推し活市場はなぜ伸びる?人数・支出と物価高の影響

推し活市場。支出は減る?。データから読む市場と選択 マーケティング事例・ニュース分析

生活費が高くなれば、趣味に使うお金は減るはず。それでも推し活市場の拡大や、高額な支出が話題になります。消費者の懐事情と矛盾しているのでしょうか。

市場規模は、参加する人数と一人当たりの支出の組み合わせで変わります。新しく少額で楽しむ人が増える場合もあれば、熱心なファンの支出が増える場合もあります。さらに、推し活を続けるために、別の支出を削る人もいます。

推し活全体を「不況に強い市場」とまとめず、人口、支出額の分布、年代、支出先を分けて見ると、物価高の中で何を残したいかという消費者の優先順位が見えてきます。

推し活市場規模はどのくらい?まず人口と支出の推移を見る

推し活は、アイドル、俳優、アニメやゲームのキャラクター、スポーツ選手など、自分が応援したい対象を楽しみ、支える活動です。グッズ購入やライブだけでなく、動画を見る、情報を追うなど、お金をかけない活動も含みます。

CDGとOshicocoによる推し活総研は、2026年1月に15~69歳の男女2万3,125人を調査しました。

指標 2025年1月調査 2026年1月調査
推し活をしている割合 16.7% 24.0%
推し活人口の推計 約1,384万人 約1,940万人
年間支出の平均 25万5,035円 20万9,716円
市場規模の推計 約3.5兆円 約4.1兆円

出典:推し活総研「第3回推し活実態アンケート調査」。2026年1月15~22日実施、人口構成に合わせて補正した推計。調査時点の回答に基づく市場推計で、2026年暦年の確定売上ではありません。

この調査では、平均支出が減っても参加人口が増え、市場全体は拡大しています。したがって、市場拡大を「既存ファンが皆もっと使うようになった」と読むことはできません。

推し活総研の2025年と2026年調査を比較。推計人口は1384万人から1940万人へ増え、年間平均支出は255035円から209716円へ減少し、市場規模は約3.5兆円から約4.1兆円へ拡大
図をタップ・クリックすると拡大できます。

「推しがいる」と「推し活をしている」は同じ指標ではない

インテージの2026年1月調査では、15~79歳の5,000人のうち「推しがいる」人は33.6%で、前年から微減しました。推し活総研の活動人口増加とは違う動きです。

対象年齢も質問も異なります。好きな対象がいる人と、自分を推し活の実践者と捉える人は一致しません。一方の調査を誤りとして捨てるより、各調査の中で同じ指標を前年と比べるほうが有用です。

推し活の平均支出はいくら?中央値と年代差を見る

平均だけを見ると、消費者の標準的な予算を読み違えます。推し活総研の2026年調査では年間平均が約21万円に対し、中央値は4万円でした。少数の高額支出者が平均を押し上げる構造があります。

ビデオリサーチの2026年調査でも、月間支出の中央値は全体で3,000円、20代では5,000円でした。20代で推しがいる人のうち月10万円以上使う人は1.9%。同じ年代でも、少額で楽しむ人と多くを使う人が共存しています。

数字 調査・対象 商品企画での読み方
年間平均20万9,716円、中央値4万円 推し活総研2026・推し活実践者 平均額をそのまま普通のファンの予算にしない
月間中央値3,000円 ビデオリサーチ2026 少額で継続する楽しみ方にも需要がある
20代の月間中央値5,000円 同調査・20代 年代ごとの支出水準を分ける
月10万円以上が1.9% 同調査・推しがいる20代 高額支出は存在するが少数派

ビデオリサーチは2026年2月9~12日、15~69歳を対象に実施。本調査2,639人です。年間値と月間値は別調査であり、単純に12倍して比較するものではありません。

「推し活層」という一つのターゲットを作ると、予算の差を見落とします。月数千円のグッズを選ぶ人と、遠征やイベントへ大きな予算を割く人では、同じ対象を好きでも購買機会が違います。

グッズ・チケット・遠征費――何への支出が変わったか

インテージ調査では、ジャンルごとの年間平均支出に次の変化がありました。

推しのジャンル 2025年調査 2026年調査
ゲーム 1万4,116円 3万6,698円
アニメ 1万1,259円 2万2,584円

出典:インテージ、2026年9月10日公表。各ジャンルの平均支出。ゲーム機や作品の発売状況も関わるため、同じ商品が値上がりした結果だけではありません。

同調査の支出増加理由では「グッズや関連商品の購入増」が45.7%、「ライブ・イベントの参加や回数増」が37.3%、「価格が上がった」が16.3%でした。少なくとも回答者の説明では、値上がり以外に活動量が増えた要素があります。

一方、ハルメクの50歳以上女性を対象とした2026年調査では、支出先として応援グッズや本・雑誌などが増え、チケットや宿泊を伴う遠征は減っています。年齢や生活条件で、残す消費と抑える消費は異なります。

玩具・フィギュアなどの市場側から見た変化は、キダルトと玩具市場の成長でも整理しています。

物価高でも推し活費を残す人がいるのはなぜか

推し活は生活必需品ではありません。それでも本人にとって、日々の楽しみ、人とのつながり、自分を表現するものになっていれば、簡単に削れる予算ではなくなります。

オンワードが2026年10月に公表した推し活ファッション調査でも、生活費を切り詰めて推し活費を捻出する行動と、支出を維持・拡大したい意向が紹介されています。対象は20~59歳の推し活をする男女476人で、全消費者の行動ではありませんが、節約と推し活継続が同時に起きる具体例です。

例えば、外食を一回減らしてライブへ行く人にとって、推し活支出の維持は余裕の証拠ではありません。限られたお金をどこへ振り向けるかを選んだ結果です。景気が悪ければ趣味支出が一律に落ちるとは限らず、思い入れが強い分野ほど最後まで残る予算になり得ます。

ただ、無料視聴へ切り替えたり、遠征を減らしたりする人もいます。購入額が落ちたことと、対象への好意が失われたことも別です。売上だけでファンの熱意を測ると、続けたいのに予算を抑える人が見えなくなります。

投げ銭の金額だけで推し活市場全体は読めるか

YouTubeのSuper Chatは、アンケートではなく実際の支払いに近い動きを見る材料です。PLAYBOARDなどでは配信者ごとの金額や件数を確認できます。

ただし、一人の配信者の増減には、配信回数、誕生日、卒業配信、休止などが強く影響します。投げ銭が減っても、グッズやライブへ支出先が移っている場合があります。また、世界の投稿・決済データを日本人の支出と同一視はできません。

そのため、ランキング上位の金額を並べて市場全体の景気を結論づけるより、同じ配信者群の継続データ、配信時間、イベント、グッズなどの収入を合わせて見る使い方が向いています。本記事の人口・支出推移には、比較条件をそろえられる調査系列を用いています。

マーケティングでは「推し活人口×平均額」からもう一段分ける

確認したいこと 見る指標 読み違えやすいこと
裾野が広がったか 活動人口、初参加者、無料参加 市場金額増を全員の支出増と捉える
既存ファンが使うようになったか 同一層の支出、購入回数 平均額だけで同じ人の変化を推測する
何を優先しているか 費目別支出、削った別支出 支出維持を家計の余裕と捉える
継続できるか 支出分布、満足度、離脱 高額層の予算を標準とする

市場が大きいから高単価商品を増やせばよい、とはなりません。少額の入口、無理なく続けられる購入機会、ここぞという体験を分けて考えるほうが、ファンの実際の予算に合いやすくなります。

よくある質問

推し活市場は人口が減っているのに伸びているのですか?

調査によって質問が違います。インテージでは「推しがいる」割合は微減、推し活総研では「推し活をしている」人口は増加しました。定義をそろえた同一調査内の推移で判断することが大切です。

推し活は不況でも影響を受けませんか?

影響を受けます。ただし、すべてをやめる以外に、遠征を減らしグッズを残す、別の生活費を抑えるなどの調整があります。支出の総額と内訳を一緒に見ると理解できます。

まとめ|市場が伸びても、ファンの財布が豊かになったとは限らない

推し活市場の拡大には、参加者の増加、特定ジャンルの支出増、少数の高額支出などが重なっています。物価高の中でも、ほかの消費を削って残す予算があることも見逃せません。

消費者は何を諦め、何を続けたいのか。市場規模だけでなく、その配分を見ることが、推し活を消費者理解に使ううえで重要になります。

参考資料

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本記事の文章・表・図解・グラフは、Skill Business Architecture Labが独自に編集・作成しています。引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名・サイト名・記事URLをご記載ください。

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