「ディスプレイ広告は認知、検索広告は獲得」。施策の役割をこう整理すると分かりやすくなります。しかし、実際には広告で初めて知った商品へすぐ問い合わせる人もいれば、詳しく比較していても購入しない人もいます。
購買ファネルは、顧客が商品を知ってから購入するまでを整理する基本です。ただし、顧客が時間をかけて一段ずつ進むとは限りません。初めて商品を知ったとき、既に強い欲求を持っている人もいるからです。
媒体やファネルの位置だけで訴求を決めず、そこで接触する人が何を望み、なぜ動いていないかを考える。 この記事では住宅購入を例に、広告のコピーや画像、動画などのクリエイティブを考える視点を説明します。
検索していない人にも、強い購入意欲がある
「家は欲しい。でも自分には買えない」と考える人
家が欲しいと思っていても、物件を検索していない人はいます。
例えば、家族と暮らす住まいが手狭になり、もっと広い家が欲しいと考えている人です。しかし、「自分の収入では家を買うのは無理だ」と思い、購入のための情報収集を始めていません。
この人は、欲しくないから探していないのでしょうか。そうではありません。家が欲しい気持ちはあっても、購入できると思っていないため、行動していない状態です。
検索していないという行動だけでは、欲求の強さは分かりません。 住宅購入について調べていない人の中にも、購入する理由を持つ人はいます。
広告が、既にある欲求を行動につなげる
ここで、訴求を考える例として「年収300万円台でも買える!?」という住宅広告を想像してください。
自分の収入では無理だと思っていた人にとって、この言葉は「自分も検討できるのかもしれない」と感じるきっかけになります。物件や購入条件を確認し、具体的な話を聞くために問い合わせる流れが考えられます。

広告で初めて会社や物件を知ったとしても、家が欲しい気持ちまで、その瞬間に生まれたとは限りません。以前からあった欲求に、行動する理由が加わったのです。
ファネルの段階を短時間で進んだと見ることもできますが、施策を考えるうえでは、「なぜ急に動いたのか」まで理解する必要があります。この例では、自分には購入できないという前提が変わったことが重要です。
購買段階と購入意欲を分けると、顧客の違いが見える
詳しく比較している人が、今すぐ買いたいとは限らない
反対に、物件情報を詳しく見ていても、購入する予定がない人はいます。
間取りを見るのが好きで複数の物件を比べている人や、いつか住みたい地域の相場を調べている人です。物件への知識は増えていても、今の住まいを変える必要は感じていないかもしれません。
この人と、「家は欲しいが、自分には買えない」と諦めている人を比べると、行動の進み方と欲求の強さが一致しないことが分かります。
購入意欲は、顧客がどれくらい購入を望んでいるか。購買段階は、どこまで情報を知り、検討しているか。この二つを分けることで、同じ広告や情報への反応の違いを考えられます。
住宅購入の例で、二つの軸を整理する
以下は、購入意欲と情報収集・検討の進み方を組み合わせた例です。購入意欲は「家を買いたい気持ち」であり、資金や条件が整って実際に買えるかとは分けて考えます。
| 家を買いたい気持ち | 物件をまだ探していない | 情報収集している | 物件を比較・検討している |
|---|---|---|---|
| 強い | 家は欲しいが、自分の収入では無理だと思っている | 購入できる価格帯や条件を積極的に調べている | 立地・価格・間取りを比べ、購入候補を絞っている |
| 弱い | 今の住まいに不満はなく、購入を考えていない | 将来の参考として、地域や価格の情報を見ている | 間取りや物件を見るのが好きで比較しているが、購入予定はない |
注目したいのは、左上と右下です。探していなくても家が欲しい人と、比較していても買う予定がない人がいます。
例えば、前者には「自分でも購入できる条件がある」と知ることが行動のきっかけになります。後者に同じ情報を伝えても、現在の住まいを変えたい理由がなければ、購入には進まないでしょう。
顧客がどこまで調べているかだけでなく、何を望み、何が行動を止めているかを見る。 この違いが、クリエイティブを考える出発点になります。
集客手段ごとに、接触する人の欲求に合う訴求を考える
ディスプレイ広告・SNS広告も、CV目的の集客に使える
ディスプレイ広告やSNS広告は、認知を広げるためだけの手段ではありません。問い合わせや購入など、コンバージョン(CV)の獲得を目的に使うこともできます。
商品を検索していない人の中にも、既に欲求や購入意欲を持つ人はいます。住宅購入の例なら、家は欲しいものの、自分には買えないと思って探していない人です。その人の不安に応える情報が広告で届けば、具体的な比較・検討や問い合わせへ進むきっかけになります。
つまり、認知段階で接触したからといって、企業名を覚えてもらうことだけを目標にする必要はありません。接触する人の欲求と訴求が合えば、そこからCVを狙えます。
「検索広告は獲得、ディスプレイ広告・SNS広告は認知」と、媒体の役割を固定しないことが重要です。 CV目的で使う場合は、認知が広がったかだけでなく、問い合わせや購入を採算に合う費用で獲得できているかを確認します。
コピーは「欲求」と「行動を止めている理由」をつなぐ
先ほどの図で重要なのは、コピーの言葉の勢いではなく、家が欲しいという気持ちと、買えないという思い込みをつないだことです。自分にも検討できる条件があると分かれば、詳しく確かめる理由になります。
だからこそ、広告で関心を持った人が移動するLPには、該当する物件、価格、購入条件などを用意する必要があります。
目を引く言葉だけで、移動先に答えがなければ、問い合わせにつながりません。実際に提供できる内容を土台に、コピー・画像・動画・LPで同じ期待に答えます。
比較している人には、別の情報が必要になる
既に複数の物件を比べている人は、自分が購入できる価格帯を把握しているかもしれません。その人には、購入できるという説明より、希望する立地や間取り、支払総額、暮らし方に合う特徴が判断材料になります。
例えば、家族の通勤・通学を重視する人には立地の情報、現在の住まいの狭さを解消したい人には部屋の広さや収納の情報が重要になります。同じ物件でも、顧客が求めるものによって、伝えるべき魅力は変わります。
検索広告でも、「どんな言葉で検索しているか」に合わせて訴求を考えます。リマーケティングでも、一度サイトを見たという理由だけで同じ広告を繰り返すのではなく、次に判断するための情報を考えます。
媒体に合う表現形式を選ぶことと、顧客に合う訴求を考えることは、両方必要です。 画像か動画かを決める前に、その接点にいる人に何を伝えれば行動する理由になるかを整理します。
比較・検討中の顧客から、行動につながる訴求を見つける
発想は続けながら、比較・検討段階の改善から材料を集める
強く刺さる訴求があれば、まだ検索していない人にも行動する理由を届けられます。ただし、その訴求がすぐに見つかるとは限りません。
そこで、発想は続けながら、実務では検索広告やSEOなどのプル型集客から改善を始めます。プル型集客は、自ら情報を探している人に接触する方法です。特に物件の比較や購入条件に関する検索を捉えることで、問い合わせに近い顧客の反応を集めやすくなります。
ここで知りたいのは、どの広告から何件の問い合わせが来たかだけではありません。何をきっかけに購入を考え、何に迷い、何を知って購入へ進んだのか。購入した人と見送った人の両方から、その理由を学びます。 問い合わせや商談、見学時の質問には、広告の数値だけでは分からない顧客の気持ちが表れます。

