旅行離れは本当?国内旅行の費用・行き先・日帰りの変化

旅行離れ?。変わる旅の形。データから読む市場と選択 マーケティング事例・ニュース分析

ホテルも交通費も高くなり、以前ほど気軽に旅行へ行けない。こうした実感から「日本人は旅行をしなくなった」と考えたくなります。しかし、宿泊旅行への参加率、旅先で使う金額、行き先を分けてみると、一律の旅行離れとは違う姿が見えてきます。

2025年度は国内宿泊旅行の実施率が微減する一方、旅行費用の総額は増えました。京都市では日本人の宿泊客が減っても、日帰り客は増えています。

旅行への関心がなくなったというより、予算や混雑に合わせて、行き先や泊まり方を選び直しているのではないか。日本人の国内旅行を中心に、実績と意識調査から考えます。

国内旅行離れは進んでいる?人数と消費額は違う動き

じゃらんリサーチセンターの「じゃらん観光国内宿泊旅行調査2026」は、2025年4月~2026年3月の観光目的の宿泊旅行を調べています。出張・帰省・修学旅行などを除いた調査です。

指標 2024年度 2025年度 読み取れること
宿泊旅行実施率 49.3% 48.9% 旅行する人の裾野は伸び悩む
実施者の年間平均旅行回数 2.76回 2.78回 旅行する人の回数は微増
1回当たり平均宿泊数 1.74泊 1.75泊 一律の短期化ではない
大人1人・1回当たり旅行費用 6万4,100円 6万5,700円 旅行単価は上昇
旅行費用総額 8兆1,867億円 8兆3,883億円 金額では2.5%増

出典:同調査2026年7月15日公表、PDF表示3・5・6ページ。全国18~79歳が対象、実施率の集計対象は2万人、旅行内容の有効回答は1万5,548人です。

旅行する人が少し減ったからといって、旅行に使われるお金まで同じ割合で減るわけではありません。反対に、旅行消費が過去より増えていても、多くの人が余裕を持って旅行できるようになったとは限りません。

人数、回数、泊数、単価を分けることで、伸び悩みと市場拡大が同時に起きる理由が分かります。

国内旅行が高いと感じるのはなぜ?費用の内訳と行かない理由

同じじゃらん調査で1回当たり費用の内訳を見ると、宿泊費・交通費は3万7,000円から3万6,900円とほぼ横ばいでした。飲食・買い物・入場料などの現地消費は2万7,100円から2万8,800円へ増えています。

これはホテル料金がどこでも下がったという意味ではありません。旅行者が実際に選んだ宿泊先や交通手段を含む平均額です。単価が高くなった場所を避けたり、別の宿へ変えたりすれば、実際の支出は抑えられます。

一方、日本交通公社の『旅行年報2025』では、2024年に旅行をしなかった理由として「仕事などで休暇がとれないから」27.6%、「家計の制約があるから」25.2%、「なんとなく旅行しないまま過ぎた」24.7%が挙がっています。お金だけでなく、時間やきっかけも影響しています。

2026年夏休みのJTB意向調査でも、旅行に行かない理由には混雑、費用、自宅で過ごしたいという回答が並びます。こちらは夏の計画を尋ねた調査で、年間の旅行実績とは分けて捉えます。

「旅行が好きではなくなった」と「行きたいが今の条件では選ばない」は、事業者にとって別の需要です。前者には新しい関心を生む提案が、後者には価格・日程・移動負担などの条件を変える提案が関わります。

都道府県で見ると、旅行需要はどこへ動いたか

全国平均だけでは、旅行先の選び直しが見えません。じゃらん調査の都道府県別延べ宿泊旅行者数には、次のような増減がありました。

宿泊先 前年度からの増減・万人回
大阪府 +174
静岡県 +89
東京都 -52
神奈川県 -34
長野県 -25
京都府 -20

出典:じゃらん調査2026、PDF表示4ページ。観光目的の宿泊旅行、同じ人の複数回の旅行を含む延べ数です。

2025年度の日本人観光宿泊旅行は大阪府と静岡県で増え、東京都・神奈川県・長野県・京都府で減った。各増減を万人回の棒で比較
図をタップ・クリックすると拡大できます。

大阪の増加には大阪・関西万博という大きな来訪理由がありました。したがって、すべてを安い地域への移動と説明するのも適切ではありません。価格だけでなく、「その年にそこで体験したいこと」が需要を作っています。

出発地との組み合わせも手掛かりになります。関東居住者の旅行は、甲信越・北陸方面が72万人回減る一方、東海方面は71万人回、関西方面は66万人回増えました。同じ人が行き先を変えたという追跡結果ではありませんが、需要の配分が地域によって変わったことは確認できます。

減った地域がある一方で、増えた地域もある。全国の需要減少だけで考えるより、誰がどの出発地から来なくなり、別のどこへ向かったのかを見るほうが、地域の集客分析に役立ちます。

京都では宿泊が減っても日帰りが増えた

京都市の「令和7年京都観光総合調査」は、さらに分かりやすい例です。

日本人観光客 2024年 2025年 増減率
日帰り 3,597万人 4,162万人 +15.7%
宿泊 921万人 849万人 -7.8%
合計 4,518万人 5,011万人 +10.9%

出典:京都市調査概要、PDF表示2ページ。2025年に変更した推計方法で過去年も遡及修正された数値を使用。増減率は公表人数から計算しています。京都府全体ではなく京都市、暦年の数値です。

宿泊客だけを見れば、日本人の京都離れに見えます。しかし、日帰りを含めた日本人観光客数は増えています。京都に行くことをやめた人ばかりではなく、泊まらない形で訪れる需要もあります。

この数字だけで、高いホテル代が日帰りへの変更を引き起こしたと特定はできません。それでも「宿泊減=目的地への関心低下」と読めないことは明確です。宿泊施設、飲食店、交通、観光施設では、同じ地域でも需要の変化が違って見えます。

京都市は日本人の「再び訪れたい」が91.2%、「大変そう思う」が53.5%とも公表しています。客数が多いことだけで満足度の問題が解消されるわけではなく、来訪と体験の評価を合わせて追う意味があります。

旅行ニーズが消えたというより、予算内の旅に組み替えている

ここまでの資料を合わせると、日本人が一斉に旅行へ関心を失ったという説明は粗すぎます。参加率の伸び悩みはある一方、旅行する人の回数・泊数は微増し、行き先や日帰りの動きには違いがあります。

同じ予算でも、ホテルに使うか、食事に使うか、移動を短くするかで旅行の姿は変わります。例えば、宿泊を省いて食事を楽しむ、混雑する地域の中心部ではなく周辺に泊まる、といった組み替えです。

事業者が見る対象も、単なる「節約志向」からもう一段細かくできます。

見えている現象 次に見たいデータ 検討できること
宿泊客が減った 日帰り客、周辺地域の宿泊 地域自体の需要減か、泊まり方の変更か
売上が増えた 客数、単価、費目別消費 利用者が広がったのか、残った客の負担増か
遠方客が減った 出発地別・交通手段別 交通費・時間の負担に合う提案か
イベント年に客数が増えた 通常期、目的、再訪意向 一時的な需要を次の来訪につなげられるか

一律の安売りが答えとは限りません。何を削り、何にはお金を残したいのかが分かれば、総予算内で満足できる組み合わせを提案できます。地域ならではの体験を目的地選びにつなげる例は、佐渡の冬の食を扱った記事でも考えています。

よくある質問

旅行しない人は半数いるのですか?

じゃらん調査では、2025年度に観光目的の国内宿泊旅行をした18~79歳は48.9%でした。ただし、旅行しなかった残りの人すべてが、日帰り、海外旅行、帰省、出張もしていないという意味ではありません。

国内旅行の消費額が増えていれば、旅行離れではないのですか?

人数が減っても単価が上がれば消費額は増えます。市場の金額だけでなく、参加率、回数、泊数、行き先を合わせて見ると実態を理解できます。

まとめ|旅行の諦め方ではなく、続け方が変わっている

旅行参加の伸び悩みや費用負担はあります。それでも、地域別・費目別に見ると、旅行をやめる以外の調整が見えてきます。

「日本人は旅行しなくなった」で終わらせず、限られた予算でどこへ行き、何に使い、何を省いたのかを見る。そこに、現在の旅行需要を捉える分析の余地があります。

参考資料

—
本記事の文章・表・図解・グラフは、Skill Business Architecture Labが独自に編集・作成しています。引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名・サイト名・記事URLをご記載ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました