商品の名前を知っていることと、買いたいと思っていることは違います。興味を持って調べていても、他社の商品と比べている途中かもしれません。
顧客が購入に至るまでの過程を整理するのが、購買ファネルです。各段階の顧客の状態が分かると、何を伝え、どのように接触すればよいかを考えやすくなります。
この記事では、一般的な「認知・興味関心・比較検討・購入」の4段階を、人数の変化を示す図と具体例で説明します。顧客に必要な情報と、それを届ける施策を分けて整理していきましょう。
購買ファネルとは
商品・サービスの認知から購入までを表す考え方
購買ファネルは、顧客が商品・サービスを知り、購入に至るまでの過程を段階で捉えるモデルです。パーチェスファネルとも呼ばれます。
ファネルは「漏斗(ろうと)」という意味です。商品を知った人全員が興味を持つわけではなく、興味を持った人全員が購入するわけでもありません。購入に近づくにつれて対象者が絞られる様子を、上が広く下が狭い漏斗で表します。
マーケティングファネルには、購入後の継続利用や紹介まで扱うものもあります。この記事で説明するのは、商品を知ってから購入するまでの基本的な購買ファネルです。
「認知→興味・関心→比較・検討→購入」の4段階
基本的な4段階は、次のとおりです。
- 認知: 商品・サービスの存在を知る
- 興味・関心: 興味を持ち、内容や利用するメリットを知ろうとする
- 比較・検討: 複数の商品・サービスを比べ、購入する候補を絞る
- 購入: 条件を確認し、購入・契約を決める

図では、商品を知った100人のうち、興味を持った人が30人、他社商品と比較した人が10人、購入した人が1人という例を示しています。残りの人は、今は必要がない、予算が合わない、他社の商品を選んだなどの理由で購入まで進みません。
例えば、掃除機の広告を見て商品を知り、使い方を調べ、他社製品と比較して購入する。この流れを段階に分けたものが、購買ファネルです。
実際には、比較しながら商品の特徴を調べ直したり、紹介された商品をすぐに購入したりする人もいます。ファネルは、顧客の検討状況を整理するための基本形として使います。
顧客がどこで止まっているかを整理する
購買ファネルを使うと、「売れていない」という結果を、顧客が購入までのどこで止まっているかに分けて考えられます。
例えば、ある商品が売れていないとします。商品の存在を知られていないのか、知られていても魅力が伝わっていないのか。それとも、他社の商品と比較した結果、選ばれていないのでしょうか。同じ「売れていない」という状態でも、理由は異なります。
存在を知らない人には、まず商品名や何に役立つ商品なのかを知ってもらう必要があります。比較している人には、価格や性能など、候補の違いを判断する情報が必要です。
顧客がどの段階にいるかによって、必要な情報と企業の働きかけは変わります。 ここからは、各段階の顧客の状態、必要な情報、企業側の施策を順に見ていきます。
認知段階|商品・サービスの存在を知る
顧客の状態:名前や存在を知った段階
認知段階は、「こんな会社があるんだ」「こういう商品があるんだ」と存在を知る段階です。広告や店頭、SNS、ニュース、知人の紹介などがきっかけになります。
この時点では、詳しい機能や価格を知らなくても、名前や大まかな用途が頭に残っています。知った直後に興味を持つ人もいれば、名前だけを覚えている人もいます。
例えば、掃除機の広告を見て、ブランド名と「軽くて持ち運びやすい」という特徴を知る場面です。購入するかどうかを考える前に、選択肢となる商品の存在を知ります。
必要な情報:会社名・商品名・内容・利用するメリット
認知段階で伝える基本情報は、会社名やブランド名、商品・サービス名、提供内容、利用によって得られるメリットです。
名前だけでは何をする商品か分かりません。一方、便利な特徴だけが伝わっても、名前が残らなければ後から探しにくくなります。「何という商品で、何ができ、どんな良さを得られるか」を結び付けることが重要です。
