AIでBtoB購買はどう変わる?調査で読む情報発信と商談

AIとBtoB購買。商談は変わる?。自社は、どう推薦されているか デジタルマーケティング経営

顧客が営業と会う前に、候補を調べて比較表を作る。これはAI以前から行われてきたことです。AIの普及で変わるのは、比較する行為そのものより、その比較に使われる説明を誰が作るかです。

自社の強みや向いている用途が、AIの回答では別の形で伝わっているかもしれません。企業には、AIから自社がどう紹介されるかを知り、その情報を持って商談に来る顧客へ対応する視点が加わります。国内外の購買調査から、情報発信と営業の接続を考えます。

BtoB購買行動でAIはどう使われている?国内調査の結果

IDEATECHが2026年8月に行ったBtoB大型購買の調査では、回答者502人の90.6%が、選定過程の少なくとも一部で生成AIを使ったと回答しました。

同じ調査では、課題認識・整理で主に参照する接点は「生成AI・AI検索」36.5%、「検索エンジン」24.9%。AIは、企業名が決まる前の課題整理にも使われています。

確認した行動 結果 読み取れること
自身・検討チームで生成AIの比較表を作成 53.8% 製品情報が、AIの要約や比較を経由して社内へ渡る
深掘り比較までに最終採用企業を最有力候補に決定 74.3% 最終確認に入る前から、候補への評価がある

対象は、直近12か月に500万円以上のIT製品・サービスの購入・更新等へ2名以上で関わった人です。小額の備品購入を含む全企業の利用率ではありません。出典:株式会社IDEATECH・2026年8月調査。

AIがあれば、営業への確認は減るのか

一方、世界のBtoB購買者約4,000人を対象とする6senseの2025年調査では、LLM利用が94%に達しても、顧客はベンダーの情報や外部の専門家を利用し続けています。

指標 2024年 2025年
平均購買期間 11.3か月 10.1か月
検討期間のうち、初めて売り手へ接触した時点 69%地点 61%地点

営業との接触はむしろ早まっています。同調査は、購入する製品に組み込まれたAI機能の価格・実装・安全性などを確かめる必要も、その理由として挙げています。

この調査は過去2年に2万5,000ドル以上の購買を経験した人が対象で、国内調査とは条件が違います。二つの利用率の高低を比べるより、AIによる調査と、人への確認が同時に行われる点を見るデータです。出典:6sense 2025 B2B Buyer Experience Report。

従来のBtoBマーケティングと何が違う?比較の説明がAIを経由する

以前から、買い手はWebサイトや資料を調べ、社内説明のために情報を整理していました。AIはその工程を短くし、複数の情報から一つの説明や比較表を作ります。

そこで売り手に起こり得るのは、公開した文章がそのまま読まれるとは限らないという問題です。最新の公式情報だけでなく、以前の紹介記事、比較サイト、レビューなどを組み合わせた説明が、顧客の前提になることがあります。

例えば、特定業界の導入事例を多く公開しているサービスが、AIから「その業界専用」と紹介されたとします。実際には他業界にも対応していても、その事実が伝わらなければ候補から外れます。これは情報設計上の説明例ですが、単に「AI対策をする」より、確認すべきずれを具体化できます。

AIの紹介で確かめること ずれがある場合の商談への影響
どの課題を解決する製品と説明されるか 本来対応できる課題で候補に入らない
誰に向いていると紹介されるか 規模・業界が不当に狭く、または広く伝わる
推薦理由に何を挙げるか 強みではない点に期待され、説明のやり直しになる
価格・連携・制約がどう説明されるか 古い条件や誤認を前提に比較される

顧客が事前に比較することは同じでも、その比較を組み立てる情報源と説明のされ方は変わります。

AI検索・AIOを意識して、何をWebサイトに載せる?

