への評価
副業として一緒に働く 納品物、連携、判断の仕方、問題が起きたときの対応

リファラルと副業は、どちらか一方を選ぶ関係ではありません。紹介で出会い、副業で一緒に働き、その後に入社を検討することもできます。紹介は出会い方、副業は関係の深め方と考えると整理しやすくなります。

学生のインターンに近い面がありますが、副業では、すでに職業経験がある人が仕事を担うケースも多くなります。会社を知るだけでなく、本人が何を提供できるかも実務で示せる点が特徴です。

副業契約から正社員へ自動的に変わるわけではない

副業先との関係が良くても、その会社に正社員の採用枠があるとは限りません。企業が入社を希望しても、本人は副業のまま関わりたい場合もあります。

そのため、副業転職は「一定期間働けば正社員になれる制度」というより、働く経験を土台に、双方が採用・転職を判断する経路です。入社する際の役割、給与、勤務条件は、改めて合意することになります。

副業から転職する人はどれくらい?年代と受入企業の実態

副業経験者の6.7%、20代では13.6%が副業先へ転職

パーソル総合研究所が2025年8月に実施した「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」では、副業経験者4,998人の6.7%が、副業先の企業へ転職した経験があると回答しました。年代別では20代が最も高くなっています。[1・31ページ]

副業先への転職経験は全体6.7%、20代13.6%、30代9.0%、40代6.5%、50代4.9%、60代5.3%。各年代の副業経験者に占める割合
図をタップ・クリックすると拡大できます。
副業経験者の年代 副業先へ転職した経験がある割合
全体 6.7%
20代 13.6%
30代 9.0%
40代 6.5%
50代 4.9%
60代 5.3%

出典:[1]。各年代内の経験率。対象人数は20代273人、30代984人、40代1,360人、50代1,406人、60代975人です。

これは「副業を始めると何%の確率で転職が成功するか」ではなく、これまでの経験を尋ねた数字です。それでも、20代では約7~8人に1人が、副業先への転職を経験していることになります。

受入企業の55.6%に転職の受入実績がある

企業側では、副業人材を受け入れる444社の55.6%が、他社の副業人材に自社へ転職してもらった経験があると回答しています。2023年の48.6%から7.0ポイント上昇しました。[1・32ページ]

この数字は、副業で働いた人の半分が入社したという意味ではありません。100人受け入れて1人が入社した企業も、1人受け入れてその1人が入社した企業も、「経験あり」に含まれます。人数の内訳まで見ると、次のようになります。

自社へ転職してきた副業人材の人数 副業受入企業に占める割合
全くいない 44.4%
1人 10.1%
2人 13.3%
3~5人ほど 18.2%
6人以上 14.0%

出典:[1]、2025年調査、副業受入企業444社。丸め処理により合計は100%と一致しない場合があります。

1人だけの受入実績に限らず、複数人を採用している企業もあります。一方、受け入れた副業人材の総数はこの表にはないため、採用への移行率は計算できません。副業を採用経路として活用する企業が一定数存在する、と読む数字です。

副業をする人と、受け入れる企業の接点も広がっている

同調査における20~50代の正社員の副業実施率は、2018年10.7%、2021年9.1%、2023年7.0%、2025年11.0%でした。一直線に増え続けたわけではなく、2025年調査で上昇に転じています。[1・21ページ]

企業の副業容認率は2023年60.9%から2025年64.3%、外部の副業人材を受け入れる企業の割合は24.4%から29.1%へ上がりました。[1]

自社の社員が外で働くことを認める動きと、他社の社員に仕事を依頼する動きが、両側から接点を広げています。そこに採用が加わると、副業は仕事の発注だけでなく、人材と企業が継続的に知り合う場にもなります。

どんな副業が転職の接点になる?IT以外の仕事内容も確認

副業はエンジニアやデザイナーだけの働き方ではない

副業という言葉には、専門スキルを使った受託業務、店舗での仕事、自分で営むサイトやネット販売など、異なる働き方が含まれます。2025年調査の仕事内容は次の通りです。[1・23ページ]

副業の仕事内容 2025年の回答割合
専門系職種 23.0%
Webサイト運営 21.6%
事務・サービス・サポート系職種 14.7%
eコマース 10.7%
IT系技術・クリエイティブ職種 10.6%
医療・福祉・教育系職種 10.5%
配送・物流系職種 9.9%
バックオフィス 6.6%
マーケティング・企画系職種 3.7%
営業系職種 3.6%
生産・管理・製造系職種 2.0%
その他の職種 22.1%

