事業目標から作るデジタルマーケティング戦略|予算・施策・投資判断

事業目標からデジタルマーケティング戦略を立てる方法を解説。部門目標、必要予算、前年予算、新規・既存への配分、短期・中長期施策、期中の見直し、経営への投資判断まで一つの流れで整理します。 事業目標・マーケティング戦略

デジタルマーケティング戦略を作るとき、広告、SEO、SNS、メールなど、実施する施策から考え始めていないでしょうか。

施策は重要です。しかし、事業目標との関係が分からないまま施策を並べても、必要な成果、予算、担当者、実施時期を決められません。限られた金と人を複数の施策へ分散させ、どの施策も成果を出すために必要な水準へ届かないこともあります。

デジタルマーケティング戦略は、デジタル施策の一覧ではありません。

売上や利益などの事業目標を、デジタルマーケティング部門が追う目標へ変換し、必要な金・人・時間を配分して、施策の実行と投資判断へつなげる設計です。

実際の計画では、事業目標から必要予算を算定しても、その予算が承認されるとは限りません。前年踏襲の予算で計画するよう求められることもあります。限られた予算を新規顧客と既存顧客、短期施策と中長期投資へ配分し、期中に目標未達が見えれば施策を選び直します。それでも部門内で解決できなければ、経営へ追加投資の判断を求めます。

本記事では、事業目標からデジタルマーケティング戦略を立て、部門目標、予算、施策、投資判断へ落とす一連の流れを扱います。

  1. 事業目標からデジタルマーケティング戦略を立てる全体像
  2. 事業目標をデジタルマーケティング目標へ変換する
    1. 現在の事業構造で達成できる売上を試算する
    2. 目標と現状予測の差をマーケティングの役割へ変える
  3. 目標達成に必要なデジタルマーケティング予算を算定する
    1. 広告費だけでなく、目標達成に必要な費用を積み上げる
    2. 広告予算を増やしてもCVは同じ割合では増えない
    3. 必要予算を財務上の制約と調整する
  4. 必要予算に届かず、前年踏襲予算で計画することになった
    1. 前年の成果は予算額だけで生まれたものではない
    2. 前年予算を最低限見直して年間行動計画を作る
  5. 限られた金と工数を新規・既存顧客へ配分する
    1. 新規顧客を単年度で増やせる範囲を確認する
    2. 短期売上には既存・休眠顧客の活性化も検討する
  6. 今期の成果と翌年度以降の投資を両立する
    1. 短期・中長期を固定比率で分けない
    2. 将来の施策を可能にするデジタル基盤へ投資する
  7. 期中に目標未達が見え、追加施策が必要になった
    1. 最初に確認する原資は金・人・残り時間
    2. 新規流入から購入後まで顧客接点全体を見る
    3. 既存サービス・既存広告を新手法より先に検討する
  8. 部門内で解決できず、経営へ追加投資の判断を求める
    1. 自社のボトムアップと競合からのトップダウンを合わせる
    2. 競合との投資効率の差を分析する
    3. 現状維持・内部効率化・追加投資を比較する
    4. 最低投資ラインと撤退基準を決める
  9. 実行結果を翌年度の事業目標へ戻す
  10. まとめ|事業目標から投資判断までを一つにつなげる

事業目標からデジタルマーケティング戦略を立てる全体像

デジタルマーケティング戦略は、次の順番で作ります。

事業目標とデジタルマーケティング戦略の間には、部門目標、必要予算、金と工数の配分、施策の優先順位、経営による投資判断があります。本記事では、それぞれを別々に考えず、一つの流れとして設計します。

事業目標を受け取る
 ↓
デジタルマーケティング目標へ変換する
 ↓
目標達成に必要な予算を算定する
 ↓
前年踏襲予算を見直す
 ↓
新規・既存顧客へ金と工数を配分する
 ↓
短期施策と中長期投資を設計する
 ↓
期中の目標未達に対して施策を選び直す
 ↓
経営へ追加投資の判断を求める
 ↓
実行結果を翌年度の事業目標へ戻す

