AI時代の購買行動モデルとは?4CAで読み解く消費者行動とAI広告

AI時代の購買行動モデル4CA。AIとの対話で選ぶ条件が明確になる。 マーケティング事例・ニュース分析

「仕事用のパソコンを買い替えたい。何を選べばいい?」

以前なら検索窓へ入力していた相談を、AIに投げかける。用途や困りごとを話し、候補を比べ、購入条件を確認する。こうした買い方が広がると、変わるのは情報の探し方だけではありません。何を基準に商品を選ぶかを決める場所も、AIとの対話へ広がります。

検索やSNSが購買行動を支えるプラットフォームになったように、AIも相談から購入判断までを支える場になりつつあります。ChatGPTでの広告展開や、GoogleのAI検索における広告の取り組みは、その変化を考える手がかりです。

AI時代の購買行動モデルを提案する動きもあり、国内電通グループは2026年9月に、人とAIの協働による意思決定を捉える「AIJES」を発表しています。

スキルラボが注目するのは、顧客自身も曖昧だった欲求や選択条件が、AIとの対話によって明確になる過程です。 本記事では、Skill Business Architecture Lab(スキルラボ)が提唱する購買行動モデル「4CA」で、相談・条件整理・比較・確認・行動を整理します。そこから、AI広告が生まれる理由と、マーケティングへの影響を考えます。

  1. AISAS・ULSSASから考える、プラットフォームと購買行動の変化
    1. AISASは、検索と共有を含む購買行動を捉えた
    2. ULSSASは、SNSの投稿や反応から生まれる購買の循環を捉えた
    3. AIも、相談から購入判断までを支えるプラットフォームになりつつある
  2. AI時代の購買行動モデル「4CA」とは
    1. Consult|悩みや実現したいことを相談する
    2. Clarify|用途・予算・優先順位を明確にする
    3. Compare|条件に合う商品・サービスを比較する
    4. Confirm|価格や購入条件、不安な点を確認する
    5. Action|購入・予約・問い合わせへ進む
  3. 4CAの特徴は、対話の中で「選ぶ条件」が明確になること
    1. 商品名や欲しい機能が決まっていなくても、相談を始められる
    2. 質問を重ねることで、欲求や購入をためらう理由が見えてくる
    3. 条件整理・比較・確認を、一つの対話の中で進められる
  4. AIが購買のプラットフォームになると、広告接点も変わる
    1. 商品を検索した瞬間だけでなく、相談や比較の途中にも接点が生まれる
    2. キーワードに加え、相談の目的や条件が広告との関連性を生む
    3. ChatGPT・Google・Copilot・Amazonは、どのような広告接点を作っているか
  5. AI広告に、検索広告などの予算は移っていくのか
    1. 顧客が相談・比較する場所は、広告予算の配分先にもなり得る
    2. Google内での広告接点の変化と、他のAIサービスへの予算移動を分けて考える
    3. 予算配分を動かすのは、利用時間だけでなく獲得成果と採算
  6. AI時代も、マーケティングの出発点は顧客インサイト
    1. 顧客が実現したいこと、購入をためらう理由を捉える
    2. その欲求や不安が、AIとの対話でどう整理・解消されるかを考える
    3. 顧客の判断が進む過程から、企業が届けるべき情報と接点を見つける
  7. 参考資料

AISAS・ULSSASから考える、プラットフォームと購買行動の変化

AISASは、検索と共有を含む購買行動を捉えた

電通が提唱したAISASは、Attention(注意・認知)、Interest(興味・関心)、Search(検索)、Action(行動)、Share(共有)で購買行動を整理するモデルです。

商品を知って興味を持ち、検索して詳しく調べ、購入した後に感想を共有する。企業からの情報を受け取るだけでなく、消費者自身が情報を探し、発信する行動を捉えています。

パソコンなら、気になる商品を広告で知り、製品名で検索して仕様や口コミを確かめ、購入後に使い心地を投稿する、といった流れです。

ULSSASは、SNSの投稿や反応から生まれる購買の循環を捉えた

ホットリンクが提唱するULSSASは、UGC(ユーザーによる投稿)、Like(いいね)、Search 1(SNSでの検索)、Search 2(検索エンジンでの検索)、Action(購買)、Spread(拡散)からなるモデルです。

