QRコードを読み、メニューを探し、自分のスマホで注文する。少し面倒でも、料理がおいしく、店員の対応が気持ちよければ、気にならない人もいるでしょう。
ところが、おすすめを聞いても「スマホからお願いします」で会話が終わる。画面に商品がないのに、注文方法だけを案内される。こうなると、注文の手間に加えて、店が客を助けてくれないことが不満になりそうです。
飲食店のスマホ注文では、注文受付を省力化する際に、客が期待する接客まで省いていないかが一つの論点になります。利用実態の調査と、実際の食事場面を分けて見ていきます。
飲食店のスマホ注文はどこまで普及した?利用経験と利用意向
自分のスマホで注文した経験は72.5%、今後の利用意向は54.2%
ホットペッパーグルメ外食総研の2026年調査では、自分のスマホを使う店内セルフオーダーの利用経験率は72.5%でした。2021年調査の26.0%から、利用経験は大きく広がっています。
一方、今後の利用意向は54.2%。店に設置されたタブレットなどを使うテーブルトップオーダーでは、経験率79.5%、利用意向69.5%でした。

出典:ホットペッパーグルメ外食総研。首都圏・関西圏・東海圏の20~69歳、8,085人。調査期間は2026年7月31日~8月14日。図は当サイトが作成。
利用経験と利用意向は別の設問です。二つの割合の差を「使って嫌になった人の割合」とは読めません。ただ、使ったことがある人が増えても、全員が今後積極的に使いたいわけではないことは分かります。
「好きなタイミングで注文できる」は47.5%――便利さも支持されている
店内で店の端末・スマホ注文を利用したい理由では、自分の都合の良いタイミングで注文できることが47.5%、店員を毎回呼ぶことに気が引けることが35.0%、1人でも利用しやすいことが23.9%でした。
店員をつかまえるために待たなくてよい、会話を中断せず追加注文できる、といった便利さがあります。接客が少ないほうが気楽な客にとっても、選びやすい方法でしょう。
この設問は店の端末と自分のスマホを合わせた理由で、全回答者を対象とする複数回答です。スマホ注文だけの支持理由や、利用希望者だけの割合ではありません。
スマホ注文が嫌がられる理由――操作・登録・接客を分ける
アプリやSNSへの登録は、食事とは別の負担になる
同じ店内注文の理由調査では、自分のスマホに余計なアプリなどを入れたくないという回答が16.5%でした。SNSの公式アカウントの友だち追加が必要な場合があることも、利用したくない理由の選択肢に入っています。
席について注文するだけのつもりが、アプリの導入や登録まで求められると、作業が増えます。食事のために一度使うことと、その店から継続的に連絡を受けたいことは、別の希望です。
もちろん、スマホ注文のすべてでアプリやLINE登録が必要なわけではありません。QRコードからブラウザで注文できる方式もあり、使う仕組みによって負担は違います。
メニューの見づらさと、質問できない不満は違う
調査には、メニューの一覧性、説明の少なさ、接客・サービスの質、温かみなどの項目もあります。操作しにくい画面を直すだけでは、スタッフへ相談したい客の希望まで満たせない場合があります。
「料理の写真を見たい」と「今日、何がおいしいか聞きたい」では、求める助けが違います。前者は画面を改善すれば解消しやすい一方、後者では、在庫やその日のおすすめを知る人の一言が役立ちます。
注文の速さだけを測ると、こうした食事の選びやすさは見えにくいでしょう。
スマホ注文でも満足できる店と、不満が残る店の違い
おすすめが画面にないとき、店員が助けてくれるか
筆者が飲食店で経験したのは、本日のおすすめがスマホ注文の画面に見つからず、店側の登録漏れだったという場面です。
このようなとき、「こちらで注文を受けます」と気持ちよく対応してもらえるなら、注文方法そのものは大きな問題に感じません。筆者にとっては、注文の仕組みより、料理がおいしかったか、店員がきちんと対応してくれたかのほうが、再訪を考える材料になります。
逆に、注文できない事情を伝えてもスマホ操作を求められ続けるなら、店側の不備を客が処理することになります。手順に従わせることが、食事を楽しむための助けより優先されてしまう場面です。
これは筆者個人の経験と判断であり、すべての客が同じではありません。ただ、画面から注文が完了しない例外は、導入時の想定に入れられる場面です。
人気の料理を聞けるなら、注文方法の好みを越えられることもある
