毎月の支払いが増え、使っていない契約が気になる。「サブスク疲れ」と呼ばれる不満はあります。しかし、解約があることと、消費者がサブスクという仕組み自体を嫌っていることは同じではありません。
動画配信のように従来のサービスを大きく上回る便利さがあれば、消費者は定額課金を選んできました。今起きているのは、増えた契約を、他の選択肢との比較で選び直す動きではないでしょうか。まず利用分野と推移を確認し、事業者が継続課金に期待するメリットと、消費者が求める価値の違いを考えます。
サブスク市場はどうなっている?まず利用分野と推移を見る
サブスクリプションは、一定の料金を継続して払い、商品やサービスを利用する仕組みです。動画・音楽の使い放題、物品のレンタル、食品などの定期便では、利用目的も費用構造も違います。
マイボイスコムの2025年1月調査は、9,053人の回答から、直近1年間に何らかのサブスクを利用した人を約36%としています。10・20代は6割強で、年代による差も大きい結果です。
どんなサブスクが使われている?動画が中心
| 利用分野 | 直近1年間のサブスク利用者のうち利用した割合 |
|---|---|
| 動画配信 | 77.2% |
| 音楽配信 | 20.6% |
| 電子書籍・雑誌・コミック | 11.3% |
| サプリメント・健康食品等の定期便 | 7.6% |
| 化粧品等の定期便 | 4.5% |
| 食材・食品の定期便 | 2.6% |
| 家電、家具・インテリア、自動車等のレンタル | それぞれ約2% |
出典:マイボイスコム・2025年1月調査。直近1年間のサブスク利用者への複数回答です。全回答者の利用率や市場売上の構成比ではありません。
「サブスク市場」と一括りにしても、この調査では動画への集中が見えます。食品や家具まで、動画と同じ程度に普及している市場ではありません。
動画サブスクは拡大が続くが、増え方は緩やかに
ICT総研が2025年4月に示した定額制動画配信サービスの利用者数推計では、2020年末2,330万人、2022年末3,100万人、2024年末3,450万人です。

| 時点・期間 | 利用者数・増加 |
|---|---|
| 2020年末 | 2,330万人 |
| 2022年末 | 3,100万人 |
| 2024年末 | 3,450万人 |
| 2020年末→2022年末 | 770万人増・約33.0%増 |
| 2022年末→2024年末 | 350万人増・約11.3%増 |
出典:ICT総研・2025年有料動画配信調査。増加率は公表値から計算した各2年間の変化です。都度課金や将来予測を含めていません。
利用者は増えていますが、急拡大した時期と比べると増加幅は小さくなっています。普及が進めば未利用者の余地も小さくなり、以前と同じ人数増を続けることは難しくなります。
音楽も伸びている。「サブスク全体が停滞」とは言いにくい
日本レコード協会の音楽メディアユーザー実態調査では、直近6か月の音楽聴取者における定額制音楽配信の利用は、2023年25.6%、2024年30.7%、2025年33.2%へ上がっています。
各年の対象人数は順に2,522人、2,412人、2,525人です。Amazon Music Primeを含む利用状況であり、有料契約数とは異なります。それでも、動画の成長鈍化だけで、すべてのサブスクが縮小しているとは読めません。
サブスク疲れとは?費用・時間・管理の負担が重なる状態
サブスク疲れは、契約の増加や継続課金、利用・管理の手間に負担を感じる状態を表す言葉です。毎月の費用だけでなく、「見ないと損」「使い切れない」「どれを解約するか考えるのが面倒」といった不満も含みます。
| 不満の種類 | 消費者側で起こること |
|---|---|
| 支払いの累積 | 一つは安くても、複数を合計すると固定費が重くなる |
| 利用時間の限界 | 見放題・使い放題でも、実際に使える時間は増えない |
| 価値の変化 | 契約時は便利でも、生活や品ぞろえが変われば割高になる |
| 管理の負担 | 更新、値上げ、解約手続きの把握が必要になる |
米国のDeloitte「2025 Digital Media Trends」では、有料動画を使う世帯の平均契約数は4。月額支出は前年の61ドルから69ドルへ約13%上がり、47%が支払いすぎと感じています。
一方、過去6か月に解約した割合は39%で、同報告では過去数年と同程度です。24%は解約後に同じサービスへ再加入しています。解約の多さだけで、需要が消えたとは言いにくい動きです。
出典:Deloitte・2025年調査。2024年10月、米国の消費者3,595人を対象に実施。支出・契約数は有料動画利用者の集計です。国内市場とは分けて見る補助データです。
なぜ動画サブスクは支持された?継続課金以上の便利さがあった