出典:[1]。20~50代正社員の副業実施者。複数の仕事内容が含まれ、構成比として足し合わせる表ではありません。専門系にはWebライター、データサイエンティスト、通訳・ガイドなど、その他には軽作業、警備・清掃・ビル管理などを含みます。

医療・福祉・教育系には医療系専門職、ヘルパー、講師、保育士なども含まれます。副業で専門性を提供できるのは、デジタル分野だけではありません。

ただし、この表は副業の仕事内容を示すもので、本業と同じスキルを使った割合を示すものではありません。また、ブログやネットショップを個人で営む場合と、企業のチームに加わって働く場合では、採用へのつながり方が違います。

転職の判断材料が増えるのは、仕事と人を知れる関わり

副業先への転職を考える場合は、収入額だけでなく、その関わり方から何が分かるかが重要になります。

例えば、制作物を一度納品するだけなら、分かるのは発注・検収の対応が中心です。改善案を出し、関係者と相談しながら継続的に進める仕事なら、担当者の人柄に加え、判断や調整の仕方にも触れられます。企業側も、完成品だけでなく、その人が問題をどう捉え、周囲とどう連携するかを知れます。

企画の副業では、この違いが特に大きくなります。「事業を良くする企画を考えてほしい」だけでは、顧客、予算、既存の制約が分からず、提案の評価も難しいでしょう。「広告流入から商談までの課題を整理する」「採用候補者に伝わっていない情報を洗い出す」など、担当範囲を具体化すると、外部の経験を使いやすくなります。

副業転職に向くかどうかは、職種名だけで決まるものではありません。双方が一緒に働く相手を理解できる仕事になっているかが、相性確認の厚みを変えます。

副業先に転職するメリットは、実際の仕事と人を知って選べること

入社の決め手は、信頼関係と仕事内容への理解

lotsfulが2026年3月に、副業経験のある20~40代の会社員660人を調査しました。そのうち、副業先への入社経験者が挙げた入社理由の上位は次の3項目です。[2]

副業先への入社を決めた理由 回答割合
現場メンバーとの信頼関係が築けた 35.7%
もっと深く事業に関わりたくなった 35.3%
業務内容を深く理解できた 34.9%

出典:[2]。回答対象は、調査対象者のうち副業先への入社経験がある人です。

この結果は、相性確認の中身を具体的に示しています。会社の知名度や説明を信じて入社するだけでなく、仕事を通じて「この人たちと、もっと関わりたい」と思う。担当していた範囲の先に、自分が担いたい役割も見えてくる。その理解が、転職の意思決定に結びついています。

企業にとっても、候補者が説明する強みを実務で確認できる利点があります。例えば、知識が豊富でも実行が進まない人なのか、情報が足りない場面で自ら整理して相談できる人なのかは、面接の受け答えだけでは判断しにくい部分です。副業では、仕事を依頼した結果として評価が蓄積します。

お試し転職を求める意向は、以前から表れている

学情が2022年1月、「Re就活」への来訪者317人を調査したところ、91.7%が、転職前に副業で仕事内容や相性を確かめる機会を活用したいと回答しました。[3]

20代の転職サイト来訪者という対象ですが、報酬を得ながら現職を辞めずに会社を知りたいという需要は、すでに表れていました。副業転職は、たまたま縁ができた人だけの話から、転職先の選び方として検討できる経路へ広がる余地があります。

通常の転職より、入社前の理解と転職後の評価が高い

パーソル総合研究所は、直近3年以内に副業先へ転職した正社員500人と、通常の転職をした正社員500人を比較しています。通常転職者の性別・年代構成は、副業転職者に合わせています。[1・35~36ページ]

副業転職者は全般的に、転職前に把握していた項目が多く、特に同僚の人柄、上司のマネジメント、組織の文化・風土、キャリアや成長機会などで、通常転職者より把握している割合が高くなっていました。

転職後の評価でも差が出ています。

転職後の仕事に関する評価・平均値 副業先へ転職した人 通常の転職をした人
働くことを通じた幸せの実感 3.88 2.84
ワーク・エンゲイジメント 3.92 2.90

出典:[1・36ページ]。各500人。原資料掲載の平均得点で、いずれも高いほど肯定的な評価です。ワーク・エンゲイジメントは、仕事に前向きに取り組む状態に関する指標です。

ここで分かるのは、入社前の理解に加え、入社後の働く実感にも違いがあることです。一方、同調査では副業転職者に、新しい役割への挑戦や昇進への志向が強い特徴もあります。副業を挟めば誰でも成功するというより、本人の意欲と、仕事を経験して選べる経路の両方を見る結果でしょう。