住宅購入なら、結婚・出産、昇進や収入の変化、年齢や将来の暮らしへの意識が、購入を考えるきっかけになります。一方、自分の年収や住宅ローンの返済、災害、気軽に住み替えられなくなることへの不安から、購入をためらう人もいます。こうしたきっかけや不安を知ることが、広告やLPで何を伝えるべきかを考える材料になります。
比較・検討段階から改善するのは、そこにしか獲得の可能性がないからではありません。顧客の反応を確かめ、別の接点にも使える訴求の材料を集めやすいからです。
顧客の理由を基に訴求を変え、その後の行動を確認する
分かったきっかけや不安を基に、広告やLPで伝える内容を改善します。その際は、「誰の、どのような気持ちに応えるために変えたのか」を明確にしておきます。
そのうえで、クリックや問い合わせの数だけでなく、相談の内容や、見学・購入へ進んだかを確認します。顧客の理由を知る、訴求を変える、結果を確かめる。この改善を繰り返すことで、行動につながる伝え方を探していきます。
また、広告で関心を持っても、ページに必要な情報がない、フォームが使いにくいといった理由で止まることがあります。訴求の評価は、広告だけを切り離さず、その後のページや申し込みまで含めて行います。
問い合わせの先まで確認する考え方は、顧客接点と売上を追跡する方法で説明しています。法人向け商材で顧客の判断理由を調べる場合は、受注・失注理由の分析も参考になります。
分かったきっかけや不安を、別の集客手段にも生かす
比較・検討中の顧客から学んだことは、検索広告やLPだけに使うものではありません。購入を考えたきっかけや、行動を止めていた不安は、まだ検索していない人にも共通している可能性があります。ディスプレイ広告やSNS広告で、何を伝えれば関心を持ってもらえるかを考える材料にもなります。
ただし、比較中の人に効いたコピーを、そのまま使えばよいわけではありません。詳しく調べている人には候補を選ぶための情報が、まだ探していない人には自分にも関係があると気付く情報が必要になります。顧客理解を共通の土台にしながら、接触する人の状態に合わせて伝え方を変える。 これが、日々の改善を他の集客へ広げる考え方です。
媒体の役割を固定せず、顧客が動く理由を考え続ける
購買ファネルは、顧客の検討状況を整理するために役立ちます。ただし、その位置だけで購入意欲を判断したり、媒体ごとにできることを固定したりすると、見落とす顧客がいます。
各集客手段で接触する人が何を望み、なぜ動いていないのか。その答えに合わせて、クリエイティブを考える。 この発想は、どの購買段階でも持ち続けたいものです。
強く刺さる訴求を考え続けながら、まずはプル型集客で、比較・検討している顧客の反応を集めます。購入・見送りの理由を学び、広告・LP・フォームを改善することで、問い合わせに近い顧客が行動しやすい状態を作ります。
まずプル型集客で、問い合わせを採算に合う費用で獲得できる成功体験を作る。その過程で分かった顧客の欲求や判断理由を、ディスプレイ広告などの訴求へ広げる。 認知寄りの接点で獲得する可能性を探りながら、日々の改善でその材料を蓄積していきましょう。
参考資料
- Google広告ヘルプ「ディスプレイ キャンペーンを作成する」:ディスプレイ広告の掲載面とコンバージョン獲得に向けた運用。
- Think with Google「How people decide what to buy lies in the messy middle of the purchase journey」:購買過程で探索と評価を行き来する行動に関する解説。
本文の住宅購入の場面とコピーは、訴求の仕組みを説明する例です。二軸の表は本記事で整理しています。
本記事の文章・表・図解・グラフは、Skill Business Architecture Labが独自に編集・作成しています。引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名・サイト名・記事URLをご記載ください。


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