デジタルマーケティングをCVで終わらせない|顧客接点と売上を追跡する

デジタルマーケティングをCV・CPAの改善だけで終わらせず、問い合わせた会社、営業接点、受注・失注、売上まで追跡する方法を解説。分断されたデータをつなぎ、売上の結果を次の顧客理解とマーケティング改善へ戻す考え方を整理します。 顧客接点・売上追跡

デジタルマーケティングは、広告やSEOで問い合わせを集める仕事ではありません。Webが事業の中心にある会社が昨今多くなっため「デジタルマーケティング」と呼ばれているだけで、本質はマーケティングです。

顧客を知り、必要とされる商品や価値を考え、適切な相手へ届ける。購入された後は、誰が何を評価し、なぜ売上につながったのかを確認して、次の商品や伝え方へ戻す。この流れは、実店舗を中心にした事業でも、ECやWebを中心にした事業でも変わりません。

ところが、Webを主な接点とする事業では、顧客との間にモニターが入ります。画面の中の行動は、IMP、クリック、CV、CPAなどの数値に置き換えられます。細かく測定して改善できる一方、見やすい数値に業務が引っ張られると、マーケティング全体が集客業務として扱われやすくなります。

問い合わせが発生すると、広告管理画面では「CV1件」と記録されます。その後、その顧客へ誰が連絡し、商談へ進んだのか、なぜ受注または失注したのか、いくら売上を作ったのかは、別の部署やシステムへ移ります。

ここで顧客を追うのをやめると、マーケティングの循環はCVで切れます。売上後の結果が顧客理解へ戻らないため、担当者は再びCVとCPAの改善へ戻るしかありません。

この循環を再開するために必要なのが、CV、会社情報、営業接点、受注・失注、売上の接続です。

本記事では、デジタルマーケティングをCVで終わらせず、顧客接点と売上を追跡し、その結果を次の顧客理解とマーケティング改善へ戻すための基礎を整理します。

デジタルマーケティングは集客ではなくマーケティング

本記事では、デジタルマーケティングを、広告やSEOなどのデジタル集客だけとは考えません。ECをはじめ、Webが顧客との接点や販売経路の中心にある事業で行われるマーケティングを指します。通常のマーケティングと本質的に異なるものではありません。

広告、SEO、SNS、Webサイトは、顧客と出会い、情報を届けるための手段です。それらの運用だけを指して、デジタルマーケティングと呼んでいるわけではありません。

顧客の課題やニーズを理解し、商品や提供価値を設計する。その商品を必要とするターゲットを決め、広告、Webサイト、営業などを通じて接点を作る。購入後の結果を確認し、次の商品や伝え方へ反映する。この一連の活動が循環しています。

顧客理解から商品・価値設計、ターゲット設定、集客、問い合わせ、商談、受注、売上、結果分析へ進み、再び顧客理解へ戻るマーケティングの循環図。CVは終点ではなく中間地点であり、集客業務として扱われやすい範囲だけで確認を止めず、売上まで追跡する必要性を示している。

デジタルマーケティング部門が、商品設計、営業、契約、顧客対応のすべてを担当する必要はありません。会社によって各段階を担当する部署は異なります。しかし、担当範囲が分かれていても、マーケティングの流れそのものがCVで終わるわけではありません。

ただし、自分たちの施策から生まれた顧客が、その後どのような結果につながったかは確認する必要があります。売上後の結果を見なければ、次の顧客理解、商品設計、ターゲット設定、訴求改善へ循環させられないからです。

なぜデジタルマーケティングが集客業務になりやすいのか

Web集客では、顧客の行動を細かく数値で確認できます。

  • 広告が何回表示されたか
  • 何回クリックされたか
  • どのページが読まれたか
  • 何件の問い合わせが発生したか
  • CV1件を獲得するためにいくらかかったか

これらの数値があるからこそ、広告文、キーワード、配信対象、入札、ランディングページなどを継続的に改善できます。CVやCPAを管理すること自体は、広告やWebサイトを運用するうえで必要です。

一方、CV後の情報は広告管理画面やGA4から見えにくくなります。

広告管理画面・GA4
流入経路、クリック、CV、CPA

会社DB
問い合わせた会社名

CRM・SFA
営業接触、商談、受注・失注

販売管理システム
受注額、売上

顧客が営業部門へ渡ると、マーケティング担当者の確認範囲もそこで終わりがちです。営業部門も、受け取ったリードがどの広告やSEO記事から来たかを、常に確認しているとは限りません。

ペルソナやカスタマージャーニーを作っても、実際に問い合わせた顧客が受注したのか、いくら売上を作ったのかを確認できなければ、日常の運用へ反映しにくいでしょう。各段階のデータ、管理する担当者、結果を戻す方法が決まっていないと、最終的には毎日確認できるCVとCPAの管理へ戻ります。