誰かの投稿を見て気になり、SNSや検索エンジンで調べて購入する。その購入者の投稿が、さらに別の人の関心につながります。SNSは企業が広告を届ける場所であると同時に、消費者同士の発信から購買が生まれる場にもなっています。

AIも、相談から購入判断までを支えるプラットフォームになりつつある

AIには、商品名も必要な機能も決まっていない状態から相談できます。「今のパソコンが使いにくい」と話すところから、用途を整理し、商品を比較し、疑問を確認するところまで、対話を続けられます。

検索と共有を含むAISAS、SNSの投稿・検索・購買・拡散が循環するULSSAS、AIとの対話で条件を整理する4CAを比較した図。

検索・SNS・AIへと購買を支える場が広がる中で、私たちが注目するのは、AIが情報の入手先に加えて、選ぶ条件を一緒に整理する相手になることです。この特徴を捉えるために、4CAモデルを提案します。

AI時代の購買行動モデル「4CA」とは

4CAモデルは、AIとの対話を通じた購買行動を捉えるために、Skill Business Architecture Lab(スキルラボ)が提唱する購買行動モデルです。 Consult(相談)、Clarify(条件整理)、Compare(比較)、Confirm(確認)、Action(行動)の五つで整理します。四つのCとActionを合わせて、4CAと呼びます。

Consult|悩みや実現したいことを相談する

出発点は、「仕事用に、性能のいいパソコンが欲しい」といった相談です。

この時点では、本人も何をもって性能がよいとするかを説明できないかもしれません。動作の速さなのか、持ち運びやすさなのか、長時間使えることなのか。商品を指定する前の、漠然とした希望から始められます。

Clarify|用途・予算・優先順位を明確にする

AIから「どこで使うか」「何の作業をするか」「今の機種で何に困っているか」と聞かれ、答えていきます。

外出先での資料作成が多く、今の機種は重いうえに電池がもたない。そう整理できれば、選ぶ条件は「とにかく高性能」から「必要な作業ができ、軽くて電池持ちがよい」へ変わります。

商品を比べる前に、自分が何を求めているかが明確になる。ここが4CAで特に重視する過程です。

Compare|条件に合う商品・サービスを比較する

条件が見えたら、その条件に合う候補を比べます。

例えば、Aは軽く、Bは電池持ちに優れる。価格や画面の大きさも含めて、どちらが自分の使い方に合うかを検討します。比較するうちに「この重さなら許容できる」「やはり画面は大きいほうがよい」と気付き、条件を見直すこともあります。

Confirm|価格や購入条件、不安な点を確認する

候補を選んだ後は、購入して問題ないかを確かめます。

「Bにしたいが、必要なソフトは使えるか」「総額はいくらか」「いつ届くか」「故障時の保証はどうなるか」。Compareが候補同士を比べる過程なら、Confirmは選ぼうとしている候補について、残った疑問を解消する過程です。

Action|購入・予約・問い合わせへ進む

納得できれば購入し、法人であれば見積もりや社内承認へ進みます。AIとの相談から販売サイトへ移動する場合もあれば、連携したサービスで手続きを進める形も考えられます。

将来、購入や予約の機能がさらに結び付けば、相談から行動までを一つのAIサービス上で進める場面も増えるでしょう。4CAは、こうした買い方が広がる可能性を捉えるためのモデルです。

4CAの特徴は、対話の中で「選ぶ条件」が明確になること

商品名や欲しい機能が決まっていなくても、相談を始められる

「おすすめのパソコン」と検索すれば、多くの候補や比較記事が見つかります。しかし、候補が増えるほど選びにくくなる人もいます。価格、処理性能、重さ、画面、電池持ち。何を重視すべきかが分からないままでは、比較表を読んでも判断しづらいためです。