それでも、面接を増やすだけでは得にくい情報を、日常の業務で確かめられる利点は明確です。転職の成功を年収だけでなく、納得して働ける職場を選べたかで考えると、副業には相性確認の手段として意味があります。

副業から転職を目指すには?案件探しと入社条件の確認

紹介や副業求人から、仕事を通じた接点をつくる

同調査で、副業受入企業444社が挙げた人材との接点は、社員からの紹介が30.4%、副業サイトや求人検索サイトが24.6%、自社採用ホームページでの公募が22.6%、経営層や社員の個人的な人脈が20.2%でした。複数回答です。[1・19ページ]

副業専門サービスに限らず、知人や同業者とのつながり、企業の採用ページも接点になっています。転職を視野に入れるなら、自分が提供できる仕事と、将来経験したい仕事が重なる案件を探す方法が考えられます。

例えば、広告の実務経験を持つ人が、分析だけを納品するのか、事業担当者と改善を継続するのかで、知れる範囲は変わります。後者なら売上目標と現場判断の関係まで見えやすく、将来自分が担いたい役割があるかも判断しやすくなります。

採用の可能性を知りたい場合は、企業が副業人材に何を期待し、正社員採用も検討しているのかを話し合うと、双方の目的をそろえやすくなります。入社打診を待ち続けるより、仕事の区切りや契約更新時に将来の関わり方を相談するほうが、選択肢を具体化できます。

副業で見えた仕事と、正社員になって任される仕事をつなげる

入社を考える段階では、副業で知った会社の良さが、正社員としての役割にも当てはまるかが焦点になります。

例えば、副業では専門領域の改善だけを担当できても、正社員ではチーム運営や他部署との調整も任されるかもしれません。それが望むキャリアなら魅力です。一方、専門実務に集中したい人には、期待とのずれになります。

入社前に話し合うこと 判断につながる問い
担当業務と責任 副業時の仕事を深めるのか、別の役割を担うのか
給与・賞与・評価 どの貢献を評価し、その後どのように処遇が変わるのか
上司・チーム・裁量 副業で接していた人や意思決定の仕方は、入社後も同じか
勤務時間・場所 本業として無理なく続けられる働き方か
他の副業の継続 入社後に認められる活動と手続きは何か

副業時の時間単価をそのまま勤務時間分に掛けて、入社後の年収と考えると、役割や契約条件の違いを見落とします。実務を知ったうえで、正式な雇用条件を確認することに意味があります。

両立の負担は、相性確認の価値とは別に管理する

副業の利点が大きくても、本業に加えて働く時間は増えます。2025年調査では、副業による過重労働で仕事に支障が出た、または体調を崩した人が26.9%でした。[1]

副業転職を目指すことと、毎週多くの時間を投入することは同じではありません。担当範囲と稼働時間を決め、相談や確認も含めて続けられる案件にすることが、双方の評価にもつながります。

本業の副業規程、秘密保持、競合との関係も確認する事項です。厚生労働省のガイドラインでは、労務提供への支障、秘密漏えい、競業などの観点が整理されています。[5] 他社で得た機密情報を持ち込むことと、本人が培ってきた経験や技能を提供することは分けて考えられます。

副業は転職を増やすだけではない|今の会社を再評価して残る人も

社外に求めていたものを得られれば、本業を続けられる

HiProが2023年9月、副業をしている会社員400人を調査したところ、副業を始める前に転職を希望していた人の32.5%が、副業を開始して転職を考えるのをやめたと回答しました。[4]

副業は必ずしも、今の会社の欠点を増幅するものではありません。収入が足りない、別分野も経験したい、現在の役割以外でも専門性を試したい。こうした希望を副業で満たせれば、好きな本業を辞めずに済む場合があります。

反対に、今の会社で不満だった点が、外では違う形で解決されていると分かることもあります。決裁が速い、経験者に裁量がある、貢献と報酬の関係が分かりやすい。そうした比較が、転職の判断を具体的にするでしょう。

外を経験して、自社の良さに気づくこともある

他社の実務を経験すると、不満だった仕事の手順が品質を守っていた、自由度は低くても支援体制は整っていた、と分かることもあります。新しい技術を使える職場でも、運用は特定の人に依存し、休みにくいかもしれません。

例えば、給与への不満を持つエンジニアでも、他社で少人数の運用を経験し、自社のレビュー体制や障害対応の分担を評価し直すことは考えられます。これは説明例ですが、額面の条件だけではなく、働き続ける負担まで比較できることを示しています。

副業先への転職と、本業への残留は反対の結果です。しかし、どちらも他社を知らないまま判断する状態から抜け出したという点では共通します。副業の成果を、転職できたかだけで測ると、この価値を見落とします。

