「来期のマーケティング予算は、ひとまず前年踏襲で進めてください」
この方針を受け取ったマーケティング部門のマネージャーには、大きく2つの反応があると思います。
- 前年と同じ予算を守りながら、少しでも無駄を減らして事業に貢献したい
- 前年と同じ予算では事業目標に届かないと感じ、もどかしさを抱えている
どちらの場合でも、前年の予算額をそのまま今期の予算表へ転記するだけでは不十分です。前年と同じ金額があっても、前年と同じ成果が出るとは限らないからです。
前年の成果は、予算だけで生まれたものではありません。担当者が行った改善、他部門の協力、外注先の働き、市場環境などが組み合わさって生まれています。また、競合や媒体の仕組みが変われば、何もしないだけでパフォーマンスが下がることもあります。
前年踏襲の方針を受け取ったときに必要なのは、方針を否定することではありません。まず前年予算を最低限見直し、前年成果を再現できる条件が今期にもあるかを確認したうえで、年間行動計画を作ることです。
その後、今期の予算を遂行しながら少しずつ分析の解像度を上げれば、来期は「前年と同額」ではなく、事業成果との関係を根拠に予算を提案できるようになります。
前年と同じ予算でも同じ成果が出るとは限らない
前年踏襲という言葉からは、「前年と同じ金額を確保できれば、少なくとも前年と同程度の成果は見込める」という印象を受けます。
しかし、実際には次のような関係です。
前年の成果
=予算
+担当者が行った改善
+投入した工数
+他部門や外注先の協力
+前年の市場・競合・媒体環境
予算表に残るのは、主に使った金額です。ところが、その金額を使って成果を出すまでに何をしたのかは、予算表だけでは分かりません。
前年の成果は予算額だけで生まれたものではない
たとえば、前年の広告費が1,000万円で100件のCVを獲得していたとします。
予算表だけを見れば、今期も1,000万円あれば100件前後のCVを期待できそうです。しかし、前年には次のような活動が行われていたかもしれません。
- 広告文やクリエイティブを定期的に改善した
- 除外キーワードや配信対象を細かく調整した
- LPや入力フォームを改修した
- 営業部門から商談後の反応を聞いて配信条件を変えた
- 経験のある担当者や外注先が継続的に運用した
これらの活動が今期の計画から抜けていれば、同じ広告費を確保しても、前年と同じ結果を再現できるとは限りません。
何もしなければパフォーマンスが低下する可能性がある
デジタルマーケティングでは、現状維持のつもりで何もしないことが、実質的な後退になる場合があります。
- 新しい競合が広告や検索結果へ参入する
- 既存の競合がサイト、広告、コンテンツを改善する
- 媒体の配信ロジックや仕様が変わる
- 顧客の情報収集方法や比較基準が変わる
- 過去に作ったクリエイティブやコンテンツの反応が落ちる
もちろん、すべての施策が毎年必ず悪化するわけではありません。ただし、「前年と同じことを、前年と同じ金額で行えば、前年と同じ成果が出る」という前提には注意が必要です。
確認すべきなのは前年成果の再現条件
前年踏襲予算を見直す目的は、予算を削ることでも、すべてをゼロから作り直すことでもありません。
確認するのは、次の3点です。
- 前年は、何にいくら使ったのか
- その予算と活動から、どのような成果が出たのか
- 同じ成果を出すための条件が、今期にも残っているか
この3点が分かれば、前年予算を継続する部分と、変更しなければならない部分を分けられます。
前年度の予算・実績・達成状況を確認する
最初に行うのは、前年度の数字の確認です。ここは一般的な予算見直しと同じで、特別に複雑な分析は必要ありません。
前年度予算と実消化額を確認する
少なくとも、費用区分や主要施策ごとに次の数字を並べます。
- 前年度予算
- 実消化額
- 予算消化率
- 売上や利益への貢献
- CV数、CPAなどの主要指標
- 計画達成率
予算額だけでなく、実際にいくら使ったかを分けるのが重要です。前年予算が1,000万円でも、実消化額が700万円なら、今期に1,000万円を置く根拠は「前年予算」だけでは説明できません。
売上・CPA・計画達成率を一緒に確認する
マーケティング部門では、CV、UU、CPAなどを成果指標として使います。運用上必要な指標ですが、前年予算の評価をそれだけで終えると、事業への貢献が見えません。
確認できる範囲で、次の順番を追います。
マーケティング活動
↓
CV・問い合わせ
↓
有効な見込み顧客
↓
商談・受注
↓
売上・利益
この段階で完全なデータ連携を完成させる必要はありません。まずは、前年のマーケティング活動が最終的にどの程度の売上や利益へつながったのか、把握できている範囲と把握できていない範囲を分けます。