AIOやAEOは、AIの回答や推薦で自社の情報が適切に取り上げられることを意識した取り組みです。特定の書き方をすれば必ず推薦される仕組みではありませんが、人にもAIにも、用途と判断条件が伝わる情報は必要になります。

「〇〇業界向け」だけでなく、解決する課題を具体化する

「業務効率を改善します」だけでは、どんな相談に適する製品かが見えません。例えば「複数店舗の勤務実績を集約し、給与計算に渡すまでの転記を減らす」といった業務・課題まで説明すると、利用場面を理解しやすくなります。

ただし、一つの導入事例をサービス全体の利用条件に見せると、対象を狭めすぎます。一般的な対応範囲と、個別業界での活用例を分けて示すと、幅と具体性を両立しやすくなります。

公開する情報と、個別商談で確認する情報を分ける

「詳しくは営業へ」と基本条件まで伏せると、問い合わせを得る前に比較対象から外れることがあります。一方、個別の運用・見積もりは、一律の説明では正確に答えられません。

Webで比較できる状態にしたい情報 個別商談で詰める情報
対応する用途・対象、主な機能、標準的な導入条件 顧客固有の業務への適合、例外処理
料金体系、追加費用が生じる条件 個別見積もり、移行・開発範囲
標準連携、データ形式、主要な制約 既存システムとの具体的な接続方法
検証結果、事例、セキュリティ情報の案内 機密情報を含む設計・契約・運用確認

情報を出しすぎないこと自体を戦略にするより、候補に残るための判断材料と、顧客ごとの確認事項を整理するほうが筋が通ります。

自社はAIからどう推薦される?想定質問で確かめる

実際の顧客全員がAIに何を聞いたかは、企業側から網羅的に取得できません。そこで、想定する購買相談を自社で試し、推薦のされ方を定点で確認する方法があります。

例えば「多店舗企業で勤怠の転記を減らしたい」「既存の給与システムと接続できる候補を比較したい」といった相談です。ブランドを指定する質問だけでは、そもそも候補に入るかが分かりません。

記録には、質問、AIサービス・モデル、実施日、検索の有無、候補と推薦理由、参照元を残せます。同じ条件でも回答は変わるため、一度の出現だけで市場全体の認知や順位とみなすのではなく、説明のずれを発見するために使います。

修正対象は、AIへの働きかけだけではありません。公式ページの対応範囲が曖昧、古い料金が残っている、導入事例と標準機能が区別されていない、といった自社の情報不足も見つかります。

商談は「顧客がAIから聞いた説明」を踏まえて始める

商談前に顧客が得た情報を把握できれば、機能を一から説明するより、実際の利用条件へ話を進めやすくなります。「どの点が候補選びの決め手になったか」「比較で気になった条件は何か」を聞くことにも意味があります。

AIの説明を正解扱いする必要はありません。推薦理由が自社の実態と合っているかを確かめ、合っていれば具体化し、違えば根拠を示して直す。その情報をWebの改善へ戻すと、公開情報と営業の説明がつながります。

従来の購買ファネルの考え方を捨てる話ではなく、顧客が比較・理解する接点にAIが加わったと捉える整理です。

よくある質問

AIがBtoBの営業を代替する?

情報収集や比較表の作成を担う場面は増えていますが、個別の導入条件や契約、社内調整までなくなったわけではありません。調査でも、AI利用と売り手への確認が併存しています。

AIへの推薦対策とSEOは同じ?

重なる部分はありますが、同じではありません。検索で見つかる情報を整えることに加え、AIが自社をどんな用途・理由で説明するかも確認対象になります。

AIに名前が出なければ、すぐサイトを作り直すべき?

まず、質問の条件と自社の適合、回答の情報源を確認できます。想定顧客への説明に足りない点を直すほうが、一度の回答だけで大幅改修するより判断しやすくなります。

まとめ|AIからどう見られているかを、商談の前提に加える

BtoBの買い手が事前に候補を絞り、社内へ説明する構造は続いています。そこへAIが入り、顧客が持ってくる比較表や推薦理由の作られ方が変わっています。

売り手が加えたいのは、AIが自社をどう紹介しているかの確認です。その説明を知った顧客が来る前提で、公開情報と商談の段取りを整える。AI時代の変化を、実際の情報発信と営業に結び付ける出発点になります。

参考資料

—
本記事の文章・表・図解・グラフは、Skill Business Architecture Labが独自に編集・作成しています。引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名・サイト名・記事URLをご記載ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました