アメリカの若者はなぜ社会主義に好意的なのか?ギャラップ調査と富の集中から考える

米国の若者の社会主義への好意を、ギャラップ調査・富の集中・生活の見通しから考える マーケティング事例・ニュース分析

資本主義の国として知られるアメリカで、若者の57%が社会主義に好意的――。この数字を見て、「自由な競争や商売への支持まで失われたのだろうか」と感じる方もいるかもしれません。

ところが、同じ調査では若者の93%が小規模事業に、69%が自由な経済活動に好意的でした。社会主義への期待と、商売への支持は同時に存在しています。[1]

この組み合わせから考えたいのは、競争が嫌いになったという説明よりも、競争に参加しても生活を築ける見通しを持ちにくくなったことへの不満ではないかという点です。

まずギャラップの調査結果と回答内容を整理し、読者と共通の前提を作ります。そのうえで、富の集中を考えるヤードセールモデルと、住宅・所得・資産のデータを照らし合わせ、消費者の価値観をどう理解できるかを考えます。

  1. ギャラップ調査は、アメリカ人の経済観をどう調べたのか
    1. 調査対象・実施時期・質問内容――「好意的」とは何を意味するのか
    2. 成人全体では、資本主義・社会主義はどう評価されているのか
    3. 若者の57%が社会主義に好意的――年齢による評価の違い
    4. 若年層の資本主義・社会主義への評価は、過去からどう変わったか
    5. 小規模事業・大企業・自由な経済活動では、評価がどう違うのか
  2. 人々は資本主義・社会主義の何を評価し、何に不満を感じているのか
    1. 別の自由回答調査から、数字の背景にある言葉を読む
    2. 資本主義の魅力と不満――成功の機会がある一方、格差も意識されている
    3. 社会主義への期待と懸念――生活保障・平等と、政府への不安
    4. 商売への支持と、現在の経済の仕組みへの不満は両立する
  3. ヤードセールモデルとは?取引を重ねると富が偏る仕組み
    1. 勝つ確率が同じでも、資産の少ない側は損失の割合が大きい
    2. 取引の積み重ねによって、富の集中はどう進むのか
    3. 再分配は富の集中をどう抑えるのか
  4. 現実のアメリカでは、生活を築く機会に何が起きているのか
    1. 初めて住宅を買う人の年齢中央値40歳、初回購入者の割合21%
    2. 家賃や学生ローンを払いながら、住宅購入資金を貯める難しさ
    3. 親より高い所得を得られる人の割合は、世代によってどう変わったか
    4. 所得だけでは見えない、住宅・株式などの資産保有の差
    5. 戦後の格差縮小と、その後の富の再集中
    6. 親の資産や相続が、次の世代の出発点に与える影響
  5. 若者の不満は「競争しても生活を築けない」という見通しにあるのではないか
    1. 調査と経済データをつなぐ、富の集中・再分配・将来への期待
    2. 競争への支持が残っていても、今の仕組みへの評価は下がり得る
    3. 中国の「寝そべり」にも見える、競争から距離を取る反応
  6. 消費者理解では、欲しいものに加えて「手に入る見通し」に目を向ける
    1. 「もっと頑張れば手に入る」という説明が届きにくくなる背景
    2. 価格への不満だけでなく、生活の安心と負担への納得感を考える
  7. 参考資料

ギャラップ調査は、アメリカ人の経済観をどう調べたのか

調査対象・実施時期・質問内容――「好意的」とは何を意味するのか

ギャラップが2026年9月23日に公表した結果は、8月3〜24日にアメリカの18歳以上1,200人を対象に行った電話調査に基づきます。対象地域は全50州とワシントンD.C.で、成人全体の結果の標本誤差は95%信頼水準で±4ポイントです。年代別の結果に、そのまま同じ誤差幅を適用することはできません。[1]