事業目標から必要なマーケティング予算を積み上げる考え方は、マーケティング予算の決め方で詳しく説明しています。本記事では、すでに前年踏襲の方針を受け取った場合の見直しに絞ります。
未消化予算を「不要だった」と判断しない
予算が余ったという結果だけでは、その予算が不要だったのかは判断できません。
未消化になる理由には、次のようなものがあります。
- 期中の利益確保を優先し、予算が削減または回収された
- CPAの悪化を避けるため、広告費の追加投入を止めた
- 制作や社内承認が遅れ、施策を開始できなかった
- 担当者不足により、予定した活動を実行できなかった
- 外注先や媒体の都合で実施時期がずれた
- 効率化によって、予定より少ない費用で成果を出せた
最後の理由なら、減額を検討できるかもしれません。一方、利益確保のために予算が回収された場合や、必要な施策を実行できなかった場合は、「不要だった」のではありません。
前任者や担当者に確認できるなら、数字から理由を推測するより、まず事実を聞くほうが確実です。
前年に何を行って成果を出したのか確認する
数字を確認したら、次に前年の活動内容を確認します。ここで見るのは施策名の一覧だけではありません。成果を維持するために、誰がどのような改善を続けていたかまで確認します。
改善活動と担当者の工数を確認する
広告費、ツール費、制作費などは予算表に載りますが、社内担当者の改善工数は見えにくいものです。
前年に4人で行っていた活動を、「今年は効率化して3人で」と変更する場合、1人分の人件費が減るだけではありません。残る3人が前年と同じ改善を継続できるか、行わない活動によって何が低下するかを確認する必要があります。
確認したいのは、たとえば次の項目です。
- 定例的に行っていた分析や改善
- 制作物の更新頻度
- 社内調整や営業支援に使っていた時間
- 担当者固有の経験や取引先との関係
- 属人化していた作業
- 突発対応に必要だった余力
予算額が同じでも、活動量や改善力が落ちれば、成果の再現性も下がります。
他部門や外注先の協力を確認する
マーケティングの成果には、営業、商品、制作、情報システム、外注先などが関わっています。
たとえば、マーケティング部門がCVを獲得しても、営業への連携が遅れれば顧客転化率は下がります。反対に、前年は営業担当者が素早く対応していたため、マーケティング施策の数値以上に売上へつながっていた可能性もあります。
今期の人員配置や優先順位が変わるなら、その影響も年間計画へ入れます。ただし、この時点で大規模な組織変更やシステム導入まで計画する必要はありません。まずは、前年成果がどの部門や担当者に支えられていたかを明らかにします。
市場・競合・媒体環境の変化を確認する
自社の予算や体制が同じでも、外部環境は変わります。
- 競合の出稿増加による広告単価の上昇
- 新規参入による比較対象の増加
- 検索順位や自然検索流入の変化
- 媒体の仕様やターゲティング条件の変更
- 市場規模や需要期の変化
- 商品価格、提供条件、顧客層の変化
精密な市場予測を作る必要はありません。前年と今期で明らかに違う条件を洗い出し、「前年実績をそのまま今期へ当てはめてよいか」を確認します。
前年予算を継続・増額・減額・廃止・判断保留に分ける
前年の数字、活動、再現条件を確認したら、各費用を5つに分けます。
| 判断 | 主な考え方 |
|---|---|
| 継続 | 今期も目的があり、成果を再現する条件も残っている |
| 増額 | 事業目標への貢献が確認でき、追加投資の余地がある |
| 減額 | 目的は残るが、効率化や対象縮小が可能 |
| 廃止 | 目的がなくなった、または代替手段へ移行できる |
| 判断保留 | 情報が不足し、現時点では増減を決められない |
判断保留は、見直しの失敗ではありません。分からないものを分かったことにせず、今期中に何を確認すれば判断できるかを決めるための区分です。
停止後の回復コストも確認する
単年度の成果だけを見れば、減額や廃止に見える費用もあります。しかし、止めた後に元の状態へ戻すまで、時間や再構築費用がかかるものがあります。
特に注意したいのは、次のような活動です。
- SEOやコンテンツの継続的な更新
- 認知形成や顧客との継続的な接点
- 顧客データの蓄積
- アクセス解析や広告計測
- 社内に蓄積してきた運用ノウハウ
計測ツールを停止したり、別のツールへ変更したりすると、データの連続性が途切れることもあります。再開後すぐに以前と同じ条件で数字を取得できるとは限らず、変更前後のデータを単純比較できなくなる可能性もあります。
継続するかどうかは最終的に経営判断ですが、停止する場合には、想定される回復期間、再構築費用、失われるデータを判断材料として示すべきです。
最低限の見直しから今期の年間行動計画を作る
前年踏襲予算の方針が出る時期には、予算を根本から作り直す時間が残っていないこともあります。その場合でも、最低限の見直しから年間行動計画を作ることはできます。
費用区分ごとに目的・活動・時期・担当者を整理する
予算表を年間行動計画へ変えるため、各費用について次の項目を整理します。
- 何のために使うのか
- 今期に何を行うのか
- いつ実施するのか
- 誰が担当するのか
- 何を成果として確認するのか
- 現時点で判断できないことは何か
「広告費1,000万円」だけでは行動計画になりません。広告をいつ、どの商品へ、どの体制で使い、何を確認するのかまで決めて、初めて今期に実行できる計画になります。
今期も続ける活動と行わない活動を決める
前年に実施した活動のうち、今期も続けるものと、行わないものを明確にします。
行わない活動がある場合は、その分の成果が下がる可能性も記録します。逆に、改善や自動化によって不要になった作業であれば、削減できる工数を確認します。
こうして捻出した時間は、単なる余力として消化するのではなく、前年にはできなかった分析や改善に使います。
判断できない項目を期中の確認課題として残す
予算策定時点ですべてを確定させようとすると、根拠の薄い数字を置くことになります。
たとえば、「この施策から獲得したCVが、どの程度受注へつながったか分からない」のであれば、予算策定時点で無理に結論を出すのではなく、今期前半の確認課題にします。
確認する内容、担当者、期限を決めておけば、判断保留は放置ではなく、次の判断へ進むための計画になります。
前年踏襲予算を見直して年間行動計画を作る例
ここでは、前年踏襲で3,000万円のマーケティング予算を受け取ったケースを例にします。金額や判断は説明用の仮定であり、業種や事業規模によって変わります。
前年度予算を7つの費用区分で見直す
記事「マーケティング予算の決め方」と同じ7つの費用区分で整理します。
| 費用区分 | 前年度予算 | 実消化額 | 前年の活動・成果 | 今期の変更条件 | 今期判断 |
|---|---|---|---|---|---|
| 広告費 | 1,200万円 | 1,100万円 | CVは計画達成、期末にCPAが悪化 | 競合出稿が増加 | 継続、期中に配分確認 |
| 制作費 | 400万円 | 380万円 | LP2本と広告素材を制作 | 主力LPの更新が必要 | 継続 |
| 調査・分析費 | 150万円 | 80万円 | 顧客調査の一部を未実施 | 担当者不足は解消していない | 判断保留 |
| ツール費 | 240万円 | 240万円 | 計測と顧客管理に利用 | 契約更新時に値上げ | 継続、代替時のデータ断絶を確認 |
| 人件費 | 600万円 | 600万円 | 運用・制作・営業連携を担当 | 1人が別業務を兼務 | 工数不足を反映して計画修正 |
| 外注費 | 260万円 | 250万円 | 広告運用と記事制作を委託 | 一部を内製化予定 | 一部減額 |
| 販促費 | 150万円 | 70万円 | 展示会1回を中止 | 今期の出展方針が未決定 | 判断保留 |
| 合計 | 3,000万円 | 2,720万円 |
この表から分かるのは、未消化額が280万円あることだけではありません。
調査・分析費と販促費が余った理由、広告費の効率が期末に悪化した理由、人件費は同額でも実際に使える工数が減ることなど、今期の成果を左右する条件が見えてきます。
見直した内容を今期の行動計画へ落とす
次に、予算額を具体的な行動へ変えます。
| 費用区分 | 今期に行う活動 | 実施時期 | 担当者 | 確認する成果 | 期中の確認課題 |
|---|---|---|---|---|---|
| 広告費 | 既存広告を継続し、月次で配信条件を見直す | 通年 | 広告担当・外注先 | CV、CPA、有効リード | 増額時のCPA悪化幅 |
| 制作費 | 主力LPと入力フォームを改修する | 第1四半期 | Web担当 | CV率、離脱率 | 改修前後の比較条件 |
| 調査・分析費 | 既存顧客への簡易調査を行う | 第2四半期 | マーケティング担当 | 回答数、利用できる仮説 | 実施工数を確保できるか |
| ツール費 | 現行ツールを継続し、更新前に利用状況を確認する | 通年・更新2か月前 | 管理担当 | 利用率、必要機能 | 乗り換え時のデータ移行 |
| 人件費 | 定例作業を整理し、分析時間を確保する | 第1四半期 | マネージャー | 削減工数、分析実施回数 | 兼務による不足工数 |
