マーケティング施策の優先順位|増やす前の判断基準

広告・SEO・SNSを全部行うべきか。マーケティング施策を増やす前に、金・人・残り時間を確認し、顧客接点のどこを改善すべきか判断する手順を解説します。既存サービス・既存広告を優先する理由も整理します。 事業目標・マーケティング戦略

「このままでは事業目標へ届かない。広告、SEO、SNSなど、何か新しい施策を増やそう」

期中に目標未達の見込みが出れば、当初の計画になかった施策を追加しなければならないことがあります。施策が増えること自体は避けられません。

問題は、何を、どの順番で増やすかです。

新しい広告やチャネルには目新しさがあります。しかし、準備、実行、データの蓄積、改善を経て成果が安定するまでには時間がかかります。残り期間が限られた状況で、金と人を広く分散させれば、どの施策も目標達成に必要な水準へ届かないかもしれません。

施策を追加するときは、広告、SEO、SNSといった施策名から選ぶのではなく、売上を作る構造のどこを変えると影響が大きいかを確認します。そのうえで、既存サービスと既存広告でできる改善を、新サービスや新広告より先に検討します。

本記事では、マーケティング施策を増やす前に確認したい原資、顧客接点、優先順位の決め方を解説します。

マーケティング施策を増やす前に「金・人・残り時間」を確認する

最初に確認するのは、追加施策へ使える金、人、残り時間です。

年度計画を作った段階で、予算も人員も既存施策へ割り振っている会社が多いでしょう。期中に新しい施策を加えるには、追加予算を確保するか、現在行っている仕事から人を移す必要があります。

実際に財布を確認すると、お金も人も残っていない。日常生活で財布の中身を見たときのような、切ない気持ちになることもあります。

それでも目標は変わりません。だからこそ、限られた原資を広く薄く配るのではなく、最も売上への影響が大きい場所へ集中させる必要があります。

さらに、金と人だけでなく、年度末までの残り時間を確認します。

施策には、準備、開発、配信開始、データ蓄積、改善、効果成長の期間があります。施策を実行できても、成果が出る頃には年度が終わっているのであれば、今期の目標未達を埋める施策にはなりません。

短期施策と翌年度以降への投資の分け方は、短期施策と中長期投資のマーケティング予算配分で詳しく解説しています。

施策名を並べる前に、売上構造のどこを変えるか決める

デジタルマーケティングの成果は、商材によって違いはあるものの、簡単にすると次の式で捉えられます。

UU×CVR=CV≒売上または未来の原資

ECなどではCVが購入となり、そのまま売上につながる場合があります。BtoBの問い合わせや資料請求では、CVが営業活動を経て将来の売上を作る原資になります。

事業目標へ届かないときは、まず現行構造のままで、販売単価と顧客数をどこまで増やせるかを確認します。次に、マーケティングが追加できるCV、CVから顧客への転化率、営業が追加で対応できる顧客数を試算します。

多くの場合、この試算を行うと、既存施策をそのまま増やすだけでは目標へ届かないことが分かります。

そこで必要になるのが、施策数を増やす前に、現在の構造のどこを変えれば最も大きく数値が動くかを考えることです。

事業目標から必要顧客数やCVを逆算する方法は、事業目標からマーケティング目標を設定する方法を参照してください。必要なマーケティング予算の積み上げ方は、中小企業のマーケティング予算の決め方で説明しています。

新しい集客施策の前に、クライアントとの接点全体を見る

新規顧客を獲得する施策を考えることは必要です。しかし、新しい流入を増やすことだけが売上を作る方法ではありません。

顧客との接点を並べると、新規広告や新チャネルへ進む前に検討できる場所が数多くあります。

新しい集客施策を増やす前に確認する顧客接点と検討施策の全体像

新規の見込み客は、広告、SEO、SNSなどから初めてサイトへ流入します。一方、既存顧客や過去流入者は、メールやリマーケティング広告などによってサイトへ再訪します。

二つの流入は、LP、商品詳細ページ、フォームという同じ導線へ合流します。CV後も、メールや営業によるフォロー、購入・契約、継続購入、アップセル、クロスセルへ接点が続きます。購入した顧客は、次のメール、広告、サイト再訪の対象にもなります。

この全体像から、売上を増やすための候補を探します。

  • 新規流入を増やす
  • 過去流入者をサイトへ戻す
  • 既存顧客へ再提案する
  • LPから商品詳細ページへの遷移を改善する
  • 商品詳細ページからフォームへの遷移を改善する
  • フォーム途中の離脱を減らす
  • CV後の見込み客への連絡を改善する
  • 営業の対応速度や優先順位を見直す
  • 継続購入、アップセル、クロスセルを増やす

新しいチャネルは、このうちの一つです。顧客接点全体を見れば、新規流入以外にも改善余地が残っている可能性があります。

追加施策は、売上に近い後工程から検討する

当サイトでは、原則としてCVや売上に近い後工程から改善余地を確認します。

LP
↓
商品詳細ページ
↓
フォーム
↓
INPUT
↓
Confirm
↓
Thanks
↓
CV

広告、SEO、SNSなどでトラフィックを増やしても、それぞれが増やせるのはUU全体の一部です。一方、Webサイト上でCVするユーザーは、新規流入か再訪かを問わず、原則としてフォームを通ります。

フォームのCVRを改善できれば、複数チャネルから得ているUU全体へ効果が及びます。新しい集客施策を一つ増やすより、すでに獲得している流入を受け止める共通地点を改善したほうが、少ない追加リソースでCVを増やせることがあります。

ただし、常にフォームが最優先とは限りません。LPの訴求が商品と合っておらず、商品詳細ページへの遷移率が著しく低い場合は、前工程から改善する必要があります。

重要なのは「昨年もフォームを改善したから、今年は確認しない」と決めることではありません。現在の数値を確認し、最も影響度が高い接点を毎回判断することです。

フォームは項目数だけでなく、購入体験全体を確認する

フォーム改善というと、入力項目を減らすことだけが注目されがちです。しかし、実際に確認する範囲はもっと広くなります。

確認領域主な確認項目
ファネル数値商品詳細ページからフォームへの遷移率、INPUTからConfirm、ConfirmからThanksへの到達率
入力負担項目数、必須項目、離脱が多い項目、会員・2回目利用者の再入力
エラー入力エラーの発生、アラートの位置・文言・表示方法、修正のしやすさ
UI・操作性文字サイズ、スマートフォン対応、表示速度、ボタンの位置
入力支援住所等の自動入力、入力形式の補助、JavaScript等によるアシスト機能
心理的抵抗個人情報を求める理由が伝わるか、不要な情報まで求めていないか
売上拡大INPUT・Confirm・Thanksでのレコメンド、アップセル、クロスセル
システム制約販売管理、会員情報、個人情報、計測ツール等との連携

フォームはCVRを上げるだけの場所でもありません。INPUT、Confirm、Thanksで関連商品を提案できれば、購入点数や販売単価へ影響する可能性があります。

一方、フォームは販売管理データ、分析ツール、会員情報、個人情報などと接続しているため、社内で最も改修しにくい場所の一つでもあります。影響度が高くても、必要な開発工数やシステムリスクを確認せずに変更することはできません。

CV後の見込み客と既存顧客も改善対象にする

マーケティング活動をCVで終わらせると、すでに獲得した見込み客を十分に売上へ変えられません。

商材の購買検討期間に合わせて、CVの1日後、1週間後、1か月後などにメールを送り、継続的に接点を作ります。閲覧した商品や関心に応じて内容を変え、レコメンドのロジックも調整します。

営業へ渡した後も、初回対応までの時間、商談化率、保留顧客への再接触、失注理由などを確認します。マーケティングでCVを増やしても、営業への引き渡しやその後のフォローに問題があれば、売上は増えません。

既存顧客や過去流入者への再接触も検討対象です。商品詳細ページを閲覧した人、フォームへ到達した人などのオーディエンスを利用できれば、リマーケティング広告で再訪を促せます。Google広告でも、過去にWebサイトを訪れた人を含むオーディエンスセグメントを作成し、再接触する仕組みが提供されています。詳しい設定や最新の名称は、Google広告ヘルプを確認してください。

ただし、リマーケティング広告を行うには、配信対象となるUUが必要です。対象者が少なければ、施策として成立しない場合があります。プライバシー、同意取得、各媒体の利用条件への対応も欠かせません。

新規顧客と既存顧客へ投じる金と工数の違いは、新規顧客と既存顧客のマーケティング予算配分で解説しています。

既存サービス・既存広告を、新サービス・新広告より優先する

期中に施策を追加するときの基本的な優先順位は、次のとおりです。

既存サービス・既存広告 > 新サービス・新広告

既存サービスや既存広告には、すでに一定の資産があります。

  • 過去のUU、CV、CPA
  • 既存の顧客やオーディエンス
  • 商品詳細ページやフォーム
  • 広告アカウントの配信実績
  • 担当者の運用経験
  • 営業や顧客から得た情報

これらを利用すれば、どの部分を変えると、どの程度の影響がありそうかを考えられます。

新サービスや新広告では、ターゲット、訴求、クリエイティブ、配信方法、自社商材との相性を一から検証しなければなりません。デジタル広告では機械学習による最適化も行われるため、開始直後から既存広告と同じパフォーマンスを期待できるとは限りません。

Google広告でも、新しい自動入札戦略の作成や設定変更後には学習状態となり、目標へ適応する時間が必要になると説明しています。期間はコンバージョン数やコンバージョンサイクルなどに左右されます。Google広告の学習期間に関する説明も、期中に新しい広告を始める際の参考になります。

目標未達を新しいSNS広告へ託す前に考える

これまでSNS広告を実施していなかった会社が、「このままでは目標へ届かないから、SNS広告を始めよう」と判断することがあります。

SNS広告自体が悪いわけではありません。しかし、新しい媒体では、ターゲット、クリエイティブ、配信方法、CV後の顧客転化まで検証が必要です。「新しい顧客へ届きそう」という期待だけでは、年度内に必要な売上を作れる根拠になりません。

期中の目標未達を埋める施策には、目新しさより、成果が出るまでの速さと再現性が必要です。

新しいチャネルを試すなら、本来は検証に必要な金、人、時間を計画へ入れ、失敗しても事業目標全体へ大きな影響が出ない状態で始めるべきです。

既存で打てる手がなければ、新手法へ賭けることもある

新サービスや新広告を完全に除外するわけではありません。

既存サービス、既存広告、既存顧客、過去流入者、獲得済みCVで打てる手を考え尽くしても、目標へ届く道が見つからないことがあります。

何もしなければ目標未達がほぼ確定するのであれば、不確実でも新手法へ可能性を求めることがあります。成果が出る保証はなくても、可能性はゼロではありません。

ただし、新手法は目新しさを期待した第一候補ではなく、既存の選択肢を使い切った後の判断です。

追加するマーケティング施策を比較する判断表

候補となる施策を洗い出したら、次の項目を同じ条件で比較します。

判断項目確認する内容
売上への影響どの数値を、どの程度変えられるか
影響する母数対象となるUU、CV、顧客はどれだけいるか
必要な金広告費、開発費、制作費、ツール費、外注費
必要な人マーケティング、開発、営業等の工数
残り時間いつ開始でき、年度内に何か月間寄与できるか
再現性過去実績や既存データを判断に使えるか
実現可能性システムや他部門との制約を超えられるか
顧客への影響UXや信頼を損なう可能性がないか
失敗時の損失中止や原状回復が可能か

点数を付けること自体が目的ではありません。根拠の乏しい施策へ高い点数を付けても、正しい判断にはなりません。

どの顧客接点へ影響するのか、対象となる母数はいくつか、必要な金と人はいくらか、残り期間内に成果が出るかを並べます。その事実と仮説を基に、最も現実的な施策を選びます。

マーケティング施策を増やすときの判断手順

最後に、判断の流れを整理します。

  1. 追加で使える金、人、残り時間を確認する
  2. 現行構造のまま目標へ届くかを試算する
  3. 売上構造のどこが目標達成を妨げているか特定する
  4. 新規流入から購入後まで、顧客接点全体を確認する
  5. CVと売上に近い後工程から改善候補を探す
  6. 既存サービス、既存広告、既存顧客で対応できるか確認する
  7. 候補を影響度、原資、年度内の実現可能性で比較する
  8. 既存の手で足りなければ、新サービスや新広告を検討する
  9. 実施後の数値を確認し、継続、修正、停止を判断する

この手順を踏めば、広告、SEO、SNSを全部行うかどうかを、施策名の印象だけで決めずに済みます。

まとめ

事業目標へ届かないとき、計画外のマーケティング施策を追加しなければならないことがあります。

最初に確認する原資は、金、人、残り時間です。その範囲で、売上を作る構造のどこを変えると影響が大きいかを考えます。

新規流入を増やすことは、選択肢の一つにすぎません。LP、商品詳細ページ、フォーム、CV後のフォロー、既存顧客への再提案、継続購入、アップセル、クロスセルなど、現在の顧客接点にも改善候補があります。

期中に成果を求めるなら、既存サービスと既存広告を、新サービスや新広告より先に検討します。既存の選択肢を考え尽くしても目標へ届く道がなければ、その時点で新手法へ可能性を求めます。

施策を増やすときに必要なのは、流行している手法を並べることではありません。顧客接点全体を見渡し、金、人、残り時間の範囲で、年度内の売上へ最も大きく影響する場所を選ぶことです。


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