副業禁止で人材流出を防げるか?採用と定着の関係

副業を制限すること自体が、会社を選ぶ理由になる

副業が採用経路として定着すれば、本業企業には社員が他社へ移る接点にもなります。人材を失う不安から、副業を制限したくなる経営も考えられます。

一方、lotsfulの2026年調査では、副業をきっかけに副業先または別企業へ転職した人が挙げた理由として、「会社が副業に不寛容だった」が32.8%ありました。「給与・待遇への不満」36.9%、「スキルアップのため」36.2%、「人間関係」35.5%と並ぶ項目です。[2]

また、調査対象の副業経験者全体では、80.2%が転職活動で求人の副業可否を重視していました。副業を経験した人にとって、社外でも働けることは、勤務先を選ぶ条件の一つになっています。[2]

この調査は20~40代の副業経験者に対象を絞っています。会社員全員の8割という意味ではありません。しかし、副業人材を採用対象とする企業にとっては、まさに接点を持つ層の意向です。外部人材は受け入れるが自社社員の副業は認めない、という運用なら、その違いも候補者の判断材料になります。

採用を続けても、人材不足が解消しない理由

企業にとって、採用と人材確保は同じではありません。例えば、1,000人の企業が毎年100人を採用しても、同じ人数が退職すれば規模は変わりません。これは説明用の例ですが、採用活動が活発でも、会社全体では補充を続けている状態です。

面接や紹介料だけでなく、入社後の教育、引き継ぎ、仕事に慣れるまで支援する現場の時間もかかります。人数が戻っても、退職した経験者の判断力や関係者との信頼まで、直ちに戻るわけではありません。

定年退職や必要な人材の入れ替えもあるため、退職をすべて失敗と考える必要はありません。それでも、改善できる不満で働き続けたい人を失い、その補充に資源を使っているなら、採用予算と同時に、定着へ回す資源も検討する意味があります。

副業を通じて採用する側は、他社の社員が何を求めて移ってくるかを知れます。そこに給与やキャリアの停滞があるなら、自社社員にも同じ状態がないかを考える材料になります。採用に成功した理由を、入社した人だけに通用する話で終わらせないことが、定着への接続になります。

管理職への昇進も、提示された役割と条件が社員に選ばれるかという問題です。詳しくは、管理職になりたくない理由と企業の対策でも整理しています。

経営は副業を、自社の人材競争力を知る機会にもできる

送り出す社員と、受け入れる他社社員の両方から見えるもの

経営が知りたいのは、社員に不満があるかだけではありません。その不満は他社と比べて深刻なのか、会社の良さが十分に認識されていないのか、採用や定着を左右する差なのかという点です。

日常の業務では、不満を言う機会も、他社と比較する材料も限られます。「給与が低い」「任せてもらえない」という言葉だけでは、期待が高すぎるのか、実際に競争力を失っているのか判断しにくいでしょう。

副業は、その比較材料を得る接点としても使えます。自社社員が外へ出れば、比較して初めて分かった強みや不足が見えます。他社社員を受け入れれば、外から来た人が日常の仕事に感じる違和感や評価を聞けます。

副業を通じた比較情報の往復。外で働く自社社員からは比較後の評価、受け入れる他社社員からは外から見た評価が自社経営へ届き、待遇・育成・仕事の設計の判断材料になる
図をタップ・クリックすると拡大できます。

例えば、次のような気づきは、一般的な満足度調査だけでは具体化しにくいものです。

副業の接点で得られる気づきの例 経営が考えられること
自社社員が「他社でも同じ調整は必要だった」と気づく 自社固有の無駄か、業務上避けにくい負担かを見直す
自社社員が「他社では若手にも改善を任せていた」と話す 育成を研修だけで考えず、仕事を任せる機会を比較する
受入人材が「この情報共有なら少ない時間でも進めやすい」と評価する 採用広報で伝えていなかった自社の強みを把握する
受入人材が「誰の承認で動けるのか分からない」と困る 社員が慣れて見過ごしている判断の遅れを把握する

こうした対話で尋ねるのは、本人が経験して感じた仕事の進めやすさ、役割への期待、待遇への納得感などです。他社の機密情報や個人の給与明細を集めなくても、比較できることはあります。

本業企業が社員の転職意向を探るための取り調べにすると、比較から得られる率直な情報は出にくくなります。副業の契約更新や定期的な対話の中で、「働いてみて何が違ったか」を聞く程度でも、具体的な発見を得る接点になります。