質問は、資本主義、社会主義、自由な経済活動、小規模事業、大企業という言葉に、それぞれ肯定的か否定的かという印象を尋ねています。経済制度の説明を読んで一つを選ぶ質問ではなく、資本主義と社会主義の両方に好意的な人も含まれ得ます。

ここでいう「社会主義」は、回答者がその言葉に抱く印象です。「共産主義を支持する人が57%」「若者の57%が特定の政治家から離れた」という意味ではありません。

成人全体では、資本主義・社会主義はどう評価されているのか

成人全体の結果を先に見ると、若者の数字がどこに位置するかが分かりやすくなります。

調査で尋ねた言葉 好意的 否定的
小規模事業(small business) 95% 5%
自由な経済活動(free enterprise) 77% 19%
資本主義(capitalism) 55% 43%
社会主義(socialism) 43% 53%
大企業(big business) 35% 63%

出典:ギャラップ、2026年8月調査。無回答等は省略。丸めにより合計が100%にならない場合があります。[1]

成人全体では、社会主義より資本主義に好意的な人が多くいます。一方、小規模事業への評価と大企業への評価には大きな開きがあります。企業活動を一括りにすると、この違いを見落としてしまいます。

若者の57%が社会主義に好意的――年齢による評価の違い

18〜34歳では、資本主義への好意が43%、社会主義への好意が57%でした。35〜54歳ではそれぞれ50%、45%、55歳以上では65%、34%で、若年層とは評価の順序が逆になります。[1]

2026年ギャラップ調査の資本主義と社会主義への好意を、成人全体・18〜34歳・35〜54歳・55歳以上で比較
図をタップ・クリックすると拡大できます。

図1:好意的と答えた割合。ギャラップ公開データPDFの4〜5ページを基に作成。[1]

ただし、若者の中でも意見は分かれています。「若者は社会主義者になった」と全員に当てはめるより、現在の経済の仕組みを肯定する人が、若年層では相対的に少ないと読むほうが実態に近そうです。

若年層の資本主義・社会主義への評価は、過去からどう変わったか

変化は直近の政権だけで始まったものではありません。ギャラップの2019年の分析は、当時の若い世代の資本主義への好意が2010年の66%から約半数へ下がった一方、社会主義への好意は同期間におおむね半数で推移したと説明しています。[2]

つまり、少なくともその期間は、「社会主義の魅力が急に高まった」だけではなく、「資本主義の評価が下がり、両者が近づいた」という変化がありました。なお、この過去分析はミレニアル・Z世代などの世代区分を使っており、最新の18〜34歳と完全に同じ集団ではありません。

成人全体を同じ資料の時系列で見ると、次のようになります。

米国成人全体の資本主義・社会主義・大企業・自由な経済活動への好意の推移を2010年から2026年まで示すグラフ
図をタップ・クリックすると拡大できます。

図2:米国成人全体の好意的評価。点は調査実施年の値、線は観測値を結んだもので、未調査年の値を示すものではありません。若年層だけの推移ではありません。[1]

社会主義への好意は一直線に増えたわけではありません。資本主義も2025年の54%から2026年は55%へ上がっています。一方で、長い期間では、大企業への評価の低下と、社会主義への好意の上昇が見られます。単年の増減と長期の変化を分けて見ると、態度変容の輪郭がつかめます。

小規模事業・大企業・自由な経済活動では、評価がどう違うのか

若者の好意的評価は、小規模事業93%、自由な経済活動69%に対して、大企業29%、資本主義43%でした。[1]

自分で商売をすること、商品やサービスを自由に選ぶこと、企業が競争することへの支持まで消えたとは読み取りにくい結果です。ただし、同じ個人が各項目をどう組み合わせて答えたかを示すクロス集計ではなく、ここでは若年層という集団の傾向を見ています。

また、成人全体の所得別集計では、資本主義に好意的な割合は世帯年収5万ドル未満で47%、10万ドル以上で65%でした。一方、社会主義はそれぞれ47%、40%です。年代だけでなく、経済的な立場によって評価が異なる点も、消費者理解の材料になります。[1]

人々は資本主義・社会主義の何を評価し、何に不満を感じているのか

別の自由回答調査から、数字の背景にある言葉を読む

好意的か否定的かだけでは、何が評価されているかまでは分かりません。そこで参考になるのが、ギャラップが2026年8月6日に公表した別調査です。

こちらでは回答者を無作為に三つに分け、それぞれ資本主義、社会主義、自由な経済活動のうち一つについて、良い点と悪い点を自由回答で尋ねています。前章の8月3〜24日調査と同一の回答ではなく、57%の人に理由を直接聞いた調査でもありません。[3]

以下は成人全体の回答のうち主な項目を、日本語で要約したものです。回答は内容別に分類されており、各列の合計が100%になる選択肢ではありません。

資本主義の魅力と不満――成功の機会がある一方、格差も意識されている

評価の方向 主な回答内容 割合
良い点 個人の機会・成功・上昇の機会 35%
良い点 革新・競争・効率 29%
悪い点 強欲・利益追求などの倫理的問題 24%
悪い点 所得・富の不平等 23%
悪い点 企業の権力・独占・市場の悪用 21%

出典:ギャラップ、2026年8月6日公表の自由回答調査。[3]

評価されているのは、成功する機会や新しいものが生まれる力です。一方で、その成果の分かれ方や、企業に力が集中することへの不満も挙がっています。「競争には価値があるが、今の結果には納得していない」という読み方ができる回答です。

社会主義への期待と懸念――生活保障・平等と、政府への不安

評価の方向 主な回答内容 割合
良い点 医療・教育・住宅などの生活保障 26%
良い点 平等・富の均等な分配 23%
良い点への回答 良い点はない 30%
悪い点 経済の非効率 21%
悪い点 政府の過度な介入 19%
悪い点 働く意欲の弱まり 18%
悪い点 自由・個人の機会の縮小 17%

出典:ギャラップ、同自由回答調査。主な項目の抜粋。[3]

期待の中心には、生活を支えるサービスと平等があります。ただし、政府に任せることへの懸念も残っています。社会主義への好意を、国家による全面的な管理への賛成と同じ意味にはできません。

商売への支持と、現在の経済の仕組みへの不満は両立する

自由な経済活動の良い点としては、自由・選択・競争が40%でした。一方、所得・富の不平等を悪い点に挙げた割合は9%で、資本主義の23%より低くなっています。[3]

同じ市場経済を連想する言葉でも、回答者が思い浮かべるものは同じではありません。自由な商売や選択には好意的でも、蓄積された富や企業の権力には不満を持つことがあります。

ここまでで共有できるのは、社会主義への期待だけでなく、競争・機会・自由への支持も残っているという点です。次に考えたいのは、それらの価値を支持しながら、なぜ現状への納得感が弱まるのかです。

ヤードセールモデルとは?取引を重ねると富が偏る仕組み

勝つ確率が同じでも、資産の少ない側は損失の割合が大きい

ヤードセールモデルは、人々の間で資産が移動する取引を繰り返し、富の分布がどう変わるかを考える数理モデルです。名前は家庭の不用品などを売る「ヤードセール」に由来しますが、不用品販売の市場だけを説明するものではありません。[4]

基本的な設定では、無作為に選んだ二人のうち、資産が少ない側の一定割合を取引額とし、どちらがその額を得るかを同じ確率で決めます。

例えば、資産1,000の人と100の人が、少ない側の10%に当たる10をやり取りするとします。勝つ確率はどちらも50%です。しかし、10を失ったときの影響は、資産1,000の人には1%、100の人には10%になります。

ヤードセールモデルの説明例。資産1,000と100の二人が10をやり取りすると、勝つ確率は同じでも損失の割合は1%と10%になる
図をタップ・クリックすると拡大できます。