| 外注費 | 定型制作を内製化し、専門作業のみ委託する | 第2四半期以降 | 制作担当 | 制作時間、品質、費用 | 内製化後の負荷 |
| 販促費 | 展示会の目的と過去商談を確認して出展判断する | 第1四半期 | 販促担当・営業 | 商談数、受注実績 | 出展しない場合の代替活動 |
予算策定時点で決めきれない項目も、確認課題と期限を年間計画へ残せば、期中により良い判断ができます。
なぜ前年踏襲のマーケティング予算が繰り返されるのか
前年踏襲は、一見すると何も考えていない予算のように見えるかもしれません。しかし、経営側から見ると、積極的に予算を変えるだけの判断材料が不足している場合があります。
経営から見ると予算増減の根拠が不足している
マーケティング部門が「CVが増えた」「UUが伸びた」「CPAが改善した」と報告しても、それが売上や利益へどの程度つながったか分からなければ、経営は予算を増やす判断をしにくくなります。
反対に、予算を減らしたときに売上へどのような影響が出るのか分からなければ、大幅に減らす判断にもリスクがあります。
その結果として、次のような方針が選ばれやすくなります。
事業成果との関係が十分に分からないため、ひとまず前年と同じ予算で、効率を上げてほしい。
前年踏襲は、必ずしも無関心や思考停止だけで生まれるものではありません。予算を変える根拠が不足した状態での、現実的な選択でもあります。
デジタルマーケティングと事業成果のデータが分断されている
デジタルマーケティングでは、広告、アクセス解析、問い合わせフォームなどの数字を細かく取得できます。一方、CV後の商談、受注、売上、利益は、営業や販売管理など別の部門が保有していることがあります。
そのため、次のような分断が起こります。
広告・サイト・CVのデータ
|分断|
商談・受注・売上・利益のデータ
マーケティング部門には、どのCVが受注したか分からない。営業部門には、どのマーケティング活動から来た顧客か分からない。この状態では、施策と事業成果の関係を説明できません。
CVの事業価値が分かれば経営との会話は変わる
CVで報告すること自体が問題なのではありません。
たとえば、過去実績から「この種類のCVは平均して何円の売上、何円の利益につながる」と分かっていれば、経営もCVの増減を事業の言葉として理解できます。
問題は、CVと事業成果の関係が分からないまま、CV数やUUだけで予算の必要性を説明することです。経営にとっては、その数字が重要そうであっても、予算を増減した場合の事業への影響までは判断できません。
前年踏襲予算から抜け出すために今期から準備する
本来は、経営が部門をまたいだ分析を指示し、必要な人員や予算を用意できるのが理想です。しかし、予算方針を受け取ったマーケティング部門のマネージャーが、その環境が整うまで待っていても現場は変わりません。
今期の仕事を止めずに、できる範囲から次年度の判断材料を作ります。
今期予算を遂行しながら分析時間を作る
まず、最低限の予算見直しによって年間の活動を把握します。そのうえで、重複作業、過剰な報告、目的が不明確な定例作業などを整理し、小さくても分析に使える時間を作ります。
新しい担当者の採用を前提にすると、計画が不安定になりやすいため注意が必要です。採用時期は完全にはコントロールできず、採用できても業務を理解して成果を出すまでには時間がかかります。
まずは現在の体制で着手できる範囲を決め、追加の人員や予算が確保できた場合に拡張するほうが、年間計画として実行しやすくなります。
CV後の顧客転化と売上貢献を小さく確認する
最初からCRMなどの大規模な導入を前提にする必要はありません。
たとえば、前年に獲得したCVの一部について、営業資料や販売管理データと手作業で照合します。まず確認したいのは、次のような事実です。
- 営業へ適切に引き渡されていたか
- 有効な見込み顧客は何件あったか
- 商談や受注へ進んだ件数はどの程度か
- 売上につながった顧客にはどのような傾向があったか
- 追跡できないCVがどの程度あるか
ここでの目的は、完全な計測基盤を作ることではありません。デジタルマーケティングの活動と事業成果の間に、どのような関係がありそうか解像度を上げることです。
具体的なデータの突き合わせ方、CV後の転換率や売上貢献の計算方法、継続的に追跡するための設計は別の記事で扱います。
分析結果を今期の予算運用へ反映する
小さな分析でも、これまで見えなかったことが分かる場合があります。
- CV数は多いが、営業へ渡せていない施策
- CV数は少ないが、受注率や単価が高い施策
- 広告よりも、営業対応の遅れが顧客転化を妨げている可能性
