結局、SDGsってどうなった?ブームの後に進んだこと・残った課題

SDGsはどうなった?ブームの後の関心の低下、進んだこと、残った課題を振り返る マーケティング事例・ニュース分析

テレビの特集、企業の広告、名刺や胸元のカラフルなロゴ。あれほど見聞きした「SDGs」を、最近は以前ほど意識しなくなった、と感じる人もいるのではないでしょうか。

では、結局どうなったのでしょうか。SDGsは今も2030年を目標に続いています。水や電力へのアクセス、日本の食品ロスなど、改善したこともあります。ただ、世界の目標達成には大きな遅れがあり、企業の取り組みも一様に広がっているわけではありません。

言葉のブーム、活動の広がり、実際の成果。この三つは別々に動いています。 本記事では2026年公表の調査・統計を中心に、あのブームの後に何が変わり、何が残っているのかを振り返ります。

SDGsは終わった?検索と認知は下がっても、目標は続いている

SDGsは、2015年に国連で採択された持続可能な開発目標です。2030年に向けた17の目標と169の具体的なターゲットがあり、環境だけでなく、貧困、健康、教育、働きがい、不平等なども対象にしています。

「最近聞かなくなった」という感覚には、裏づけがあります。Googleトレンドの日本・過去5年間の「SDGs」では、検索の相対的な人気が上下しながら低下しています。ただし、指数は期間内の最大値を100としたもので、検索件数そのものではありません。

博報堂の「生活者のサステナブル購買行動調査2026」でも、SDGsの内容を知っている人の割合は、ピークの2023年から下がっています。

調査年 SDGsの内容を知っている割合
2023年 55.7%
2025年 51.3%
2026年 48.0%

2026年調査は、全国の16〜79歳の男女5,000人を対象にしたインターネット調査です。上の数値は、内容をよく知る人と、ある程度知る人の合計であり、言葉を聞いたことがある人全体の割合ではありません。

検索と内容認知の両方が下がっているので、「普及しきって誰も検索しなくなっただけ」と片づけるのも早そうです。一方、このデータだけで、環境や社会課題への関心まで消えたとは分かりません。次に見るのは、言葉の人気ではなく、実際に変わったことです。

世界のSDGs達成状況――改善はあっても、2030年には間に合いにくい

国連の「持続可能な開発目標報告2026」では、水・衛生・電力などへのアクセスに改善が見られます。2015年以降、安全に管理された飲み水を使える人は約10億人、安全に管理された衛生施設を使える人は約12億人増えました。

しかし、「以前より良くなった」と「目標を達成できる」は違います。全169ターゲットのうち、データや専門機関の分析によって評価できた139ターゲットを見ると、順調または中程度の進展があるものは36%です。進展が遅いものが49%、後退したものが15%を占めています。

世界のSDGs進捗を3群で示した図。評価可能な139ターゲットのうち、順調または中程度の進展36%、進展が遅い49%、後退15%。36%には加速が必要なターゲットも含む
図をタップ・クリックすると拡大できます。

ここでいう36%は、達成済みの割合ではありません。中程度の進展があるものにも、2030年に間に合うには加速が求められています。

国連は、紛争、気候変動、経済成長の鈍化、債務負担、政府開発援助の減少などを障害として挙げています。生活やインフラの改善が積み重なる一方、新しい危機がその前進を押し戻している、という状況です。

ブームがあったのに達成できていないから、すべて無意味だった。改善があったから、SDGsは成功した。どちらかだけでは、現在の姿を捉えきれません。

日本のSDGsはどうなった?食品ロスと脱炭素から見る変化

食品ロスは減ったが、直近の事業系は増えている

日本で身近に変化を確認できるのが、まだ食べられる食品を捨てる「食品ロス」です。環境省の推計では、2015年度の646万トンから、2024年度には461万トンへ減っています。

年度 食品ロス全体 事業系 家庭系
2015年度 646万トン 357万トン 289万トン
2023年度 464万トン 231万トン 233万トン
2024年度 461万トン 237万トン 224万トン

長期では改善していますが、直近の2024年度は、家庭系が減る一方、事業系は増えました。全体の減少だけを見ていると、この違いが隠れてしまいます。

食品ロス削減には、SDGs採択前からの食品リサイクル法や、その後の食品ロス削減推進法など、具体的な制度があります。減少のすべてをSDGsブームの効果とは言えませんが、共通目標が個別の政策や活動と結びついている例として見ることができます。

脱炭素も進んでいるが、減少の理由まで見ると評価が変わる

2024年度の日本の温室効果ガス排出・吸収量は、森林などの吸収を差し引いて約9億9,400万トンでした。2013年度比で28.7%減り、初めて10億トンを下回っています。

ただし、環境省が挙げる前年度からの減少要因には、電源の脱炭素化だけでなく、製造業の生産量減少によるエネルギー消費の減少も含まれます。

設備や電源を変えて、同じ生産でも排出を減らせたのか。生産が落ちたため排出も減ったのか。この違いは、今後も減らせるかを考えるうえで重要になります。地球環境戦略研究機関(IGES)の2026年レポートも、日本の排出は減っているものの、今後の目標に対して削減ペースが足りないと分析しています。

「数字が下がった」という成果と、「目標へ十分に近づいた」という評価を分けると、脱炭素も単なる過去の流行語ではなく、進行中の課題だと分かります。

環境以外の課題も残る――日本政府の評価ではジェンダーや不平等に課題

SDGsは環境対策だけではありません。日本政府の2025年の自発的国家レビューは、健康、雇用、インフラなどの進展とともに、ジェンダーや不平等の課題を確認しています。

同レビューでは、女性の労働参加は進む一方、男女の賃金差や管理職への女性参画にはなお課題があると整理されています。社会に参加できる人が増えることと、その人が意思決定や待遇で公平に扱われることも、別の段階です。

食品ロスや排出量の改善を、SDGs全体の達成と読み替えないほうが、何が残っているかを見つけやすくなります。

企業のSDGs活動は残った?「実践」と「成果」を分けて見る

実践する企業は微増、これから取り組みたい企業は減少

帝国データバンクの2026年調査では、SDGsを理解して取り組んでいる企業は30.3%で、前年の30.2%から微増しました。一方、理解して取り組みたい企業は23.1%から22.3%へ減っています。調査は全国の企業を対象に実施され、有効回答は1万413社です。

既に実践している層は残っているものの、これから加わろうとする層の勢いは弱まっています。少なくとも、企業が一斉にSDGsから撤退したという数字ではありません。

宣言していなくても、目標に沿う仕事は行われている

同じ調査では、SDGsの17目標のいずれかに力を入れている企業は72.0%でした。「SDGsに取り組んでいる」と答えた30.3%とは設問が違い、働き方や省エネなど、個別の目標に沿う活動を尋ねています。

企業がSDGsを名乗るかどうかと、該当する仕事をしているかどうかには差があります。ただし、この72.0%も前年の73.2%から低下しており、「名前が消えただけで、活動はどんどん広がっている」とまでは読めません。

活動したことと、成果が出たことも別

いずれかの目標に力を入れる企業のうち、何らかの成果を実感している割合は47.8%でした。これは企業自身の回答であり、SDGsの活動が業績や社会指標を改善したと客観的に証明した数値ではありません。

例えば、会社が「人材育成に取り組む」と宣言し、研修を実施したとします。宣言は方針、研修は活動です。その先の技能向上や働き方の改善まで確認できれば、成果を考えやすくなります。ロゴや研修の実施件数だけでは、そこまでは分かりません。

SDGsを残すか、やめるかという二択より、何を変えるための活動で、何が変わったのかを見るほうが、企業の取り組みを評価しやすそうです。

なぜSDGsのブームだけでは、目標達成につながらないのか

社会への賛同があっても、負担を引き受けられるとは限らない

博報堂の調査では、社会や環境に配慮した買い物に関心があっても実践できない理由として、経済的負担39.3%、手間20.5%、生活スタイルを変えるハードル18.2%が挙がっています。