図3:モデルの取引ルールを説明する仮例。金額の単位は任意で、実際の取引や家計データではありません。

取引の積み重ねによって、富の集中はどう進むのか

少ない側の資産が90に減れば、次の取引額は9になります。さらに減ると、勝ったときに得られる額も小さくなります。負けて資産が減った人ほど、大きく取り戻す取引に参加しにくくなる仕組みです。

このモデルでは、特定の人を最初から勝ちやすく設定しなくても、再分配のない取引の積み重ねから富の集中が生じます。再分配のないモデルの長期的な集中については、数学的な研究もあります。[4]

ただし、これは一回ごとに必ず格差が拡大するという意味ではありません。短い期間には富が分散する取引もあり、個人が回復することもあります。集団の長期的な分布と、一人ひとりの取引結果を分けると理解しやすくなります。

再分配は富の集中をどう抑えるのか

モデルに、資産の一部を集めて全員へ等しく戻す操作を加えると、取引による偏りと、偏りを戻す力が同時に働きます。次の図は、その違いを同じ条件で試した説明用シミュレーションです。

200人が同額の資産から取引を始めた説明用シミュレーション。再分配なしと再分配ありで、上位10%が保有する資産割合の推移を比較
図をタップ・クリックすると拡大できます。

図4:独自シミュレーション。200人、初期資産は各100、取引額は少ない側の10%、勝敗は等確率。横軸1単位につき200回取引し、再分配ありではその都度各人の資産の0.5%を集めて等分しています。固定乱数による一例で、税率の提案や現実の年数への換算ではありません。

この計算の終点では、上位10%の保有割合は再分配なしで約98.8%、ありで約34.1%でした。同じ総資産と取引条件でも、分配のルールで結果が変わっています。

ここから得られる視点は、参加者の努力や善意だけで分布が決まるわけではなく、資産が動くルールと、集中を戻す仕組みも結果を左右するということです。拡張モデルでは再分配の強さと富裕者側の優位との関係も研究されています。[5]

現実には給与、消費、投資、借入、事業の成長、相続などがあります。ヤードセールモデルはそれらすべてを再現するものではなく、富の偏りが積み重なる仕組みを理解するための道具です。

現実のアメリカでは、生活を築く機会に何が起きているのか

初めて住宅を買う人の年齢中央値40歳、初回購入者の割合21%

全米リアルター協会(NAR)の2025年調査では、初めて住宅を買った人の年齢中央値は40歳、購入者全体に占める初回購入者の割合は21%でした。調査対象は2024年7月〜2025年6月の購入者です。[6]

40歳は、実際に購入できた人の中央値です。購入を諦めた人や、まだ資金を用意できていない人は含まれません。また、21%は若者全体の持ち家率ではありません。

二つを併せると、住宅を買う人の市場の中で、新しく入ってくる人の割合が小さくなり、入れた人の年齢も高くなっていることが分かります。資産をすでに持つ側と、これから取得する側では、住宅価格の上昇が持つ意味が違います。

家賃や学生ローンを払いながら、住宅購入資金を貯める難しさ

NARは、調査期間の住宅供給が限られ、購入希望者に手の届きにくい価格の物件が多かったと説明しています。同期間の住宅ローン金利は平均6.69%でした。[7]

住宅購入の負担は、物件価格だけではありません。例えば、家賃や学生ローンの返済を払いながら頭金を積み立てる家計では、毎月の収入があっても貯蓄に回せる額が限られます。これは家計の仕組みを説明する例で、今回のギャラップ回答者の支出内訳ではありません。

「買う自由がある」ことと、「買える資金を作れる」ことの間には距離があります。その距離が広がれば、消費者にとって購入の先送りは、欲求の弱さよりも生活の優先順位を守る判断になり得ます。

親より高い所得を得られる人の割合は、世代によってどう変わったか

Opportunity Insightsの研究は、子と親の30歳時点の世帯所得を物価調整して比較しています。親より高い所得を得た割合は、1940年生まれで約90%、1980年代生まれで約50%へ低下しました。[8]