筆者の好みは、店員へ頼む、店の端末を使う、自分のスマホを使う、の順です。主な理由は手間の少なさで、スマホ注文そのものを拒んでいるわけではありません。
「今日は何が人気ですか」と聞いて、店の人がきちんと答えてくれるなら、その後の入力方法はあまり気になりません。会話や相談を経て注文を決める部分と、注文内容を入力する部分を分けて考えられます。
それに対して、料理の相談にも「スマホからお願いします」と返されれば、欲しかったサービスが失われます。省力化する対象を入力作業までにするのか、客の相談への対応まで含めるのかで、食事の体験は変わり得ます。
飲食店の省力化で残したい接客は何か
定型の注文入力と、例外への対応を分けて考える
人手が限られる店で、すべての接客を以前と同じように保つのは難しいかもしれません。その場合も、どの場面で人が対応すると客の困りごとが解消するかを整理する余地があります。
| 画面に任せやすい作業 | 人の対応が役立ちやすい場面 |
|---|---|
| 定番商品の注文・数量入力 | 今日のおすすめ、味や量についての相談 |
| 注文内容の確認・追加注文 | 画面にない商品、登録漏れ、品切れとの不一致 |
| 対応可能な決済の案内 | 操作できない、端末が使えない客への代替対応 |
例えば、登録漏れが起きたときは、誰が修正するかだけでなく、その場の客の注文を誰が受けるかまで決まっていると、画面の不備を客へ押し戻さずに済みそうです。
「スマホで完結した件数」が増えても、質問を諦めた客や、次は来ないと思った客は、その数字に表れにくいでしょう。現場で受けた質問や注文の行き詰まりも、見直す材料になります。
仕組みの導入を目的にして利用場面を見落とす問題は、AI導入が成果につながらない理由にも通じます。ただし、スマホ注文はAIの使用を前提とするものではありません。
LINEのクーポンは、注文するための登録と切り離して考える
筆者は、注文後にLINEなどでクーポンを送られると、わずらわしく感じることがあります。行きたいときに行くので、興味のない割引が届いても来店の理由にはなりません。
一方、クーポンを便利だと思う客もいます。問題は販促そのものより、その連絡を希望する客と、今回の食事だけをしたい客が選べるかでしょう。
注文のために取得した接点を、すぐ来店促進へ使えば効果が出るとは限りません。顧客の購買意欲に合ったメッセージという視点からも、送信数と顧客の関心を分けて捉えたいところです。
また、操作やサービスへの不満をすべて迷惑な苦情として扱うと、改善の材料を失いかねません。カスハラ対策と正当な苦情の扱いにも、従業員を守りながら顧客の声を拾うという共通の課題があります。
飲食店のスマホ注文についてのFAQ
スマホ注文は、多くの客に嫌がられているのでしょうか?
一括りにはできません。今回の調査では、利用経験72.5%、今後の利用意向54.2%でした。便利さへの支持もあり、負担の内容は操作、登録、接客などに分かれます。
スマホが使えない客には、どう対応するとよいですか?
店員が注文を受ける、店の端末を案内するなど、その店で用意できる代替手段を決めておく方法が考えられます。通信や電池の問題も含め、注文できない場面を想定すると整理しやすくなります。
スマホ注文にはLINEの友だち追加が必須ですか?
方式によります。ブラウザから注文できる仕組みもあり、スマホ注文とLINE登録は同義ではありません。店側でも、注文に必要な操作と、任意の販促登録を分けて案内できるか確認する余地があります。
注文を簡単にする仕組みで、食事の満足を削っていないか
調査には、注文の自由さを歓迎する人も、登録や接客の変化を負担に感じる人もいます。スマホ注文を使うかどうかだけでは、満足の違いを説明しきれません。
客が注文を決められないとき、画面が間違っているとき、ちょっと店の人へ聞きたいとき。その場面で助けが残っているかが、再び来たいと思える店かどうかに関わるのではないでしょうか。入力の省力化を、客を助ける余力へつなげられるかが、見直しの起点になりそうです。
参考資料
- ホットペッパーグルメ外食総研「外食店利用時の注文ツールの利用実態・意向調査」:2026年9月14日公表。調査概要、利用経験と意向。
- 同調査の詳細資料:注文方式の定義、過去調査、店内利用の理由と集計条件。
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