- マーケティング施策より、もともとの顧客意欲が売上を左右している可能性
この段階では、原因を断定しないことが重要です。事実と仮説を分け、追加で確認すべきことを決めます。
得られた知見は、今期の遂行予算の範囲で配分や運用を調整する材料になります。ただし、新規・既存顧客への配分、短期施策と中長期投資の配分、施策自体を増やすかどうかは、それぞれ別の判断として検討します。
来期は事業成果との関係を根拠に予算を提案する
今期中に分析を続ければ、次年度の予算では次のような説明が可能になります。
前年と同じ予算を希望します
ではなく、
この活動から獲得したCVは、顧客転化率と平均売上から見て
一定の売上貢献が確認できました。
一方、この活動はCV数に対して受注への転化が低いため、
来期は減額し、改善余地が確認できた活動へ振り替えます。
という説明です。
最初から完璧な分析である必要はありません。どのデータを使い、どこまで確認でき、何がまだ分からないかを明示すれば、前年踏襲以外の選択肢を経営と検討する土台になります。
前年成果の再現条件を確認するチェックリスト
前年踏襲予算を受け取ったら、次の項目を確認してください。
- [ ] 前年度予算と実消化額を確認した
- [ ] 売上、CPA、計画達成率などの成果を確認した
- [ ] 未消化予算が発生した理由を確認した
- [ ] 前年に行っていた改善活動を確認した
- [ ] 前年成果に必要だった担当者と工数を確認した
- [ ] 他部門や外注先の協力を今期も得られるか確認した
- [ ] 市場、競合、媒体環境の変化を確認した
- [ ] 費用を継続・増額・減額・廃止・判断保留に分けた
- [ ] 停止による回復コストやデータ断絶を確認した
- [ ] 費用区分ごとに今期の活動、時期、担当者を決めた
- [ ] 判断できない項目を期中の確認課題として残した
- [ ] 来期予算の根拠となるデータを取得する計画を作った
すべてを予算提出前に完了できなくても構いません。未確認の項目を明らかにし、いつ確認するか年間計画へ入れることが重要です。
前年踏襲のマーケティング予算に関するよくある質問
前年踏襲のマーケティング予算は悪いのでしょうか
必ずしも悪いわけではありません。継続事業で環境変化が小さく、前年の成果と活動内容が確認できている場合には、短期間で予算を作る現実的な方法です。ただし、前年と同じ成果を再現できる条件が今期にもあるかは確認する必要があります。
前年に成果が出た施策はそのまま継続してよいですか
今期も目的があり、成果を再現するための体制、工数、外部環境が大きく変わっていなければ、継続候補になります。ただし、前年に行った改善を省いて、予算額だけを継続しないよう注意してください。
使い切れなかった予算は減らすべきですか
未消化になった理由によって判断が変わります。効率化によって不要になったのであれば減額を検討できます。一方、期中の予算回収、実行の遅れ、人員不足などが理由なら、予算が不要だったとは限りません。
前年予算を見直す時間がない場合はどうすればよいですか
少なくとも、予算と実消化額、主要成果、未消化理由、前年に行った改善、今期の担当者と実施時期を確認します。判断できないものは無理に結論を出さず、期中の確認課題として年間行動計画へ残してください。
CVやUU以外の成果をすぐに確認できない場合はどうしますか
まずは一部のCVを営業資料や販売管理データと手作業で照合し、その後の商談、受注、売上を確認します。完全なシステム連携より先に、何が分かり、何が分からないかを把握することが出発点です。
まとめ|前年予算ではなく前年成果の再現条件を確認する
前年踏襲の方針を受け取ったとき、前年の予算額をそのまま転記するだけでは、今期の行動計画にはなりません。
前年の成果は、予算、改善活動、担当者の工数、他部門や外注先の協力、前年の外部環境によって生まれています。今期も同じ成果を目指すなら、その条件を再現できるか確認する必要があります。
まず、前年予算を最低限見直します。予算と実消化額、成果、未消化理由、活動内容、今期の変更条件を確認し、継続・増額・減額・廃止・判断保留に分けます。その結果を、活動、時期、担当者、確認課題を含む年間行動計画へ落とします。
そのうえで、今期の予算を遂行しながら、デジタルマーケティングの活動と売上・利益との関係を少しずつ確認します。
前年踏襲から抜け出すために必要なのは、前年予算を否定することではありません。前年成果がどのように生まれたかを明らかにし、次の予算判断に使える根拠を今期から作ることです。


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