動画配信は、レンタル店へ行き、作品を探し、借り、返すという工程を大きく変えました。自宅で探し、その場で見られ、返却も不要です。一定の料金で複数作品を見られる点も、利用量が多い人には大きなメリットでした。
成長の理由を「サブスクだったから」とまとめるより、以前の選択肢に比べて、時間・手間・費用の組合せが大きく改善したと見るほうが、他の市場を考えるときにも役立ちます。
同じ継続課金でも、届く食品の価格が高い、使う回数が少ない、代替品のほうが便利といった状況なら、動画の成功をそのまま再現できません。サブスクは収益の取り方であり、それ自体が利用者の価値になるわけではないためです。
企業には安定収益、消費者には積み重なる固定費
企業には、継続課金によって収益の見通しが立ちやすくなるメリットがあります。だからこそ、さまざまなサービスがサブスク化を検討します。
しかし、消費者が払えるお金や使える時間は同じようには増えません。複数の企業がそれぞれ「月額なら安い」と提案しても、家計では合計額になります。個別には小さい支出が、全体では無視できなくなるわけです。
インフレで他の生活費も増えれば、契約時には受け入れた支出も見直し対象になります。ただし、それは便利なサービスまで一律に不要になることを意味しません。比較する相手に勝てる価値があるかが、以前より厳しく問われていると考えられます。
値上げと購入の選び直しについては、値上げ後の消費者行動でも扱っています。
冷凍宅配食を1年後にやめた例から考える
例えば、冷凍庫に置いておけばいつでも食べられる宅配食を、1年間使ってから解約したケースを考えます。送料を含めた負担が1食500~1,000円程度と感じられると、自炊より高く、外食も比較対象になります。
| 比較する選択肢 | 得られる価値・負担 |
|---|---|
| 冷凍宅配食 | 献立や調理を省ける。配送費や保管場所も含めた負担がある |
| 自炊 | 手間はかかるが、予算や量を調整しやすい |
| 外食 | 調理・片付けに加え、出来たての料理や店のサービスも得られる |
これは個別の利用経験を基にした比較例で、特定商品の現在の料金表ではありません。重要なのは「サブスクに疲れた」という心理だけでなく、便利さに対して払い続ける価格が合わなくなったという判断です。
市場の伸び悩みは、継続課金への拒否ではなく価値の選び直しではないか
新たなサブスクが伸びにくい背景には、動画配信のように、従来の選択肢を圧倒するほど便利なサービスが、次々と現れているわけではないこともあると考えます。
動画の需要が強く伸びたのは、満たされていなかったニーズに応えたからです。他の分野でも、価格や便利さで明確な差があれば、消費者は乗り換えるでしょう。一方、従来と大差がないサービスを継続課金にしただけでは、固定費を増やす理由になりにくくなります。
事業者が見るべき比較相手は、同業のサブスクだけではありません。買い切り、都度利用、自分で行う方法、使わない選択まで含まれます。
「継続してもらう工夫」を考える前に、その代替手段より何がどの程度良いのかを確かめる。サブスク疲れを消費者の気分の問題にしないための、事業側の問いです。
よくある質問
サブスク市場は縮小している?
分野によります。国内の定額動画は利用者が増えながら増加幅が縮小し、音楽配信の利用も伸びています。個別の解約経験だけで、市場全体の縮小とは判断できません。
サブスク疲れの主な原因は?
費用の累積、利用時間の不足、内容に対する割高感、管理の手間などが考えられます。物価高だけでなく、他の選択肢との比較も関係します。
解約率が高いサービスは価値がない?
必ずしもそうではありません。見たい作品があるときだけ入り直す利用もあります。契約期間、利用頻度、再加入まで見ると、単発の解約とは違う需要が見えることがあります。
まとめ|払い続けたい価値があれば、サブスクは選ばれる
サブスクの利用は動画を中心に広がり、分野によって今も成長しています。一方、契約が増えた消費者は、毎月の支出と実際に得る便利さを選び直しています。
「サブスクだから売れる」時期ではなく、従来の方法より明確に便利で、費用に見合うから続ける。サブスク疲れという言葉の奥にあるのは、この当たり前の比較が、積み重なった固定費の中で厳しくなったことではないでしょうか。
参考資料
- マイボイスコム・2025年サブスク調査:2025年1月、回答9,053人。利用分野・利用実態。
- ICT総研・2025年有料動画配信調査:2025年4月公表。定額動画利用者の推計値。
- 日本レコード協会・2025年度音楽メディアユーザー実態調査:定額音楽配信の利用推移。
- Deloitte・2025 Digital Media Trends:米国動画配信の支出、解約・再加入。
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