環境に良い商品に賛成することと、割高な代金や追加の手間を引き受けることは、同じではありません。企業側でも、資金や人員を確保できなければ、理念への賛同だけで活動を続けるのは難しいでしょう。

例えば、同じ量で価格が高く、使い方にも手間がかかる商品を、「環境のため」と説明するだけでは、家計や時間に余裕がない人が選びにくくなります。一方、詰め替えによって購入費やごみの量も減るなら、社会的な価値と生活上のメリットを一緒に受け取れます。これは商品設計を考えるための説明例です。

ここから考えられるのは、「消費者の意識を高めれば解決する」という説明では足りない、ということです。理念に賛同した人が参加できる価格や使い勝手、続けられる条件も問われます。

共通目標があっても、予算や実施の仕組みは別に必要になる

SDGsは各国が共有する目標であり、それ自体が、すべての企業に同じ行動を強制する法律ではありません。目標を掲げることと、それを実行する制度、資金、人員を用意することには距離があります。

一方、企業のサステナビリティ情報を報告する仕組みは具体化しています。金融庁は2026年、一定規模以上の東証プライム上場企業へのサステナビリティ開示基準の段階適用に向け、制度を整備しました。

これはSDGsが別の名前になったという話ではなく、企業の持続可能性に関する情報を、比較・評価しやすくする別の仕組みです。開示が整っても、報告された活動が十分な成果につながっているかは、引き続き確かめる課題として残ります。

ブームの評価は、認知・活動・成果の三段階で変わる

見る段階 分かること それだけでは分からないこと
認知・関心 言葉や理念がどの程度知られたか 実際に行動したか
活動・制度 取り組みや仕組みが存在するか 課題がどの程度改善したか
成果・目標との差 実際の変化と残る課題 改善のすべてがSDGsによるものか

SDGsという共通の枠組みは、別々の課題を同じ場で話す助けになります。ただ、認知や活動を増やすことと、解決を進めることが同じ成果として扱われると、「あれだけ盛り上がったのに、どうなったのか分からない」という状態が残ってしまいます。

SDGsの現在・2030年についてのFAQ

SDGsは失敗したのでしょうか?

全面的に失敗したとも、成功したともまとめにくい状況です。改善した指標がある一方、国連の2026年評価では、進捗の遅いターゲットや後退したターゲットが多く残っています。何の目標を、どの期間で評価するかによって答えが変わります。

SDGsは環境問題だけを扱うものですか?

環境に加え、貧困、健康、教育、ジェンダー、雇用、不平等などを含みます。環境への配慮だけを見ても、SDGs全体の成果は判断できません。

2030年になったら、SDGsの取り組みは終わりますか?

2030年は現在の目標の達成年限であり、社会課題が消える日ではありません。国連の「未来のための協定」は、2027年に2030年までと、その先の持続可能な開発をどう進めるか検討することを掲げています。今の17目標がそのまま続くと決まったわけではありません。

SDGs宣言をしている企業は、成果を出している企業ですか?

宣言だけでは成果までは分かりません。対象の課題、実際に変えた業務、変化を測る指標まで示されていると、取り組みを評価しやすくなります。宣言の有無と実際の貢献を分けて見る視点が役立ちます。

結局、SDGsは何を残したのか

SDGsのブームの後には、改善した指標、続いている企業活動、具体化した制度が残っています。同時に、進捗の遅れや、取り組みを広げにくい現実も残っています。

「最近聞かないから終わった」と考えると、進んだことを見落とします。「社会に定着したから大丈夫」と考えると、未達や停滞を見落とします。

振り返る際に役立つのは、あの言葉が何を変えたのか、掲げた目標との距離はどれだけ残っているのかという問いです。認知、活動、成果を分けて見ることで、SDGsを懐かしい流行語で終わらせず、現在の企業や社会を理解する材料にできるのではないでしょうか。

参考資料


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