AIとの対話では、まず自分の状況を話せます。専門用語や製品の分類を知らなくても、「外出先で資料を作りたい」「今の機種は持ち歩くのがつらい」という日常の言葉から、選択条件を整理できます。

仕事用パソコンの購入を例に、AIへの相談から条件整理、比較、確認、行動へ進む4CAモデル。対話によって、漠然とした高性能への希望が、軽さと電池持ちを優先する条件へ変わる。

質問を重ねることで、欲求や購入をためらう理由が見えてくる

この例で欲しかったのは、高い処理性能そのものだったのでしょうか。話を整理すると、実際には「外出先でも不自由なく仕事をしたい」という希望が見えてきます。

また、「安い機種では仕事に使えないのでは」といった不安が、候補を狭めていることもあります。用途に必要な条件を確認すれば、その不安を検討するための材料が得られます。

Clarifyは、予算や機能を入力するだけの作業ではありません。なぜ欲しいのか、何に困っているのか、何を心配しているのかを言葉にし、優先順位を決めていく過程です。

これは店頭での接客や営業との会話にもある役割です。AIによって、そのような対話を商品選びの早い段階から始められることに意味があります。

条件整理・比較・確認を、一つの対話の中で進められる

AIとの会話では、整理した用途や不安を踏まえながら、次の比較や確認へ進めます。「軽さを優先すると価格が上がるなら、少し重くてもよい」と条件を戻して考えることもできます。

顧客は、完成した購入条件を持って最初から現れるとは限りません。相談し、候補を知り、疑問を解消する中で、買いたいものが具体的になります。

企業にとっても、最後に選ばれた商品だけを見るのと、その前にどのような条件が整理されたかを考えるのとでは、顧客の理解が変わります。ここから、AI上の広告接点を考える意味が生まれます。

AIが購買のプラットフォームになると、広告接点も変わる

商品を検索した瞬間だけでなく、相談や比較の途中にも接点が生まれる

ここでいうAI広告は、AIで広告文や画像を作ることではなく、AIサービスやAIを使った検索・買い物の中に表示される広告です。

用途や予算が具体的になると、その条件に合う商品を知る意味も大きくなります。パソコンの例なら、「軽さと電池持ちを重視したい」と分かったところで、その希望に合う商品情報が選択肢になります。

相談や比較の場に広告が入ることは、単に表示場所が増えるという話ではありません。顧客が何を選ぼうとしているかが具体的になる過程で、企業や商品との接点が生まれるという変化です。

キーワードに加え、相談の目的や条件が広告との関連性を生む

「パソコン おすすめ」という言葉だけでは、利用目的は分かりません。一方、相談の中には、外出が多い、資料作成が中心、重さや電池に困っている、といった条件が含まれます。

この文脈を広告との関連付けに使えれば、顧客が今確かめたいことに合う商品情報を届けられる可能性があります。もちろん、広告主が個人の会話を読めるという意味ではありません。OpenAIは、広告を回答と区別し、会話内容を広告主へ開示しない方針を示しています。

企業側から見ると、商品名や機能だけでなく、どのような用途や困りごとに応えられる商品なのかが、接点を考えるうえで重要になります。

ChatGPT・Google・Copilot・Amazonは、どのような広告接点を作っているか

各社の公式発表から、主な取り組みを整理します。

サービス 広告接点の特徴 公表されている展開
ChatGPT 会話の話題などに関連する広告を、回答と区別して表示 2026年8月に日本への広告展開を発表
Google AIによる検索・検討の中で、関連する商品やサービスを案内 2026年5月にAI Modeの新しい広告形式のテストを発表
Microsoft Copilot 会話の文脈に合わせた広告体験を設計 2024年にCopilotの広告体験の更新を発表
Amazon 商品に関する質問から、Rufusなどでの対話や商品情報の確認へつなぐ 関連する広告プロンプト機能を2026年3月に米国で一般提供