実務では、すべてがこの順番どおりに進むとは限りません。期中の環境変化によって前の工程へ戻ることも、複数の判断を同時に進めることもあります。

それでも、施策から考え始めず、事業目標から投資判断までを一つにつなげることが重要です。

事業目標をデジタルマーケティング目標へ変換する

最初にあるのは、売上や利益などの事業目標です。

売上向上が目標なら、現在よりどれだけ売上を増やす必要があるのかを確認します。利益向上が目標なら、売上を維持しながらコストを下げるのか、利益率の高い商品や顧客を増やすのかを考えます。

事業目標が決まっていない、または部門へ明確に共有されていない場合は、広告やSEOの目標を先に決めるのではなく、経営や事業責任者と事業目標から確認します。

現在の事業構造で達成できる売上を試算する

売上は、基本的に次の式で考えられます。

売上=販売単価×顧客数

売上目標を達成するには、販売単価または顧客数のどちらか、あるいは両方を変える必要があります。

ただし、目標との差をすべてデジタルマーケティング部門へ割り振るわけではありません。最初に、現在の事業構造で各部門がどこまで売上を増やせるかを試算します。

  • 営業が増やせる顧客数
  • 既存顧客の継続購入や追加購入
  • 商品単価と商品構成
  • 新商品や高価格帯商品の投入
  • 生産・供給体制の上限
  • デジタルマーケティングが増やせるCV

営業だけで必要顧客数を増やせるなら、マーケティングへ大きな追加目標を置く必要はありません。しかし、多くの場合、現在の営業、商品、既存顧客、マーケティング活動を積み上げても、事業目標へ届かない差が残ります。

目標と現状予測の差をマーケティングの役割へ変える

事業目標と現状予測の差が分かったら、どの要素を変えれば差を埋められるかを考えます。

  • 新規顧客を増やす
  • 既存顧客の売上を増やす
  • 商品単価や商品構成を変える
  • 営業の顧客転化率を高める
  • 営業リソースを確保する
  • LPやフォームのCVRを高める
  • CV後の顧客育成を強化する

この中から、デジタルマーケティング部門が単独で担うものと、営業、商品、情報システムなどとの連携が必要なものを分けます。

デジタルマーケティング目標は、事業目標と無関係に設定するCVやUUではありません。売上目標との差を埋めるために、どの数値を、いつまでに、どこまで変えるかを示すものです。

事業目標から現状予測を作り、OKRとKPIへ落とす詳しい手順は、事業目標からマーケティング目標を設定する方法で解説しています。

マーケティングが担う目標が決まったら、次に、その目標を達成するための予算を算定します。

目標達成に必要なデジタルマーケティング予算を算定する

マーケティング予算を「売上の何%」という比率だけで決めると、事業目標との関係が分からなくなります。

同じ売上規模の会社でも、想起率、商品単価、利益率、顧客転化率、LTV、競合環境によって必要な投資額は異なります。

先に確認するのは、事業目標を達成するために必要な成果です。

必要な売上
 ↓
必要な顧客数
 ↓
必要なCV数
 ↓
必要な広告・SEO・サイト・人員等
 ↓
必要なマーケティング予算

広告費だけでなく、目標達成に必要な費用を積み上げる

マーケティング予算というと、最初に広告費を思い浮かべやすいでしょう。しかし、実際には次のような費用があります。

費用区分主な内容
広告費検索広告、SNS広告、動画広告、媒体出稿など
制作費Webサイト、LP、広告クリエイティブ、記事、動画など
調査・分析費顧客調査、競合調査、アクセス解析など
ツール費CRM、MA、アクセス解析、ヒートマップなど
人件費マーケティング担当者、インサイドセールスなど
外注費広告運用、SEO、制作、コンサルティングなど
販促費展示会、セミナー、資料、キャンペーンなど

必要顧客数とCV数を算出し、広告だけでどこまで増やせるかを確認します。足りない場合は、LP・フォーム、顧客育成、営業連携などの構造変更に必要な費用と工数を加えます。