CVで確認を止めるとマーケティングの循環が切れる

CVまでしか確認しない場合、Web集客の改善も、CVを増やしCPAを下げるところへ集中します。

しかし、CPAが改善しても、獲得したリードが商談や受注へ進まなければ、売上は期待したほど増えません。反対に、CPAが高く見える施策でも、顧客転化率や会社当たりの売上が高ければ、会社にとって重要な施策である可能性があります。

受注・失注の結果が戻らないと、顧客が問い合わせ時に何を期待し、営業と話した後に何を評価したのか、何が合わなかったのかも分かりません。

その結果、次のような状態が続きます。

  • 売上を作った顧客がどの施策から来たか分からない
  • 問い合わせが商談へ進まない原因が分からない
  • 失注理由を広告やWebサイトへ反映できない
  • 顧客が評価した強みを次の訴求へ使えない
  • 広告費を削減したときの売上への影響を説明できない

会社が成長し、リードを増やせば売上も伸びる間は、この断絶が大きな問題として表れないことがあります。ところが、安定期や衰退期に入り、経営がコストの妥当性を確認するようになると、デジタルマーケティングの売上貢献が問われます。

そこでCVとCPAまでしか説明できなければ、デジタルマーケティング部門は、コストを使って問い合わせを供給する専門的な集客装置として見られます。本来はマーケティングを担っていても、社内からは広告やSEOを運用する部署にしか見えなくなります。

循環を再開するにはCVの先にいる顧客を追う

Web集客の運用指標と会社の経営指標の間にいるのは、実際に問い合わせた顧客です。

広告・SEO・SNSなどの顧客接点
      ↓
      CV
      ↓
   問い合わせた会社
      ↓
 営業接触・商談・提案
      ↓
    受注・失注
      ↓
      売上

広告管理画面でCVを一件増やしたのも、営業担当者と話したのも、商品を購入したのも同じ顧客です。その顧客を途中で見失わずに追うことで、広告運用の結果と会社の売上をつなげられます。

最初からすべての接触媒体を把握したり、複雑なアトリビューション分析を作ったりする必要はありません。まず確認したいのは、次の内容です。

  1. どの施策からCVが発生したか
  2. 問い合わせた会社はどこか
  3. 営業が接触できたか
  4. 商談へ進んだか
  5. 受注または失注したか
  6. どの程度の売上が生まれたか

この情報が見えるだけでも、CVを多く獲得した施策と、実際に顧客や売上を作った施策を分けて確認できます。

売上後の分析を次の顧客理解へ戻す

売上を確認することは、経営へマーケティングの成果を報告するためだけではありません。

受注した顧客を確認すれば、どのような会社が商品を必要とし、何を評価したのかが分かります。失注した顧客を確認すれば、問い合わせ時の期待と実際の商品・条件の間に、どのような差があったのかを考えられます。

例えば、問い合わせ時には少額から導入できると思われていたものの、営業との会話で最低発注額が想定より高いと分かり、失注していたとします。

「予算が合わなかった」という失注理由だけでは、値下げや低価格商品の検討で終わるかもしれません。しかし、問い合わせ時と営業接触後の認識の差まで分かれば、価格帯、最低発注額、費用に含まれる価値を問い合わせ前に伝えるという改善も考えられます。

顧客接点と売上を追跡した結果は、次の活動へ戻せます。

  • 売上を作っている顧客の特徴からターゲットを見直す
  • 受注理由から商品や提供価値の伝え方を見直す
  • 失注理由から価格、条件、サービス説明を見直す
  • 顧客が評価した強みを広告やSEO記事へ反映する
  • 対象外の問い合わせが多い施策の訴求を見直す
  • 売上への影響を確認しながら目標CPAや予算を検討する

こうして、売上という結果が次の顧客理解へ戻り、商品、ターゲット、顧客接点、集客の改善へ循環します。

マーケティングの循環に必要な最低限のデータ

循環を作るために、最初から大量の項目を取得する必要はありません。まず、次の情報を確認できる状態を目指します。

確認する情報主な内容
流入経路・施策広告、SEO、SNS、イベントなど
CV問い合わせ日時、問い合わせ内容
会社・顧客会社名、会社ID、新規・既存
営業接点接触、商談、提案、保留
受注・失注結果、理由、顧客の反応
売上会社別の受注額、一定期間の売上

データの保管場所は一つでなくても構いません。必要なときに同じ顧客として結びつけられれば、現在の環境を利用しながら確認できます。

重要なのは、ツールを導入することではなく、どの施策から来た顧客が、その後どうなったかを追えることです。

CVから売上までのどこで情報が切れているか確認する

自社がどこから始めるべきか判断するために、現在取得できている情報を順番に確認します。

流入経路は分かるか
 ↓
CVした会社名は分かるか
 ↓
営業の接触・商談状況は分かるか
 ↓
受注・失注と理由は分かるか
 ↓
会社別の売上は分かるか
 ↓
結果をマーケティング改善へ戻せるか

例えば、会社名と売上は結びつくものの、GA4のCVと会社名を結べないなら、問い合わせ時の識別情報が不足しています。会社名までは分かっても商談状況を確認できないなら、CRM・SFAの閲覧範囲や、営業部門との情報共有を見直す必要があります。

すべてに「はい」と答えられる会社ばかりではありません。大切なのは、最初から完璧な環境を求めることではなく、どこまで分かり、どこから分からないかを確認することです。

現在の状況に応じて3つの方法から始める

顧客接点と売上を追跡する方法は、現在のデータ環境と、確認したい時期によって変わります。

現在の状況最初に行うこと
これから発生するCVを正確に追いたいCV、会社情報、流入経路、売上を結べる状態にする
過去のCVについて今すぐ売上効果を知りたい対象を絞って既存データを手動で照合する
営業へ渡したリードのその後が分からない接触、商談、受注・失注と理由を確認する

これからのCVを会社名・売上と結ぶ

これから獲得するCVについては、流入情報、問い合わせ、会社、売上を後から結びつけられるようにします。

マーケティング担当者が技術方式を決める必要はありません。エンジニアへ「どの経路から問い合わせた会社が、その後いくら売上を作ったか確認したい」と伝え、必要な識別情報と保存項目を相談します。

詳しい考え方と依頼方法は、GA4のCVを会社名・売上と結びつける方法で説明しています。

過去のCVと売上を手動で確認する

過去のCVに必要な識別情報が保存されていない場合、後からすべてを正確に復元することは困難です。それでも、対象と期間を絞り、会社DB、イベント名簿、SFA、販売データなどを照合すれば、暫定的な結果を確認できる場合があります。

全件を追えなくても、一部のサンプルからCV1件当たりの売上を試算できれば、何も分からない状態より判断材料が増えます。手動で確認する方法は、BtoBマーケティングの費用対効果を手動で確認する方法で整理しています。

営業へ渡したリードの受注・失注を確認する

流入経路と売上がまだ結びついていなくても、自分たちが獲得したリードのその後は確認できます。

まず、営業が接触できたか、商談へ進んだか、受注・失注したかを確認します。その後、受注・失注理由や、問い合わせ時の期待と営業接触後の認識ギャップまで分かれば、実際の顧客情報をマーケティング改善へ戻せます。

具体的な確認方法は、リードの質が悪いと言われたら|受注・失注理由を分析する方法で解説しています。

デジタルマーケティング部門が連携の起点になる

CVと売上をつなぐ作業は、デジタルマーケティング部門だけでは完結しません。

部門持っている情報・役割
マーケティング流入経路、CV、施策分類、確認したい結果
営業顧客との接触、商談、受注・失注、その理由
販売・経理会社別の受注額、売上
エンジニア・情報システム各データを保存・接続する仕組み

マーケティング部門だけに売上の説明責任があるわけではありません。しかし、「どの施策から獲得した顧客が、その後どうなったかを確認したい」という目的は、流入経路やCVを把握しているマーケティング部門から示す必要があります。

営業部門は顧客の反応を知っていても、その情報をどの広告やSEO記事の改善に使えるかまでは判断しにくいでしょう。エンジニアも、何をどの単位で確認したいか分からなければ、適切なデータ連携を設計できません。

マーケティング部門が確認したい結果と必要な情報を整理し、関係部署へ協力を求めることで、CVで止まっていた循環をつなぐ作業が始まります。

まとめ|データをつないでマーケティングの循環を再開する

デジタルマーケティングは、マーケティングとは別の活動ではありません。Webが中心の事業でも、顧客を知り、商品や伝え方を改善し、売上につなげ、その結果を次の顧客理解へ戻す仕事です。

しかし、顧客の行動がIMP、クリック、CV、CPAとして細かく見えるため、運用は取得しやすい数値へ引っ張られます。問い合わせ後の顧客を追わなければ、商談、受注、売上の結果が次の顧客理解へ戻りません。

この循環がCVで切れたままでは、マーケティング全体が広告、SEO、SNSによる集客業務へ縮小され、担当部門もコストを使って問い合わせを集める専門的な装置として見られます。

まず必要なのは、高度な分析ではありません。CVした会社を確認し、営業接点、商談、受注・失注、売上まで追える基礎を作ることです。

売上の説明責任をマーケティング部門だけで負う必要はありません。ただし、マーケティング部門が連携の起点にならなければ、Web集客の運用に必要な数値と、会社の運営に必要な数値の断絶は残り続けます。

データをつなぐこと自体が目的ではありません。顧客理解から始まり、商品、集客、商談、顧客化、売上へ進み、その結果を再び顧客理解へ戻す。このマーケティングの循環を作るために、まずCVの先にいる顧客を追える状態から始めてみてはいかがでしょうか。


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