生まれた時期 親より高い実質世帯所得を得た割合
1940年 約90%
1980年代 約50%

出典:Chettyほか、2017年。主な比較は親子の30歳時点の所得。2026年の若者を直接測った数値ではありません。[8]

研究では、この低下を経済成長の鈍化だけでなく、成長の成果の分配が偏ったことと結びつけています。所得が親を上回ることは生活の豊かさの全側面を表すものではありませんが、「次の世代は前の世代より良くなる」という期待を考える一つの指標になります。

所得だけでは見えない、住宅・株式などの資産保有の差

所得は一定期間に入るお金、資産は蓄積された住宅・預金・株式などです。同じ年収でも、住宅を持つ人と頭金を貯めている人では、値上がりの恩恵や毎月の支出が違います。

世界不平等報告2022では、アメリカの上位1%が保有する富の割合は、1970年には25%未満まで下がった一方、2020年には35%近くへ戻ったとされています。この報告書の歴史的推計であり、2026年時点の最新値ではありません。[9]

経済全体の富が増えても、それがどの層に蓄積されるかで、新たに生活基盤を作る人の機会は変わります。平均所得の上昇だけでは消費者の実感を説明しにくい点は、日本の平均年収と購買力を分析した記事でも扱っています。

戦後の格差縮小と、その後の富の再集中

時間が経つほど富が偏るというモデルの見方を、戦後の歴史に重ねるとどうでしょうか。現実の富の偏りは、戦後ずっと同じ方向へ進んだわけではありません。

世界不平等報告は、20世紀の格差縮小に戦争や経済危機だけでなく、累進課税や相続税などの政策も寄与したと説明しています。1950〜1980年代には格差を抑える政策が働き、その後は規制緩和、民営化、累進課税の弱まりなどとともに、富の集中が再び進みました。[9]

注目したいのは、戦争からの経過年数そのものより、蓄積された富が次の富を得る力と、その偏りを戻す仕組みの関係です。平時の制度でも分布が変わってきたことは、富の集中を固定された運命と考えないための材料になります。

親の資産や相続が、次の世代の出発点に与える影響

蓄積された富は、世代をまたいで生活の出発点にも関わります。例えば、頭金の支援を受けられる人は、給与だけで貯める人より早く住宅取得を検討できます。相続まで待たなくても、親の資産が選択肢を変えることがあります。

連邦準備制度理事会が公表した2025年の研究論文も、若い世帯の住宅保有に親からの資金移転が果たす役割をモデルで分析しています。親の資金移転が若い世帯の住宅保有率の13ポイント分を説明するという推計です。これは研究モデルによる推計で、親の援助を受けた購入者の実測割合ではありません。[10]

基本的なヤードセールモデル自体に相続は含まれません。それでも、現実の資産の偏りが世代を越えて選択肢の差につながると考えるうえで、住宅取得と親の支援の関係は重要な材料です。

若者の不満は「競争しても生活を築けない」という見通しにあるのではないか

調査と経済データをつなぐ、富の集中・再分配・将来への期待

ここまでの調査とデータをつなぐと、一つの仮説が浮かびます。自由な商売や競争には賛成でも、その競争の成果が一部に蓄積され、自分が生活を築ける展望が弱まれば、現在の仕組みを支える言葉への評価も変わるのではないでしょうか。

ここまでに確認したこと 記事で考える意味
若年層でも小規模事業・自由な経済活動への好意は高い 競争や商売の全面的な拒否とは読み取りにくい
自由回答では資本主義の格差、社会主義の生活保障・平等が挙がる 不満と期待が、成果の分配や生活基盤へ向いている
住宅取得の入口が狭まり、所得上昇の機会には世代差がある 挑戦の自由と、生活を築ける見通しには距離がある
資産の集中や親の支援が出発点を左右する 努力の差だけでは説明しきれない条件がある