※各社の提供地域・対象・展開段階は異なります。公式発表は記事末尾に掲載しています。

汎用的な相談を受けるChatGPTと、買い物の場で使うAmazonでは、利用者の状況も違います。ただ、対話によって検討が進む場に広告接点を作るという動きは、共通して見て取れます。

AI広告に、検索広告などの予算は移っていくのか

顧客が相談・比較する場所は、広告予算の配分先にもなり得る

顧客がAI上で候補を知り、比較し、問い合わせや購入へ進むようになれば、広告主がそこへ予算を配分する理由が生まれます。

スキルラボでは、特に調査・比較・相談を経て購入する商材で、検索広告とAI広告を比較して配分する場面が増えると考えます。どちらも、解決方法や商品を探している人との接点になり得るためです。

ただし、新しい広告への支出がすべて検索広告から移るとは限りません。新規予算の場合も、SNSなど別の施策から配分する場合もあります。注目したいのは、購入を検討している人に出会う場所が変わることで、従来の予算配分を見直す理由が生まれる点です。

Google内での広告接点の変化と、他のAIサービスへの予算移動を分けて考える

GoogleがAI検索の中に広告接点を増やすことと、広告主がChatGPTなどへ予算を移すことは、異なる動きです。

前者は、同じ事業者が提供する検索体験と広告の変化です。後者は、広告予算を配分する媒体そのものの変化です。「AI広告が増える」というだけでは、どちらが起きているかは分かりません。

今後を見る際は、広告の見た目や名称だけでなく、顧客がどこで検討し、どの接点から行動したのかに注目する必要があります。

予算配分を動かすのは、利用時間だけでなく獲得成果と採算

AIの利用時間が増えても、それだけで広告予算が同じ割合で移るわけではありません。広告主にとっては、いくらで問い合わせや購入を獲得でき、どの程度の売上につながるかが重要です。

少額でよい成果が出ても、獲得できる件数が少なければ、予算全体への影響は限られます。逆に、採算に合う成果を十分な規模で得られるなら、継続的に予算を配分する理由になります。

AIが購買行動を支える場として使われ、その接点が広告成果にも結び付く。その両方が進むかどうかが、広告市場の変化を見るポイントです。

AI時代も、マーケティングの出発点は顧客インサイト

顧客が実現したいこと、購入をためらう理由を捉える

AIが相談相手になっても、顧客が何を実現したくて、何に迷い、何を知れば購入へ進めるのかを理解する重要性は変わりません。

パソコンの例であれば、「高性能な機種が欲しい」という言葉の背景に、外出先でも不自由なく働きたいという希望があります。こうした言葉の奥にある欲求や判断理由が、顧客インサイトを考える材料です。

実際の購入・見送りの理由を知ることも、その手がかりになります。法人向け商材での分析の考え方は、受注・失注理由を分析する方法でも説明しています。

その欲求や不安が、AIとの対話でどう整理・解消されるかを考える

変わるのは、欲求を言葉にし、不安や疑問を解消する過程です。検索やSNS、複数のサイトで確かめていたことを、AIとの対話でも進められるようになります。

どんな質問で必要な条件に気付き、どんな説明で不安が解消され、どの比較で候補を選ぶのか。4CAの中でもClarifyに注目するのは、この過程に顧客を理解する手がかりがあるからです。

顧客の判断が進む過程から、企業が届けるべき情報と接点を見つける

4CAのような購買行動が広がれば、企業には、商品を選ぶ条件が整理される場面から顧客との接点を考える視点が求められます。

自社の顧客はAIに何を相談し、どのようなやり取りを経て購入を決めるのか。 AI広告という新しい枠だけを見るのではなく、その中で欲求がどう明確になり、不安や疑問がどう解消されるのかを考える。それが、AI時代のマーケティングを考える出発点になります。

参考資料


本記事の文章・表・図解・グラフは、Skill Business Architecture Labが独自に編集・作成しています。引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名・サイト名・記事URLをご記載ください。

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