広告予算を増やしてもCVは同じ割合では増えない

既存広告に実績があるなら、予算算定へ活用できます。ただし、現在のCPAをそのまま使って、予算を2倍にすればCVも2倍になると考えるのは危険です。

デジタル広告は、成果を獲得しやすい対象から配信されます。予算を増やすほど対象が広がり、追加分のCPAが悪化する可能性があります。

感覚的には、予算を2倍にしても、CVが良くて1.5倍程度ということは珍しくありません。広告増額だけで必要CVへ届かなければ、現在の構造を変える必要があります。

必要予算を財務上の制約と調整する

必要予算を算定した後に、会社が死守すべき利益率、資金繰り、株主還元などの財務条件と調整します。

先に財務上の上限だけを決め、その範囲へ施策を押し込むと、事業目標を達成できない計画になる可能性があります。反対に、必要予算が財務上の制約を超えるなら、その事実を明らかにしたうえで、事業目標、施策、資金調達、利益計画のどこを変えるか判断します。

顧客数とCVから必要予算を算定する詳しい方法は、中小企業のマーケティング予算の決め方で解説しています。

しかし、必要予算を計算できても、その金額がそのまま承認されるとは限りません。実際には、前年踏襲の予算で来期計画を作るよう求められることがあります。

必要予算に届かず、前年踏襲予算で計画することになった

必要予算と承認された予算に差があっても、部門長は与えられた条件で年間計画を作らなければなりません。

ここで前年予算をそのまま各施策へコピーすれば、計画作業は早く終わります。しかし、前年と同じ予算でも、同じ成果が出るとは限りません。

前年の成果は予算額だけで生まれたものではない

前年のCPAやCVは、広告費だけで作られたものではありません。

  • 広告運用の改善
  • LPやフォームの改修
  • クリエイティブの追加
  • 担当者の工数
  • 営業や外注先の協力
  • 競合の出稿状況
  • 媒体ロジックや市場環境

デジタルマーケティングでは、何もしなければパフォーマンスが悪化することがあります。新しい競合が現れ、既存競合も改善を続け、媒体や検索のロジックも変化するからです。

前年と同じ成果を求めるなら、前年に何を行ってその成果を出したのかを確認し、再現に必要な工数と条件を今期計画へ入れます。

前年予算を最低限見直して年間行動計画を作る

確認するのは、予算額だけではありません。

  • 予算額と実消化額
  • 売上
  • CPA
  • 計画達成率
  • 未消化になった理由
  • 継続に必要な人員と外注先
  • 停止した場合の再構築費用
  • 計測データの連続性

そのうえで、施策を継続、増額、減額、廃止、判断保留に分けます。判断できないものは無理に結論を出さず、期中の確認課題として残します。

前年予算を費用区分ごとに見直し、年間行動計画へ落とす方法は、前年踏襲のマーケティング予算を見直す方法で解説しています。

使用できる予算と年間の活動が見えたら、次に、限られた金と工数を新規顧客と既存・休眠顧客へ配分します。

限られた金と工数を新規・既存顧客へ配分する

新規顧客と既存顧客への配分を「新規8:既存2」などの固定比率で決めることはできません。

理由は、投入する資源の単位が異なるからです。

新規顧客の獲得は、広告、コンテンツ、イベントなど、主として金銭予算を使います。既存・休眠顧客への対策は、電話、メール、顧客データの整理、営業との調整など、主として社内工数を使います。

例えば、次のような配分になることがあります。

対象金銭予算必要工数
新規顧客獲得800万円100時間
既存・休眠顧客活性化200万円500時間

金額では新規8:既存2でも、工数ではおおむね新規2:既存8です。金銭予算だけを配分しても、既存顧客対策を実行する人がいなければ計画は動きません。

新規顧客を単年度で増やせる範囲を確認する

新規顧客に限定した指示を受けることは多くありません。通常はCVや売上の目標を受け、既存顧客だけでは達成できない場合に、新規顧客の必要数が見えてきます。

短期で新規顧客を獲得するなら、購買意欲の高い検索クエリへのリスティング、サイト訪問者へのリマーケティング、意欲の高い企業が集まるイベントなどが候補になります。

ただし、購買確度の高い検索クエリは母数が少なく、広告増額によってCPAが悪化することがあります。BtoBなど検討期間の長い商材は、獲得したリードが単年度の売上へ間に合わない可能性もあります。

短期売上には既存・休眠顧客の活性化も検討する

短期的に成果を得やすい対象として、既存顧客や休眠顧客があります。

ただし、既存顧客対策はメールを送れば終わりではありません。休眠・退会理由を集め、営業が持つ顧客情報を整理し、メール原稿、配信システム、計測、インサイドセールスの対応を準備する必要があります。

新規顧客への一定の施策を続けながら、利用できる工数の範囲で既存・休眠顧客の活性化を主軸にするほうが、現実的に売上を作りやすい場合があります。

金銭予算と社内工数を分けて配分する詳しい手順は、新規顧客と既存顧客へのマーケティング予算配分で解説しています。

顧客別の配分を決めても、まだ時間軸の判断が残ります。今期目標だけに資源を使うのか、翌年度以降の成果へ一部を投資するのかを決めなければなりません。

今期の成果と翌年度以降の投資を両立する

短期施策は単発で発生するものではなく、基本的には来年度の目標を達成するための手段です。

中長期投資は、その目標を達成できる見込みを確認したうえで、残ったリソースを使って将来の制約を解消したり、次の成長を準備したりする活動です。

ただし、状況によっては今期の目標が厳しくても、2年目以降の達成に必要な施策へ1年目から着手しなければなりません。

短期・中長期を固定比率で分けない

「短期7:中長期3」などの配分は、経営の意思として決まっている場合を除き、部門長が独自に決められるものではありません。

最初に、会社の中期経営計画と、マーケティング部門に割り振られた年度別目標を確認します。

中計と部門別目標があれば、各年度の目標から必要な施策と着手時期を逆算します。会社の中計はあるが部門別目標がない場合は、マーケティング部門としてどの程度の投資があればどこまで伸ばせるかを提案します。

中計がない場合も、中長期投資を善意だけで進めるのは危険です。経営のオーダーを満たしたうえで余力を作るか、経営と調整して投資の位置づけを決めます。

将来の施策を可能にするデジタル基盤へ投資する

中長期投資には、将来の売上を作る成長投資と、将来の施策を実行できる状態にする基盤投資があります。

デジタルマーケティング部門で優先して検討したいのが、獲得したCVと顧客・売上をつなぐ仕組みです。

CVの価値を売上で説明できなければ、マーケティングと経営の会話は抽象的になります。CV後の顧客転化、購買商品、平均購買単価を確認できれば、売上を生む顧客層や訴求を把握し、広告、メール、コンテンツを改善できます。

SEO、CRM、サイト基盤、販売管理システムなどは、準備、開発、リリース、効果発生、効果成長に時間がかかります。成果が必要な年度から逆算し、必要なら前年度から着手します。

中計の状態に応じた進め方と基盤投資の具体例は、短期施策と中長期投資のマーケティング予算配分で解説しています。

計画を作っても、すべてが計画どおりに進むとは限りません。期中に、このままでは目標へ届かないと分かることがあります。

期中に目標未達が見え、追加施策が必要になった

期中に目標未達の見込みが出れば、当初計画になかった施策を追加しなければならないことがあります。

このとき「SNS広告を始める」「新しいチャネルを試す」など、未実施の施策に目が向きやすくなります。しかし、新施策は準備、実行、データ蓄積、改善を経て成果が安定するまでに時間がかかります。

新しい手法を考える前に、使える原資と、現在の顧客接点に残っている改善余地を確認します。

最初に確認する原資は金・人・残り時間

年度計画を作った時点で、予算も人員も既存施策へ割り振っている会社が多いでしょう。

追加施策へ使える金と人を確認すると、ほとんど残っていない。財布の中身を確認したときのような切ない気持ちになることもあります。

それでも目標は変わりません。

金と人に加え、年度末までの残り時間を確認します。施策をリリースできても、成果が出る頃に年度が終わっているなら、今期目標の未達を埋める施策にはなりません。

新規流入から購入後まで顧客接点全体を見る

デジタルマーケティングの顧客接点は、新規流入の獲得だけではありません。

新規顧客・既存顧客・過去流入者
 ↓
広告・SEO・SNS・メール・リマーケティング
 ↓
LP・商品詳細ページ
 ↓
フォーム
 ↓
CV
 ↓
メール・営業フォロー
 ↓
購入・契約
 ↓
継続購入・アップセル・クロスセル

多くの顧客が必ず通る場所ほど、改善の影響を広く与えられます。

例えばWeb上でCVする顧客の多くはフォームを通ります。フォームの入力項目、エラー表示、スマートフォンの操作性、既存会員の入力負担、レコメンドなどを改善できれば、既存の流入をCVへ変えられる可能性があります。

その次に、商品詳細ページ、LP、CV後のメール、営業フォロー、リマーケティングなどを確認します。

既存サービス・既存広告を新手法より先に検討する

期中は残り時間が限られています。

新しい広告は、初期のデータが少なく、機械学習や運用改善に時間がかかります。新サービスも、準備、制作、販売体制の構築が必要です。

そのため、追加する施策は基本的に次の順番で考えます。

既存サービス・既存広告の改善
 >
新サービス・新広告

既存で打てる手を考え尽くしても目標へ届く道がなければ、新手法へ可能性を求めることもあります。ただし、目新しさではなく、残り期間内に成果を出せる可能性で判断します。

顧客接点ごとの改善候補と施策の選び方は、マーケティング施策の優先順位で解説しています。

自部門の効率化だけでは目標へ届かず、競合との差も広がるなら、次は経営へ追加投資の判断を求めます。

部門内で解決できず、経営へ追加投資の判断を求める

マーケティング部門長は、現状維持で進むか、競合との差が広がる前に追加投資を求めるかを、大なり小なり考えています。

ただし、「現在の広告は成果が出ているので、予算を増額してください」だけでは、部門予算の要求に見えます。

経営が判断できるように、自社の運用実績だけでなく、市場での自社の立ち位置、競合の投資状況、その差が生まれた理由を示します。

自社のボトムアップと競合からのトップダウンを合わせる

例えば、自社がデジタル広告へ月1,000万円を投じ、現在のCPAを大きく崩さず月1,200万円まで増額できるとします。

自社データを見る限り、月1,200万円への増額には合理性があります。

しかし、主要競合が月3,000万円規模の広告を継続しているなら、別の問いが生まれます。

なぜ競合は、自社なら赤字になる規模の広告投資を継続できるのか。

競合と同額を使うのではなく、競合がその投資を成立させられる構造を調べます。

競合との投資効率の差を分析する

最初に確認したいのは想起率です。必要になったときに候補として思い出してもらえる競合は、同じ広告へ接触してもらったときにも反応を得やすく、CPAを抑えられる可能性があります。

次に、LP、商品詳細ページ、フォームなどのUXを確認します。広告運用が同程度でも、広告を受け止めるサイトのCVRが違えば、投資効率は変わります。

その次に、商品単価、LTV、CVから顧客への転化率など、CV後の収益構造を確認します。

自社の平均購買単価が100万円、競合が300万円なら、他の条件が同程度でも、競合は自社より高いCPAを許容できる可能性があります。

想起率、UX、収益構造によって競合が多くの広告費を使えると、配信、CV、顧客データも多く蓄積されます。そのデータを広告運用や顧客分析へ使えば、改善速度の差まで広がります。

現状維持・内部効率化・追加投資を比較する

競合との差を分析したら、次の選択肢を経営へ示します。

選択肢判断内容
現状維持追加負担を避ける代わりに、競合との差が広がる可能性を受け入れる
内部効率化既存業務から改善活動へ回す人と時間を作る
一時的な追加投資構造改善を前倒しする推進剤を投入する
広告費の増額現在の構造でも採算が合う範囲でCVを増やす

追加投資を広告費へ上乗せするだけでなく、想起率、LP・フォーム、計測、顧客転化など、広告投資を拡大できない原因へ使う選択肢も提示します。

最低投資ラインと撤退基準を決める

投資案には、期待する成果だけでなく、次の条件が必要です。

  • 必要投資額
  • 売上・利益への影響
  • 投資回収期間
  • KPI
  • 実施しない場合の損失
  • 許容する最大損失
  • 判定時期
  • 最低投資ライン
  • 継続・修正・縮小・延期・撤退基準

撤退基準だけでなく、成果を狙うために下回ってはいけない最低投資ラインを決めます。

少額で実施できることと、少額で検証できることは同じではありません。必要な露出やデータ量を確保できない予算へ削られた施策は、結果が出ないだけでなく、企画の良し悪しを検証できない可能性があります。

自社・競合・連携部門の情報から投資案を作る詳しい手順は、マーケティング投資の判断基準で解説しています。

経営判断を受けて施策を実行したら、その結果を次年度の事業目標と予算へ戻します。

実行結果を翌年度の事業目標へ戻す

デジタルマーケティング戦略は、一度作って終わる計画ではありません。

期中は、目標と実績の差、市場・競合・社内体制の変化を確認し、予算の増額、減額、移動、施策の継続、修正、停止を判断します。

年度末には、CVやUUだけでなく、事業成果まで確認します。

  • CVから顧客へ転化した割合
  • 平均購買単価
  • 売上・利益への影響
  • 新規・既存顧客別の成果
  • 休眠・退会によって失った売上
  • 中長期投資によって実行可能になった施策
  • 競合との投資規模・投資効率の差

マーケティングで獲得したCVを売上へつなげて確認できれば、翌年度は「CVを何件増やすか」ではなく、「売上をいくら増やすために、どのCVを何件増やすか」を考えられます。

前年度の実績を翌年度の現状として、再び事業目標との差を確認します。

事業目標
 ↓
デジタルマーケティングの目標・予算・施策・投資判断
 ↓
実行
 ↓
顧客・売上・利益の分析
 ↓
翌年度の事業目標

翌年度の目標設定では、再び事業目標からマーケティング目標を設定する方法の工程へ戻ります。

まとめ|事業目標から投資判断までを一つにつなげる

デジタルマーケティング戦略は、広告、SEO、SNSなどの施策を並べることではありません。

最初に、売上や利益などの事業目標を、デジタルマーケティング部門が担う目標へ変換します。次に、必要顧客数とCVから、広告、制作、ツール、人員、外注等の必要予算を算定します。

必要予算がそのまま承認されるとは限りません。前年踏襲予算が下りた場合も、前年成果の再現条件を確認し、最低限の見直しから年間行動計画を作ります。

限られた金と工数を、新規顧客と既存・休眠顧客へ配分し、今期目標と翌年度以降の投資を両立させます。

期中に目標未達が見えれば、金・人・残り時間を確認し、新規流入から購入後までの顧客接点から、影響の大きい改善を選びます。

自部門の効率化だけでは解決できなければ、競合の投資規模と投資効率の差を分析し、現状維持、内部効率化、追加投資を経営へ提示します。必要投資額、最低投資ライン、KPI、最大損失、撤退基準まで決めて、経営判断を求めます。

実行結果は、CVやUUだけで終わらせず、顧客、売上、利益まで確認します。その結果を翌年度の事業目標へ戻すことで、デジタルマーケティング戦略は循環します。

事業目標、マーケティング目標、予算、顧客配分、時間軸、施策、投資判断を一つにつなげる。これが、デジタルマーケティングを個別施策ではなく、事業を推進する活動として経営するための基本です。


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