例えば「軽量設計」という特徴を「階段でも持ち運びやすい」と説明すれば、使う場面を想像できます。細かな仕様を覚えてもらう前に、自分に関係がある商品だと感じられる情報を伝えます。
企業側の施策:広告・SNS・PRで広く知ってもらう
企業側の目的は、商品・サービスを広く知ってもらうことです。テレビ・新聞などのマス広告、ディスプレイ広告、SNS広告、PR、店頭での展示などが代表的な接点です。
商品名を知らない人は、その名前で検索できません。普段見ている番組、サイト、SNSや、訪れる店舗で商品と出会ってもらうことに意味があります。
最初の接触では、名前と特徴が分かる内容を示し、興味を持った人が詳しい紹介ページや店頭の説明へ進めるようにします。
興味・関心段階|商品をもっと知りたくなる
顧客の状態:自分に役立つか、魅力があるかを考えている
興味・関心段階では、「便利そう」「楽しそう」「自分にも必要かもしれない」と感じ、商品について知ろうとします。
気になる情報を眺める人もいれば、商品名で検索し、紹介ページや動画を積極的に見る人もいます。顧客の関心は、存在を知ることから、内容を理解することへ移っています。
例えば、軽い掃除機に興味を持った人が、「どのくらい軽いのか」「自宅の床でも使いやすいか」と使い方や特徴を調べる場面です。
必要な情報:特徴・使い方・利用場面・得られる体験
この段階では、商品の特徴、機能、使い方、利用場面、購入後に得られる体験が主な情報になります。価格の目安も、検討を続けるか考える材料です。
認知段階で伝えたメリットを、具体的に理解できる説明へ深めます。「使いやすい」なら、どの操作が簡単なのか。「楽になる」なら、何の手間が減るのかを示します。
例えば掃除機なら、本体の重さだけでなく、持ち上げる様子や家具の下を掃除する様子を見ることで、自宅で使うイメージを持てます。法人向けサービスなら、利用事例を通じて、どの仕事がどう変わるのかを伝えられます。
企業側の施策:検索・動画・事例で理解と関心を深める
企業側の目的は、興味を高め、利用するメリットを理解してもらうことです。SEOや検索広告で調べている人に接触し、商品紹介ページ、動画、事例などへ案内します。動画広告やSNSの発信から、さらに関心を高める方法もあります。
操作や動きが特徴なら動画、利用後の変化を伝えるなら事例、まとまった説明や質問の機会が必要ならセミナーが役立ちます。伝えたい情報に合わせて形式を選びます。
興味を持った人が、必要な情報を読み進められることも大切です。紹介ページから仕様、価格、詳しい説明へ進めるようにして、検討の途中で情報探しに困らない状態を作ります。
比較・検討段階|どの商品・会社が良いかを比べる
顧客の状態:候補の違いを調べ、購入先を絞っている
比較・検討段階では、複数の商品・サービスを比べ、どれを購入するか考えます。「便利そうか」から、「候補の中でどれが一番良いか」へと判断が進みます。
価格を重視する人もいれば、性能、デザイン、使いやすさ、評判、サポートを重視する人もいます。購入する人が大切にする条件に沿って、候補を絞る段階です。
例えば掃除機なら、A社とB社の価格、重さ、連続使用時間、手入れのしやすさを比較します。単に性能が高いかではなく、価格も含めてどちらを選ぶかを考えます。
必要な情報:価格・性能・品質・評判・他社との違い
比較に必要なのは、候補の違いを確認できる具体的な情報です。価格、仕様、品質、保証、口コミ・レビュー、実績などが判断材料になります。
「高品質」「低価格」と書くだけでは、何と比べてどのように良いかが分かりません。比較する条件をそろえ、違いが分かる数値や説明を示します。
例えば、本体価格が安くても、別売りの付属品が必要なら合計金額は変わります。サービスでも、基本料金に何が含まれ、何が追加料金になるかが分かれば、同じ利用条件で比較できます。
企業側の施策:比較情報・再接触・体験で選ぶ理由を伝える
企業側の目的は、他社との違いや強みを伝え、選んでもらうことです。比較に関するSEOや検索広告、比較メディア、商品説明ページなどで、候補を探している人に情報を届けます。
一度サイトを訪れた人にはリマーケティング広告で再訪を促し、接点のある人にはメールで比較材料を届ける方法もあります。再接触では、同じ名前を繰り返し見せるだけでなく、判断に役立つ情報を用意します。
価格や仕様は表で比較できますが、使い心地は文章だけでは伝わりにくいものです。試用、店頭体験、デモ、個別相談などを通じて、実際に確かめてもらう機会を作ります。
購入・導入段階|条件を確認し、購入を決める
顧客の状態:最終確認をして購入・契約に進む
購入・導入段階では、選んだ商品について最後の条件を確認し、注文や契約に進みます。
個人の買い物なら、在庫、配送日、支払い方法などを確かめて注文する場面です。法人向けサービスなら、見積もりや契約条件を確認し、社内承認を得て契約する場面に当たります。
買いたい商品が決まっていても、必要な日までに届かない、支払い条件が合わない、社内承認が下りないといった理由で止まることがあります。商品の魅力だけでなく、購入できる条件が整っていることも必要です。
必要な情報:総額・購入方法・納期・契約条件・購入後の対応
最終判断に必要なのは、支払う総額、購入・申し込み方法、支払い方法、納期や利用開始日、保証、返品・解約条件などです。法人向けの商品・サービスでは、導入に必要な作業や支援内容も確認します。
例えば、旅行前に使うための商品なら、機能の追加説明より、出発までに届くかが重要になります。顧客が最後に確認したい条件を、購入前に見つけられるようにします。
購入後の問い合わせ先やサポートも、不安の解消につながります。商品を選ぶ理由だけでなく、安心して手続きを進めるための情報をそろえます。
企業側の施策:購入手続きと営業の支援で後押しする
企業側の目的は、残った不安や手続きの負担を解消し、購入・契約を後押しすることです。
Webサイトで販売する場合は、送料を含む総額、配送日、支払い方法を分かりやすく表示し、購入フォームを使いやすくします。入力が複雑だったり、注文後の流れが分からなかったりすれば、購入直前で離脱する理由になります。
営業を介して販売する場合は、見積もり、商談、個別相談で条件を具体化します。社内承認が必要な顧客には、費用や導入手順を説明できる資料を用意することも支援になります。
なお、資料請求や問い合わせをサイト上の成果であるCVに設定していても、それ自体は購入ではありません。その後の商談・受注まで追う方法は、デジタルマーケティングをCVで終わらせず、顧客接点と売上を追跡する方法で説明しています。
購買ファネルを集客施策に活用する方法
各段階で必要な情報を整理する
最初に整理するのは、媒体名ではなく、顧客が判断するために必要な情報です。基本的な項目をまとめると、次のようになります。
| 購買段階 | 顧客に必要な情報 | 自社の情報を確認する問い |
|---|---|---|
| 認知 | 会社名・ブランド名、商品・サービス名、提供内容、利用するメリット | 名前とともに、何を提供し、どんな良さがあるか伝わるか |
| 興味・関心 | 特徴、機能、使い方、利用場面、得られる体験、価格の目安 | 実際に使う様子や、利用後の変化を想像できるか |
| 比較・検討 | 価格、性能・品質、口コミ・評判、実績、保証、他社との違い | 候補の商品・サービスを同じ条件で比べられるか |
| 購入・導入 | 支払う総額、購入方法、支払い方法、納期・利用開始日、契約条件、購入後の対応 | 最後の疑問を解消し、購入手続きを進められるか |
同じ情報でも、段階によって知りたい詳しさは変わります。例えば価格なら、興味・関心段階では予算に入りそうかが分かる目安、比較段階では候補同士を比べられる料金、購入段階では自分が実際に支払う総額が必要です。
情報の内容に合わせて、届ける方法を選ぶ
情報を整理したら、それをどこで、どのように届けるかを決めます。
