中国人観光客減少後のインバウンド動向|47都道府県と消費額を分析

中国人観光客が減少した2026年上半期のインバウンド動向を、観光庁・JNTOのデータから分析。中国以外の旅行者が減少を補った都道府県、訪日客数、旅行消費額、国別の1人当たり消費額を紹介します。 マーケティング事例・ニュース分析

中国人観光客が大きく減った2026年、日本のインバウンド市場も同じ規模で縮小したのでしょうか。

Skill Business Labでは、観光庁と日本政府観光局(JNTO)の公表データを基に、2025年と2026年の各1~6月を比較しました。中国人宿泊者の減少を中国以外の旅行者がどこまで補ったのか、47都道府県すべてを集計し、全国の訪日客数や旅行消費額と合わせて分析しています。

全国の訪日客数は前年同期を約2%下回りましたが、訪日外国人旅行消費額は1.3%増えました。ただし、宿泊需要を他国からの旅行者が補えたかどうかは、都道府県によって大きく異なります。

2026年上半期のインバウンド動向・調査結果

今回の集計から確認できた主な結果は、次のとおりです。

  • 中国人宿泊者の減少を中国以外の旅行者が完全に補ったのは20都道府県
  • 減少分の一部を補ったのは12都道府県
  • 中国以外の宿泊者も減り、補完できなかったのは7都道府県
  • 残る8県では、中国人宿泊者自体が前年同期より増加
  • 2026年上半期の訪日客数は前年同期比で約2%減少
  • 訪日外国人旅行消費額は前年同期比1.3%増の4兆8,469億円
  • 中国人旅行者の消費額は5,210億円減った一方、中国以外は5,833億円増加

中国人観光客の減少は全国共通でも、その影響は全国一律ではありません。また、人数の減少が、そのままインバウンド消費額の減少になったわけでもありませんでした。

2026年、中国人観光客はどれくらい減少したのか

JNTOの訪日外客統計によると、2026年1~6月の訪日外客数は約2,108万人でした。前年同期の約2,152万人から約43万人、率にして約2%の減少です。

全体の減少が約2%にとどまった一方、中国人旅行者は前年同期からほぼ半減しました。中国以外の国・地域からの旅行者が増え、中国の大幅な減少を相当程度吸収したためです。

中国人宿泊者の減少を他国は月ごとにどこまで補ったか

訪日客が日本のどの地域に滞在したかを見るため、観光庁「宿泊旅行統計調査」の外国人延べ宿泊者数を確認しました。

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中国人延べ宿泊者数は、6か月すべてで前年同月を下回りました。とくに1月は約210万人泊の減少です。

中国以外の宿泊者は、2月に約175万人泊増え、3月にも約90万人泊増えました。しかし、1月、4月、6月は中国の減少分を補えず、外国人宿泊者全体も前年割れとなっています。

上半期を合計すると、中国人宿泊者は約829万人泊減少しました。中国以外は約302万人泊増えましたが、全国では約527万人泊の減少です。全国の宿泊需要だけを見れば、他国の増加で中国の減少を完全には埋められていません。

中国人観光客の減少を他国が補完したのは20都道府県

全国合計では補完できていなくても、都道府県ごとに分けると状況は変わります。

今回の分析では、中国人延べ宿泊者数の前年差と、中国以外の外国人延べ宿泊者数の前年差を比較しました。中国以外には、統計上の国籍不詳を含みます。

  • 完全補完:中国人宿泊者の減少数以上に、中国以外の宿泊者が増えた
  • 一部補完:中国以外の宿泊者は増えたが、中国人宿泊者の減少数には届かなかった
  • 補完なし:中国人宿泊者と中国以外の宿泊者がともに減った
  • 中国人宿泊者も増加:中国人宿泊者自体が前年同期より増えた
中国人宿泊者減少の都道府県別補完状況。完全補完20、一部補完12、補完なし7、中国人宿泊者増加8

47都道府県のうち、20都道府県では、中国人宿泊者の減少数を上回る数の宿泊者が中国以外から増えていました。一部補完の12都道府県と合わせると、中国人宿泊者が減った39都道府県のうち32都道府県で、中国以外の宿泊者は増加しています。

一方、東京都、京都府、奈良県、徳島県、福岡県、熊本県、栃木県の7都府県では、中国以外の宿泊者数も減少しました。また、青森県、秋田県、福島県、茨城県、埼玉県、島根県、山口県、高知県の8県では、中国人宿泊者自体が増えています。

インバウンドの都道府県別動向|他国による補完状況を一覧化

以下は、2025年上半期と2026年上半期を比較した外国人延べ宿泊者数の前年差です。単位は万人泊で、四捨五入して表示しています。

中国人宿泊者の減少を完全に補完した20都道府県

都道府県中国人宿泊者中国以外合計
北海道-44.9+48.8+3.9
岩手県-0.5+1.4+0.9
宮城県-1.1+12.1+11.0
山形県-0.3+0.6+0.4
群馬県-0.1+0.5+0.3
新潟県-0.1+9.5+9.4
富山県-1.1+2.1+1.0
山梨県-14.4+20.5+6.1
長野県-2.3+3.5+1.2
三重県-1.1+1.3+0.1
滋賀県-0.7+1.6+0.9
鳥取県-0.2+3.4+3.2
広島県-0.4+8.1+7.6
香川県-4.4+5.3+1.0
愛媛県-0.1+7.4+7.2
長崎県-0.3+6.8+6.5
大分県-1.8+8.2+6.5
宮崎県-0.1+2.7+2.6
鹿児島県-2.3+9.2+6.9
沖縄県-13.2+39.7+26.5

北海道では、中国人宿泊者が約44.9万人泊減りましたが、中国以外が約48.8万人泊増えました。沖縄県では、中国の減少約13.2万人泊に対して、中国以外が約39.7万人泊増えています。

中国人宿泊者の減少を一部補完した12都道府県

都道府県中国人宿泊者中国以外合計
千葉県-27.9+4.8-23.1
神奈川県-19.5+0.8-18.7
石川県-5.4+5.1-0.3
福井県-0.2+0.1-0.0
岐阜県-15.0+8.1-6.9
静岡県-28.2+3.5-24.7
愛知県-51.9+5.1-46.8
大阪府-228.0+97.7-130.3
兵庫県-16.5+9.2-7.4
和歌山県-4.2+1.9-2.3
岡山県-1.9+1.8-0.1
佐賀県-1.0+0.6-0.4

大阪府では、中国以外の宿泊者が約97.7万人泊増えました。それでも、中国人宿泊者の約228.0万人泊減少を埋めるには至らず、外国人宿泊者全体では約130.3万人泊減少しました。

他国の増加で補完できなかった7都道府県

都道府県中国人宿泊者中国以外合計
栃木県-0.1-0.1-0.1
東京都-218.4-14.0-232.3
京都府-94.1-29.7-123.8
奈良県-4.3-0.4-4.7
徳島県-0.4-0.9-1.3
福岡県-19.9-3.3-23.2
熊本県-6.0-6.9-12.9

東京都と京都府では、中国人宿泊者だけでなく、中国以外の宿泊者も前年同期を下回りました。全国で他国からの訪日客が増えていても、その増加がすべての地域へ同じように届くわけではないことが分かります。

中国人宿泊者自体が増加した8県

都道府県中国人宿泊者中国以外合計
青森県+0.7+6.0+6.7
秋田県+0.1+1.1+1.2
福島県+0.1+6.9+7.1
茨城県+1.8+6.0+7.8
埼玉県+0.1+1.8+1.9
島根県+0.0+0.9+0.9
山口県+0.0+1.7+1.8
高知県+0.2+1.3+1.5

全国では中国人旅行者が大幅に減っているため、全都道府県で同じ現象が起きているように見えます。しかし、8県では中国人宿泊者も増加していました。全国値だけでは捉えられない動きです。

代表4県の月次推移から見るインバウンドの地域差

上半期の合計だけでは、増減がいつ起きたのか分かりません。そこで、完全補完から沖縄県、一部補完から静岡県、補完なしから東京都、中国人宿泊者も増加した地域から茨城県を選び、月次推移を比較しました。

沖縄県、静岡県、東京都、茨城県における外国人延べ宿泊者数の2026年1月から6月の前年差

沖縄県は、中国人宿泊者が減少する一方、中国以外の宿泊者が多くの月で増え、上半期合計を押し上げました。ただし6月は中国以外も減っており、毎月安定して補完していたわけではありません。

静岡県では中国以外がわずかに増えましたが、中国人宿泊者の減少が大きく、6か月すべてで外国人宿泊者全体が前年同月を下回りました。

東京都は2月を除いて外国人宿泊者全体が減少しています。4月以降は中国以外も前年割れとなり、中国人観光客減少の影響を他国で吸収できていません。

茨城県では、中国人宿泊者と中国以外の宿泊者がともに6か月連続で増えました。同じ2026年上半期でも、地域によって異なる動きが起きています。

訪日客数が減っても旅行消費額は1.3%増加

宿泊者数が減れば、経済的な影響も同じように減るとは限りません。観光庁「インバウンド消費動向調査」によると、2026年上半期の訪日外国人旅行消費額は4兆8,469億円でした。前年同期を623億円、率にして1.3%上回っています。

期間2025年消費額2026年消費額前年比2025年1人当たり2026年1人当たり単価前年比
1~3月2兆2,803億円2兆3,373億円+2.5%約22.3万円約22.1万円-0.7%
4~6月2兆5,043億円2兆5,096億円+0.2%約23.7万円約24.4万円+3.3%
上半期合計4兆7,846億円4兆8,469億円+1.3%約23.0万円約23.3万円+1.2%

1人当たり旅行支出は、1~3月に前年同期を0.7%下回ったものの、4~6月には3.3%増えました。上半期を旅行者数で加重して試算すると、約23.0万円から約23.3万円へ、約1.2%増加しています。

中国の5,210億円減を中国以外の5,833億円増が上回った

旅行消費額を中国と中国以外に分けると、市場全体が維持された理由が分かります。

国・地域2025年上半期2026年上半期消費額の増減2025年1人当たり2026年1人当たり単価の増減
中国1兆542億円5,332億円-5,210億円(-49.4%)約25.1万円約26.4万円+5.2%
中国以外3兆7,304億円4兆3,137億円+5,833億円(+15.6%)約22.5万円約22.9万円+2.1%
全体4兆7,846億円4兆8,469億円+623億円(+1.3%)約23.0万円約23.3万円+1.2%

中国人旅行者の消費額はほぼ半減しました。しかし、中国以外の旅行者による消費額の増加が、その減少額を623億円上回りました。

2025年と2026年上半期の訪日外国人旅行消費額を比較。中国は5,210億円減、中国以外は5,833億円増え、全体では623億円増加した。

中国人観光客が減った穴は、同じ人数を別の国から集めなければ埋まらないわけではありません。訪日客数に加えて、1人当たり旅行支出が市場全体の消費額を左右します。

訪日外国人1人当たり旅行支出を国籍・地域別に比較

2026年上半期の中国人旅行者の1人当たり旅行支出は、約26.4万円でした。中国以外の約22.9万円、全体平均の約23.3万円を上回っています。

1人当たり旅行支出が高い国・地域ベスト10

順位国籍・地域1人当たり旅行支出
1英国約43.1万円
2メキシコ約42.5万円
3オーストラリア約41.5万円
4フランス約41.3万円
5ドイツ約40.2万円
6ロシア約38.9万円
7スペイン約36.8万円
8米国約35.5万円
9カナダ約35.1万円
10イタリア約34.3万円
参考中国約26.4万円
参考全体平均約23.3万円

上位には欧米・豪州の国が多く並びます。購買意欲だけではなく、日本までの距離が長く、滞在日数も長くなりやすいため、宿泊費、飲食費、交通費などが積み上がることも影響しています。

一方、1人当たり旅行支出が高い国と、旅行消費総額が大きい国は一致しません。英国は1人当たり約43.1万円ですが、上半期の一般客は約28万人です。中国は1人当たり約26.4万円でも約202万人いるため、消費総額では中国のほうが大きくなります。

地域への経済的な影響を見るには、旅行者数と1人当たり旅行支出の両方が必要です。

中国人観光客の減少から見えた2026年インバウンド市場の変化

2026年上半期は、中国人観光客が大幅に減少しました。それでも、中国以外からの旅行者が増えたことで、訪日客全体の減少は約2%にとどまり、旅行消費額は1.3%増加しました。

全国市場だけを見れば、中国以外の成長によって消費規模が維持されたと評価できます。

しかし、宿泊需要を都道府県別に見ると、完全補完、一部補完、補完なし、中国人宿泊者も増加という4つの動きに分かれました。全国の旅行消費額が増えても、その効果がすべての地域へ均等に届くわけではありません。

今後のインバウンド市場を見る際には、訪日客数の合計だけでなく、次の違いを確認する必要があります。

  • どの国・地域からの旅行者が増減したか
  • どの都道府県に宿泊したか
  • 一時的な増加か、複数月続く変化か
  • 1人当たりの旅行支出はいくらか
  • 人数と消費単価を掛けた旅行消費総額がどう変わったか

中国人観光客の減少は、日本のインバウンド市場を一律に縮小させたのではありません。中国以外の旅行者が全国市場を支える一方、地域ごとには明暗が分かれる構造変化を生んでいます。

調査概要と集計方法

項目内容
集計主体Skill Business Lab
対象期間2025年1~6月、2026年1~6月
宿泊データ観光庁「宿泊旅行統計調査」
訪日客数日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」
消費データ観光庁「インバウンド消費動向調査」
集計単位全国および47都道府県
補完の判定中国人延べ宿泊者数の減少数と、中国以外の外国人延べ宿泊者数の増加数を比較
集計日2026年9月

宿泊旅行統計調査は、2026年1月から宿泊施設を区分する基準が「従業者数」から「客室数」へ変更されています。本記事では、前年の従業者数10人以上の施設と、2026年の客室数20室以上の施設を近い調査範囲として比較しました。完全に同じ施設群ではないため、都道府県別の数値は厳密な確定値ではなく、大きな傾向を把握するための概算としてご覧ください。

また、延べ宿泊者数は、1人が3泊した場合に3人泊として計上されます。訪日外客数とは異なる指標です。2026年の宿泊者数には第2次速報値、2026年4~6月期の旅行消費額には1次速報値を使用しています。

1人当たり旅行支出は、クルーズ客を除く一般客を対象とした観光庁公表値を基礎としています。上半期の金額は、各四半期の数値を一般客数で加重して算出した概算です。

参考資料

中国人観光客の減少を全国値だけで判断せず、47都道府県の宿泊動向と国籍・地域別の旅行消費額まで接続して分析しました。本記事の図表を引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名、サイト名、記事URLをご記載ください。

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