他社と同程度なら、改善しない判断にも根拠ができる

比較した結果、現在の待遇や支援体制が十分で、社員がその価値を知らなかったと分かることもあります。その場合、すべての要望に追加投資で応える必要はありません。

例えば、給与だけを見ると不満があっても、柔軟な勤務、教育の支援、運用負荷の分担まで含めると、本人が現在の会社を選び直すかもしれません。経営には、条件を維持しながら、その価値が伝わるようにする選択肢があります。

反対に、他社でもよくある不満だからといって、放置が合理的とは限りません。育成の機会が足りず、力をつけた人が次々に辞めているなら、問題が一般的でも自社の事業への影響は大きいからです。

ここでは、相対的な水準、事業への影響、競争上の選択を分けると判断しやすくなります。

比較と事業の状態 経営の判断の例
他社に劣らず、社員も比較後に納得している 条件を維持し、良さが伝わっていない部分を補う
よくある不満だが、重要人材の離職や育成停滞につながる 一般的かどうかより事業への影響を優先して改善する
平均水準だが、必要な人材を採用・定着させにくい 平均を超える条件に投資し、人材獲得上の強みをつくる

不満があるから必ず変えるのでも、平均的だから変えないのでもありません。比較材料が増えることで、どこに資源を使うかを考えやすくなります。

ビジョンだけでなく、仕事・成長・報酬の実態が比較される

会社のビジョンに共感しても、希望する仕事を任されず、経験を積んでも役割や処遇が変わらなければ、働き続ける理由は弱くなります。やりがいを求めることと、報酬に納得したいことは両立します。

副業先で実際に任された仕事が面白い。成果に対する反応がある。将来どの役割を担えるかが見える。そうした経験と今の会社を比較すれば、採用時に聞いた言葉以上に、日々の仕事の中身が評価されます。

企業が目指す環境も、自社でキャリアを伸ばせること、やりがいのある仕事を任せられること、貢献に対して報酬の納得感があることへ具体化できます。採用時に良く見せる努力と、入社後も選ばれる環境をつくる努力は、別に考えられます。

副業を受け入れる企業は、他社の社員が何を評価し、何に困るのかを知る接点を持てます。その情報を採用だけでなく自社の改善にも使えるなら、副業は人材確保の方法であると同時に、自社の人材競争力を確かめる機会になります。

副業から転職についてのFAQ

最初から転職するつもりがなくても、副業先へ転職できますか?

できます。副業を続ける中で相互理解が深まり、双方が入社を希望する経路です。最初の目的が追加収入でも、仕事を経験して次の役割に関心が生まれることがあります。採用枠や条件が合うかは、入社を検討する段階で話し合います。

副業先から正社員として誘われたら、何を確認するとよいですか?

副業で経験した仕事内容と、入社後の役割の違いが中心です。給与・賞与、評価と昇進、勤務条件、上司やチーム、他の副業の継続について、正式な条件と照らし合わせると判断しやすくなります。仕事の相性が良いことと、雇用条件に納得できることを合わせて考えられます。

正社員でも、副業から転職を目指せますか?

現在の勤務先で認められる副業の範囲に沿って、他社の仕事を経験する方法があります。就業規則や必要な手続き、本業への支障、秘密保持、競合との関係を確認することになります。副業中と退職・入社の手続きは別で、移籍を決めた場合は正式に進めます。[5]

副業を経験して転職しない判断にも意味がありますか?

あります。他社の仕事内容や環境を知って、今の会社の良さを評価し直すことも、副業で不足を補いながら本業を続けることもできます。転職したかどうかだけでなく、比較したうえで納得して選べたかが重要です。

まとめ|働いて選ぶ人が増えると、職場の中身が比較される

副業から転職する経路では、採用する企業も働く本人も、仕事を通じて判断材料を増やせます。調査で見られた信頼関係や仕事への理解は、面接での説明だけでは得にくいものです。

その比較は、必ずしも転職で終わりません。外を知って今の会社を選び直す人もいます。勤務先を変える自由に加え、変えない判断に納得できることにも価値があります。

経営にも、同じ比較を自社のために使う余地があります。外へ出た社員が何を評価し直したか。受け入れた他社社員が何に魅力や違和感を持ったか。そこから、条件を維持する理由、改善する優先課題、他社以上に投資する意味を考えられます。

副業は、社員に勤務先を選び直す機会を、経営には自社の人材競争力を確かめる機会を与えます。 採用の入口としてだけでなく、働いた後も選ばれる職場を知り、つくる接点として捉えると、副業の意味はさらに広がります。

参考資料


本記事の文章・表・図解・グラフは、Skill Business Architecture Labが独自に編集・作成しています。引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名・サイト名・記事URLをご記載ください。

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