まだ知られていない商品は、広告やPRで接触を増やす。使い方を知りたい人には、検索から紹介ページや動画へ案内する。候補を比べる人には、比較情報や体験の機会を用意する。このように、顧客の状態から施策へつなげます。
媒体の役割は一つに固定されません。SNSで初めて商品を知る人もいれば、SNSに掲載された利用者の声を比較材料にする人もいます。どの媒体を使うかと、その接点で何を伝えるかをセットで考えます。
例えば「軽くて持ち運びやすい」と紹介した広告からは、重さや使用場面を確認できるページへつなぎます。既に商品を選んだ人には、価格や在庫、購入手続きへすぐ進めるようにします。
認知を増やすか、購入までの進み方を改善するかを考える
冒頭の「認知100人→興味30人→比較10人→購入1人」という例で考えてみましょう。購入を2人に増やしたいとき、考える方向は二つあります。
一つは、商品を知る人を増やすことです。同じ割合で購入まで進むと仮定すれば、認知が200人になると購入は2人になります。もう一つは、既に知っている100人の中で、購入まで進む人を増やすことです。比較している10人のうち2人が購入するようになれば、認知人数を増やさずに購入を2人にできます。
購買ファネルを使うと、「知っている人を増やす」ことと「知っている人が購入へ進めるようにする」ことを分けて考えられます。
| 確認できた状況 | 次に確かめること | 改善の方向 |
|---|---|---|
| 商品を知られていない | 顧客との接点が足りているか | 広告・PRなどで新たな接触を増やす |
| 知られているが、興味を持たれない | 利用するメリットや魅力が伝わっているか | 広告の訴求や商品紹介の内容を見直す |
| 比較されるが、他社が選ばれる | 価格・品質・条件のどこで差がついているか | 比較情報を補い、必要なら商品や提供条件を見直す |
| 購入直前で止まる | 費用、納期、手続きなどに障害がないか | 条件の説明や購入フォーム、営業の支援を改善する |
実際の改善では、サイトでの閲覧・購入の状況に加え、問い合わせや顧客の声を確認します。法人向けサービスなら、営業が把握している受注・失注の理由も重要です。数値だけで理由を決めず、何が購入を妨げているかを確かめます。
そのうえで、改善にかかる費用や手間を踏まえ、新たな集客と既存接点の改善のどちらを優先するか判断します。法人向けの分析方法は、リードの質が悪いと言われたときの受注・失注理由の分析で詳しく扱っています。
購買ファネルは、商品を知る人から購入する人までを段階で整理し、必要な情報や働きかけを考えるためのものです。自社の広告、商品ページ、資料、購入手続きを並べ、各段階の顧客が必要とする情報を得られるか確認してみてください。
一方、実際には、タクシー広告を見てその場で問い合わせたり、初めて見た商品にひとめぼれして購入したりする人もいます。逆に、何社も比較していながら、今は購入するつもりがない人もいます。
接触をきっかけに一気に行動する人と、詳しく調べても購入しない人。この違いを、購買段階だけでどう捉えればよいのでしょうか。
次の記事では、一般的な購買ファネルを踏まえ、その基本形だけでは捉えにくい行動を、顧客の購入意欲と合わせて掘り下げます。
参考資料
- HubSpot「マーケティングファネルとは?基礎知識や活用方法をわかりやすく解説」:購買ファネルの定義、基本的な4段階、段階別のアプローチの考え方。
- Salesforce「ファネルとは?意味や種類、活用方法、分析の始め方を解説」:ファネルの種類、認知から購入までの役割と活用方法。
本記事の文章・表・図解・グラフは、Skill Business Architecture Labが独自に編集・作成しています。引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名・サイト名・記事URLをご記載ください。


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