競争をなくしてほしいというより、競争に参加した先に生活を築ける条件を求めている。 これが、今回の結果を消費者理解の視点から読むうえでの中心的な見立てです。

ギャラップは、住宅負担や資産保有が57%という結果をどれだけ生んだかまでは測っていません。それでも、支持しているものと嫌っているものを分け、現実の生活条件と照らすことで、「若者の思想が変わった」で終わらない説明に近づけます。

競争への支持が残っていても、今の仕組みへの評価は下がり得る

成功する機会への支持と、その機会が自分にも開かれているという感覚は別です。例えば、自分で事業を始めることに魅力を感じても、失敗時に住居や生活費を支えられなければ、踏み出しにくくなります。

努力の成果が生活の安心につながる感覚があれば、競争は将来への道として受け止めやすくなります。反対に、資産の差や固定費の負担によって道が遠く感じられれば、競争の価値を認めながら、再分配や生活保障へ期待することも自然に理解できます。

「なぜ今になって資本主義への評価が変わるのか」という問いも、制度名だけでなく、その制度の下で次の世代がどのような生活を経験しているかから考える余地があります。

中国の「寝そべり」にも見える、競争から距離を取る反応

中国の「寝そべり(躺平)」も、努力と将来のつながりを考える補助的な例です。競争や過剰な努力から距離を取る姿勢を指し、米国の社会主義への好意とは行動も調査方法も異なります。

中国の有力大学に在籍し、努力からの撤退を選んだ学生62人を対象とした質的研究では、資源の差や精神的な疲労などが語られています。撤退を選んだ学生の調査なので、中国の若者全体の割合を示すものではありません。[11]

それでも、努力を減らす反応を単に怠惰と捉える前に、努力の先にどのような見通しを持っているかを考える材料になります。米国では制度への期待、中国のこの事例では競争からの距離という違いを保ったうえで、共通する問いを探れそうです。

消費者理解では、欲しいものに加えて「手に入る見通し」に目を向ける

「もっと頑張れば手に入る」という説明が届きにくくなる背景

企業にとって、この話は政治的立場を分類するためのものではありません。商品を欲しいと思う気持ちと、購入に踏み出せる条件を分けて理解する視点です。

例えば、住宅を欲しい人に将来の暮らしの魅力を伝えても、毎月の支払いが生活の余裕を失わせると感じていれば、行動にはつながりにくいでしょう。「欲しくない」と「欲しいが生活を守れない」は、同じ購入見送りでも背景が違います。

この場合、憧れを強めるだけでなく、費用総額、毎月の負担、条件が変わったときの選択肢など、本人が見通しを作れる情報が役立ちそうです。これは今回の調査が証明した広告効果ではなく、調査から消費者理解へつなげた示唆です。

欲求と、行動を止めている理由を分ける考え方は、購買意欲と訴求を整理した記事でも詳しく扱っています。

価格への不満だけでなく、生活の安心と負担への納得感を考える

「高い」という声も、金額だけへの不満とは限りません。自分の負担が増える一方で、提供側だけが利益を得ていると感じることへの不満や、今後も払い続けられるかという不安が重なる場合があります。

顧客の声を聞く際には、例えば次のような問いが理解を深めるきっかけになります。

  • 商品は欲しいが、何が購入や継続を難しくしているのか。
  • 値段、毎月の固定費、将来の変動のうち、どの負担を気にしているのか。
  • 負担する費用と、受け取る価値の関係に納得できているのか。

若者の社会主義への好意は、市場や商売への期待が消えたと読むよりも、自分にも生活を築ける道があると感じられるかが問われていると読むほうが、調査の複数の結果を理解しやすくなります。

消費者の選択を考えるときも、欲しいものや支払能力だけでなく、その人が将来をどこまで見通せるかに目を向けることが、表面的な不満の奥を理解する助けになりそうです。

参考資料

出典確認:2026年10月6日。図表の数値・対象・時期は各図表の注記を参照。


本記事の文章・表・図解・グラフは、Skill Business Architecture Labが独自に編集・作成しています。引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名・サイト名・記事URLをご記載ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました