かつて「スマホばかり見ないで」と言っていた親が、今は食事中もYouTubeを見ている。帰省しても話が続かず、動画で知った話題ばかりが出てくる。「楽しみができたのはよいけれど、このままで大丈夫だろうか」。そんな家族の戸惑いを表す言葉として、「ドパ親」が報道に登場しています。
背景にあるのは、高齢者が突然変わったという話だけではありません。親世代にも動画が日常の道具として広がり、趣味を楽しむ場所、情報を得る場所、人とのつながりを感じる場所が同じ画面に集まるようになりました。そこに推薦や自動再生が加わり、次の一本へ進みやすくなっています。
ただし、長く見ること、内容を信じること、お金を払うことは、それぞれ別の行動です。調査をたどると、親世代のYouTube利用は広い一方、クリエイターへの支援経験は若い層ほど多いという違いも見えてきます。言葉の意味から国内外のデータへ進み、何が変わり、家族は何を心配しているのかを整理します。
- ドパ親とは?動画に没頭する親を表す言葉
- ドパガキとの違いは、注意する側とされる側の逆転
- 国内報道で心配されているのは、視聴時間の先にある変化
- 親世代を一括りにできない――人口と暮らしの違い
- YouTubeはどこまで普及した?60代・70代でも日常の選択肢に
- 親世代は何を見る?料理・音楽・健康という生活の入口
- テレビからYouTubeへ移った?実態は併用と画面の変化
- なぜ「もう一本」見るのか――楽しみと次の候補がつながる
- なぜ内容まで信じる?「知っている感じ」と根拠は別のもの
- 会ったことのない配信者が、身近な人になる
- 視聴から購入・投げ銭へ――若い層のほうが支援経験は多い
- 海外にも似た呼び方がある?iPad parentsは文脈で意味が変わる
- 海外の家族も悩む、親の自由と心配の境界
- 米国でもYouTubeは高齢層へ――使うサービスには違いがある
- 高齢者は誤情報を信じやすい?「共有した」と「信じた」を分ける
- おすすめ動画で考えが偏る?内容の偏りと意見の変化は別
- AIの偽専門家・偽著名人が、信頼の手がかりを変える
- 親の動画利用とどう付き合う?まず何を楽しみ、何が失われたか
- まとめ:見る・信じる・買うの変化を、別々に理解する
- 参考資料
ドパ親とは?動画に没頭する親を表す言葉
「ドパ親」は、YouTubeなどの動画やネットコンテンツに強く没頭する親を、若者を指す「ドパガキ」になぞらえて表現した言葉です。2026年11月1日のABEMA TIMESは、高齢の親の動画利用を心配する家族を取り上げ、「いわば『ドパ親』とも呼ぶべき」と紹介しています。ABEMA TIMES
ここで押さえたいのは、病名や医学的な判定基準ではなく、家族から見た変化を表す呼び方だということです。「ドパ」という響きだけで、特定の脳内物質が原因だと診断できるわけではありません。本人が何を見ているのか、生活にどんな変化があるのかを確かめるほうが、実際の状況に近づけます。

たとえば、好きな歌手の映像を長く楽しむことと、動画だけを根拠に健康商品を買うことでは、家族が確認したい点が違います。前者なら睡眠や約束への影響、後者なら商品の説明や契約内容、支払額が問題になります。「スマホ依存」という一語にまとめると、この違いが見えにくくなります。
また、言葉が報道で目立つことと、その状態の人が何人いるかは別です。現時点の利用調査はYouTubeやSNSを使う人を数えたもので、「ドパ親」の人数を測った調査ではありません。以下では、普及の規模と、問題になり得る場面を分けて見ていきます。
ドパガキとの違いは、注意する側とされる側の逆転
「ドパガキ」は、短い動画やゲームなどの刺激に夢中になる若者を揶揄する文脈で使われます。一方、「ドパ親」で目を引くのは、以前は子どもの画面時間を注意していた人が、今度は注意される側になるという関係の逆転です。いずれも相手をひとまとめにする強い呼び方なので、そのまま本人に投げかけると話し合いが難しくなりそうです。
子どもの利用なら、保護者が時間や購入を管理するという関係があります。しかし親は、自分のお金と時間を使う成人です。子どもが心配していても、「やめなさい」と言えば決着する話ではありません。本人にとっては楽しみや情報収集なのに、家族には無駄な時間に見えることもあります。
| 家族から見た変化 | 本人にとっての意味の例 | 話し合う手がかり |
|---|---|---|
| 会話中も画面を見ている | 続きが気になる | 一緒に話す時間をどう取るか |
| 同じ配信者を毎日見る | 親しみ・日課 | どんなところが好きなのか |
| 動画で知った商品を買う | 困り事を解決したい | 内容・金額・続く支払い |
表は状況を考えるための例です。本人の楽しみを理解することと、生活や支出への影響を確認することを両立させると、「見るな」「自由にさせて」の二択から抜け出しやすくなります。
国内報道で心配されているのは、視聴時間の先にある変化
ABEMA TIMESの報道では、個人の画面で何を見ているかが家族に分かりにくいこと、感想を言い合う機会が減ること、親子の関係が逆転して注意しにくいことが論点になっています。番組内の専門家の見解と、全国の人に当てはまる調査結果は分けて受け止める必要があります。報道の議論
この話を身近な場面に置き換えると、家族の不安には少なくとも三つの種類があります。第一は、一緒に過ごすはずの時間が画面へ移ること。第二は、情報の確かめ方が変わり、家族の説明より特定の配信者の話を優先すること。第三は、商品購入や支援などの支払いが加わることです。

三つを区別する理由は、対処の入口が違うからです。会話の時間が欲しいなら食事中の扱いを相談できます。情報の根拠が心配なら、動画を一緒に見て出典を探すことから始められます。支出なら、月額か単発か、解約できるかを確認する必要があります。
逆に、料理を覚えたり、昔好きだった音楽を見つけたり、外出先を探したりして生活が豊かになっている利用まで、同じ問題として扱うと本人の納得を得にくくなります。「動画を見ている」という観察だけで結論を出さず、その結果、生活の何が増え、何が減ったかを見るのが出発点です。
親世代を一括りにできない――人口と暮らしの違い
日本には動画を楽しむ高齢者が増えるだけの大きな人口基盤があります。2026年版高齢社会白書によると、2025年10月1日の65歳以上人口は3,622万人、総人口の29.4%です。その中でも65~74歳は1,495万人、75歳以上は2,127万人と、年齢の幅があります。内閣府・高齢化の状況

注:2025年10月1日人口。内閣府「令和8年版高齢社会白書」掲載値。万人単位の丸め値。
65歳を過ぎても働いている人、家族の世話をしている人、趣味の集まりへ出かける人、自宅で過ごす時間が長い人では、動画を見る時間も目的も違います。同白書では2025年の就業率が65~69歳で54.5%、70~74歳で36.2%、75歳以上で12.6%とされています。「高齢者は時間が余っている」という説明では、この違いを捉えられません。就業の統計
将来推計では、65歳以上人口は2043年に3,953万人でピークを迎え、2070年の高齢化率は38.7%になる見込みです。ただし、そのころの高齢者は、今からスマホや動画に長く接してきた人たちでもあります。現在の80代の利用習慣を、そのまま将来の80代へ当てはめることはできません。
年齢だけでなく、使い始めた時期、仕事でのデジタル経験、同居や交流の状況を見ると、親の行動を説明する材料が増えます。市場としても「シニア向け動画」という大きな箱より、何のために、どの生活場面で見るかを考えるほうが実態に近そうです。
YouTubeはどこまで普及した?60代・70代でも日常の選択肢に
総務省の令和7年度調査を見ると、YouTubeは若者だけのサービスではありません。40代・50代で広く使われ、60代でも約4人に3人、70代でも約半数が利用しています。子どもが知らないうちに親が動画の視聴者になっていた、という変化は、普及状況から理解できます。

出典:総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」表5-3-1-2。2025年12月1~7日、13~79歳の男女1,800人。「普段の生活で利用することがある」とする割合。80歳以上は対象外。
この数字が意味するのは、動画へ到達できる人が多いということです。毎日見る人の割合や、一人当たりのYouTube視聴時間を示しているわけではありません。利用経験の広さと、時間の使い方は次の段階として見る必要があります。
たとえば、必要なときだけ修理動画を探す人も、毎晩同じチャンネルを見る人も、利用者に含まれます。同じ年齢でも、検索して一本だけ見る使い方と、ホーム画面に出てくる動画を続けて見る使い方では、情報との出会い方が変わります。
それでも、この普及は大きな変化です。動画の説明を受け取る相手として、親世代を例外扱いする理由は薄れています。一方で70代には使わない人も多く、動画だけに情報を集めれば全員へ届くわけでもありません。広がりと世代内の差を同時に見ることが大切です。
親世代は何を見る?料理・音楽・健康という生活の入口
親が動画を見る動機を、刺激や暇つぶしだけで説明すると、大事な部分を取りこぼします。ハルメクの2025年調査では、50~88歳の女性のYouTube視聴ジャンルで、料理・レシピ、コンサート・ライブ映像、健康・医療が上位でした。ハルメク調査

注:2025年5月22~26日の本調査493人のうちYouTube視聴者352人。年代を均等に再集計した7段階の加重平均点による順位で、視聴率ではありません。コンサート・ライブ映像は投げ銭付きライブ配信を意味しません。
料理なら、文字だけでは分かりにくい手順や加減を映像で確認できます。音楽なら、会場へ行けないときも演奏を楽しめます。健康なら、気になる体のことを調べたいという動機があります。これは、見る側が自分の生活をよくしようとして動画を使っている姿でもあります。
その入口が実用的であるほど、その後の情報も受け入れやすくなる場面は考えられます。料理の工夫が役に立った配信者なら、紹介する道具にも関心が向くでしょう。ただし、料理の説明が上手なことと、健康商品の効能を正しく説明できることは別です。親しみが、別分野の専門性まで保証しているように感じられるところに注意点があります。
最初から怪しい情報を探している、と考える必要はありません。日常の困り事や好きなものから入り、どの時点で別の商品や主張へ進んだのかを見ると、家族も話を聞きやすくなります。
テレビからYouTubeへ移った?実態は併用と画面の変化
高齢者の動画利用が広がっても、テレビが消えたわけではありません。総務省調査の平日1日平均では、60代のリアルタイムテレビ視聴は249.3分、ネット利用は140.2分。70代ではそれぞれ313.5分、93.8分です。

出典:総務省・令和7年度調査。日記式調査、非利用者を含む平均。ネットには動画以外も含み、テレビとの同時利用もあるため、二つを足して専有時間とはしません。
さらに、見る「画面」と見る「サービス」も分かれてきました。英国Ofcomによると、55歳以上がテレビ画面でYouTubeを見る時間は、2023年1月の1日約6分から2024年12月の約11分へ増えています。テレビの前に座っていても、放送局の番組を見ているとは限らないのです。Ofcom

注:Ofcomの2025年報告。2023年1月と2024年12月の1日平均、丸め値。日本の年齢別調査とは対象が異なります。
放送は編成された番組の順番に接することが基本ですが、YouTubeでは検索、登録チャンネル、おすすめが次の視聴先をつくります。大画面で見るという慣れた行動のまま、内容が個人の関心に合わせて変わる。この組み合わせが、単純な「若者はネット、高齢者はテレビ」という見方を古くしています。
家族が確認したいのも、端末の名前だけではありません。同じテレビで、どのサービスの、誰の発信を見ているのか。それが分かると、本人がどのような情報の流れに入っているかが見えてきます。
なぜ「もう一本」見るのか――楽しみと次の候補がつながる
動画を続けて見る場面では、本人の関心と、次を選びやすいサービスの仕組みがかみ合っています。一つの動画を見終わるたびに、検索語を考え直す必要はありません。関連する候補が示され、自動再生を使っていれば次の動画へ進みます。

図は一般的な視聴の流れを整理したものです。YouTubeは、視聴履歴や検索履歴、登録、高評価などを推薦に用いる情報として説明しています。ホーム画面と次の動画では主に参照する情報も異なります。YouTube公式・おすすめの仕組み
たとえば園芸の手入れ方法を調べると、同じ植物の育て方や別の庭の紹介へ関心が移ります。一本目で困り事が解決しても、次に知りたいことが生まれるため、本人には続きを見る理由があります。好きな音楽なら、同じ歌手の別の年代や公演へ進むでしょう。
一方、番組が終わったら席を立つ、予定があるから外へ出るといった区切りが少ない日は、止めるきっかけも少なくなります。これは年齢だけの問題ではありません。サービスの便利さと生活の予定が組み合わさった結果として考えると、「意志が弱いから」という説明より具体的です。
本人が時間の長さを気にしているなら、自動再生や通知を見直す、見る前に終わりの予定を決めるなど、楽しみを残しながら区切りをつくる方法があります。すべての視聴を減らすより、続けたかったのか、気づいたら続いていたのかを振り返るほうが、調整する場所を見つけやすそうです。
なぜ内容まで信じる?「知っている感じ」と根拠は別のもの
よく見る情報は、次に見たときに理解しやすくなります。しかし、見覚えがあることと正しいことは同じではありません。繰り返し接した主張を、より正確だと感じやすくなる現象は「真実錯覚効果」などと呼ばれます。
2023年のHarvard Kennedy School Misinformation Review掲載研究は、米国の三つの二時点調査、合計8,730人のニュース評価を分析しました。約2週間前に見た見出しを再び見せると、正確さの評価が高まる傾向があり、特に60歳以上で反復接触の影響が強くなりました。効果の絶対量は小さく、これだけで日常の判断全体を説明する結果ではありません。Lyonsの研究

似た言葉も分けておくと理解しやすくなります。単純接触は、繰り返し接する相手や対象への親しみに関わる考え方。真実錯覚は、繰り返した主張の正確さの評価に関わります。確証バイアスは、自分の考えに合う情報を選んだり重く見たりする傾向です。すべてを「同じ動画を見ると洗脳される」という一本の説明にすることはできません。単純接触の研究、確証バイアスのレビュー
仮に、同じ健康上の主張を三つの動画で見たとします。三人が別々に調べた結果なら情報は増えています。しかし、全員が同じ未確認の話を引用しているなら、見た回数は増えても独立した根拠は増えていません。検索画面に似た結論が並ぶことと、その結論を支える調査が複数あることの違いです。
家族が「また同じ話をしている」と感じるときは、内容を頭から否定するより、「元になった調査はどれだろう」「この人は何を見てそう言っているのだろう」と一緒にたどる方法があります。本人の記憶のよさや悪さではなく、情報の出どころを話題にできます。
会ったことのない配信者が、身近な人になる
毎日同じ声を聞き、近況や失敗談を知り、視聴者への呼びかけを受けると、相手をよく知っているように感じることがあります。こうした、メディア上の人物との一方向の親しみは「パラソーシャル関係」と呼ばれます。
配信者にとって視聴者は大勢いても、見る側の画面には一人の顔が大きく映ります。コメントが読まれたり名前を呼ばれたりすれば、実際のやり取りも加わります。親しみと双方向の交流が重なるため、単に「知らない人の話を見ている」以上の体験になります。

ただし、これを「孤独な人だけが代わりの友人を求める」と説明するのも単純すぎます。2020年のメタ分析は、過去約40年の120研究を整理し、パラソーシャル関係と社会的な不足との有意な関係を確認しませんでした。一方、相手との類似性やメディアへの関与、説得との関連が見られています。Tukachinskyらのメタ分析
現実の友人や家族がいても、好きな配信者ができることはあります。本人にとって、それは趣味の共有や楽しみの一つです。その価値を認めたうえで、「好きな人が言った」と「その説明に根拠がある」を分けることが重要になります。
配信者の人柄が好きなら、紹介した商品も気になる。ここまでは日常の推薦にもあることです。しかし広告なのか、本人の使用経験なのか、専門的な検証なのかが曖昧なまま進むと、親しみが確認の代わりになります。問題は親しみそのものより、何を根拠に次の判断をしているかです。商品評価を読む際の「誰が、何を経験し、どんな基準で評価したか」という見方は、口コミ・レビューの信頼性でも掘り下げています。
視聴から購入・投げ銭へ――若い層のほうが支援経験は多い
動画を見て商品を知ることと、配信者を応援してお金を払うことには、別の動機があります。前者は商品やサービスへの期待、後者は活動の継続を支えたい、反応してもらいたい、参加したいといった関係性に結び付きます。商品理解と発信者への親しみが重なる構図は、インフルエンサーマーケティングの変化にも見られます。
ここで「高齢者が動画に夢中になると支払いへ進む」と一般化する前に、年代別のデータを見ておきたいところです。消費者庁の検討会資料に掲載された調査では、クリエイター等への支援経験は15~19歳で28.6%、20代で21.7%、50歳以上で3.8%でした。

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング、消費者庁掲載資料15頁。資料日2022年12月23日、15歳以上の男女10,958人。過去1年とそれ以前の経験の合計。月額サポート、自由額支払い、投げ銭の3種類を含み、50歳以上は高齢者だけの集計ではありません。
支払いの経験率と、一人の支払額も別です。経験者が少ない年代でも、個別の家計にとって大きな支出は起こり得ます。反対に、少額の会費で好きな活動を応援し、本人が満足している使い方もあります。年齢や利用時間だけから、支払いの危険度を決めることはできません。
家計の背景として、2026年版高齢社会白書は、二人以上の世帯では60代・70歳以上の世帯主を持つ世帯が、他の年齢層より大きな純貯蓄を持つ傾向を示しています。一方、高齢者世帯の平均所得はその他の世帯より低い水準です。蓄えと毎年入るお金は違うため、「資産があるから使っても平気」とは判断しにくいのです。内閣府・所得と資産
具体的には、単発の商品代金、毎月続く会費、その都度金額を決める支援を分けて見ると、何が増えているのかが分かります。本人が支払総額と目的を把握しているか、生活費や大切な予定を圧迫していないか。その確認は、「投げ銭は悪い」という話より現実的です。
海外にも似た呼び方がある?iPad parentsは文脈で意味が変わる
親の画面時間への戸惑いは、日本だけの話ではありません。米国のIntelligencerは2026年10月、画面を見続ける高齢の親をめぐる家族の話を取り上げ、iPad parentsという表現を使っています。孫が祖母をscreenagerと呼ぶ場面も紹介され、画面に夢中な若者というイメージの逆転が見られます。Jessica Lucasによる記事
ただし、海外の言葉を「ドパ親の英語版」として一列に並べると意味がずれます。iPad parentsは、子どもにiPadを使わせる親という別の文脈でも使われます。誰が画面を見ている話なのかを確かめる必要があります。
| 表現 | 注目していること | この話題との関係 |
|---|---|---|
| iPad parents | 親と端末の関係 | 親自身が没頭する意味か、子に渡す意味かを確認 |
| screenager | screenとteenagerを重ねた表現 | 高齢者への使用は世代の逆転を表す比喩 |
| brain rot | 質の低いネット内容への過剰接触への懸念 | 親世代に限定されない俗語 |
Screenagersは、若者とデジタル生活を扱う映画の名称にも使われています。brain rotはOxfordが2024年の「今年の言葉」に選んだ表現で、診断名として使われているわけではありません。Screenagers公式、Oxford
言葉の似かたより興味深いのは、親が子の利用を心配していた構図が、別の国でも反転して語られていることです。端末を使えるようになったことを喜んでいた家族が、今度は利用の仕方を心配する。その変化を表すために、新しい呼び方が生まれています。
海外の家族も悩む、親の自由と心配の境界
前述の米国記事には、母の利用を心配する息子がアプリ削除を提案しても、母は家族の写真を見たいと断った場面があります。画面の向こうに、本人が残したいつながりがあったのです。これは「大人の自由な時間にどこまで口を出してよいか」という問いを浮かび上がらせます。
親が画面を見ているからといって、子がその楽しみを一方的に取り上げてよいわけではありません。しかし、一緒にいるのに会話がない、本人が困る支払いがあるなら、家族も無関係ではいられません。
この違いは、誰の困り事なのかを整理すると見えやすくなります。親は楽しく見ているが子はもっと話したいのか。親自身も時間を使いすぎたと感じているのか。家族が知らない契約や支出が増えているのか。同じ「やめてほしい」でも、話し合う内容が違います。

図は家族の状況を整理するための考え方で、海外調査から効果を算出したものではありません。
仮に、離れて暮らす親が毎晩好きな番組を見ることを楽しみにしているなら、家族の訪問時だけ端末を置く時間を相談する方法があります。本人も見すぎを気にしているなら、一緒に区切り方を考えられます。無断の監視や取り上げを最初の手段にすると、何を見て何に困っているかが、かえって話されなくなるかもしれません。
動画が埋めている時間を空白にするだけでは、別の楽しみは生まれません。外出が難しい人なら、画面以外の活動も本人の体力や関心に合わせる必要があります。「外へ行けば解決」という提案が使えない人もいることまで含めて、生活の選択肢を考えたいところです。
米国でもYouTubeは高齢層へ――使うサービスには違いがある
Pew Research Centerの2026年調査では、米国の65歳以上の65%がYouTubeを使うと回答しています。同じ年代のFacebookは59%、Instagramは21%、TikTokは11%です。高齢層がネットを使うかどうかだけでなく、どのサービスに集まっているかに差があります。

出典:Pew Research Center・Social Media Fact Sheet。2026年1月30日~6月18日、米国成人5,511人の調査。図は65歳以上の利用経験を含む利用回答で、毎日使う割合ではありません。
日本の60代・70代の数値と、そのまま大小を競わせることはできません。年齢の区切りも調査の聞き方も違います。それでも、米国でもYouTubeが高齢層の主要な接点になっている点は共通して読み取れます。英国のテレビ画面での利用増加と合わせると、動画が若者向けの小さな習慣から、世代をまたぐ生活の道具へ広がっている姿が見えます。
ここから得られるのは、「海外でも親は同じように依存している」という結論ではありません。動画への入口が広がっているからこそ、家族との時間、発信者への信頼、支払いをめぐる問題も、特定の国だけの話として片付けにくくなっているということです。
高齢者は誤情報を信じやすい?「共有した」と「信じた」を分ける
よく紹介される研究に、2016年米大統領選時のFacebook上の行動を分析したGuessらの研究があります。65歳を超える利用者は、最も若い層に比べ、偽ニュースと分類されたサイトの記事を平均で約7倍共有していました。一方、こうした記事を共有する行動自体は少数に集中していました。著者による研究紹介
この「7倍」を、「高齢者は7倍だまされる」と読み替えると別の話になります。測定したのは共有数であり、主張を信じた確率でも、商品を買った確率でもありません。
| 研究で見る行動 | 分かること | それだけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 偽ニュースの共有 | どの情報が広がったか | 投稿者がどの程度信じたか |
| 正確さの評価 | 内容をどう判断したか | 実際に共有・購入するか |
| 推薦された動画 | どんな情報へ接するか | 意見が変わったか |
2020年のレビュー論文は、加齢に伴う認知面だけでは誤情報への関与を十分説明できないと論じています。蓄積した知識が判断を助ける側面もあり、情報源の記憶、交流の目的、広告や加工画像への理解など、複数の要因を考える必要があります。Brashier・Schacterのレビュー
たとえば家族に記事を送る行動には、正確なニュースを伝えたい以外にも、心配を共有したい、話すきっかけが欲しいという目的があり得ます。だからこそ、誤りを指摘するだけで同じ行動が止まるとは限りません。内容の確認に加えて、何を伝えたくて送ってくれたのかを聞くと、やり取りの意味を理解しやすくなります。
年齢による違いを調べることには意味があります。ただし、ある場面の集計を、目の前の親の判断力すべての評価に使わないことが重要です。研究を読む側も、何が測られたかを分ける必要があります。
おすすめ動画で考えが偏る?内容の偏りと意見の変化は別
同じテーマの動画が次々に出てくると、「こればかり見ていると考えまで変わるのでは」と心配になります。研究でも、推薦される内容と、それを見た人の意見は別々に調べられています。
2023年のHaroonらの研究は、多数の自動アカウントを用いてYouTubeの推薦を監査しました。もともとの政治的傾向に沿った内容が推薦される傾向や、一部の条件で問題のあるチャンネルへの接触が増えることを報告する一方、推薦をたどるほど内容の極端さが意味のある形で増すという結果は得ていません。PNAS掲載研究
一方、2025年の別研究は、約9,000人を対象とする四つの実験で、YouTubeに似た画面の推薦を変えました。視聴内容や行動が変わっても、短時間の実験で政治的な態度の分極化が一貫して大きく進むという結果は限定的でした。PNAS掲載研究

注:前者は自動アカウントによる推薦の監査、後者は短時間の実験。長年の視聴やすべての題材を同じ条件で検証したものではありません。
この二つを合わせると、「推薦が同じ方向を向く」と「人がその方向へ変わる」の間には、実際に何を選び、どう受け止めたかという段階があると分かります。本人が最初から好きな内容を選ぶことも、推薦が次の選択肢を狭めることも、両方考える必要があります。
家族にとっての確認も、「おすすめは危険」と決めるより、同じ主張ばかりになっていないか、別の説明を見たときにどう考えるか、動画以外の情報源が残っているかという具体的な話になります。見ている本数だけでは、情報の幅は分かりません。
AIの偽専門家・偽著名人が、信頼の手がかりを変える
顔が見える、声を聞いたことがある、専門家のように話している。動画では、こうした手がかりが信頼につながります。しかし生成AIによる偽の顔や声は、その手がかり自体をつくれてしまいます。
英国の広告監督機関ASAは、2025年の詐欺広告対応の振り返りで、著名人などを使ったディープフェイク広告への対応を報告しています。特に同年のディープフェイク動画に関する10件のアラートは、暗号資産に関するものでした。これは警告の件数であり、被害者数ではありません。ASAの報告

日本でも2026年8月、デジタル庁など7府省庁が、大規模プラットフォーム事業者へなりすまし詐欺広告への対策強化を要請しました。著名人の肖像や音声を無断利用したディープフェイク広告も対象に含まれます。デジタル庁
ここで変わるのは、「本人が話している映像があるから確かだ」という確認方法です。顔や声が自然でも、本人の公式な発信と一致するか、販売先や契約先がどこか、主張の根拠があるかを別に見る必要があります。映像の違和感探しだけに頼るより、元の公式サイトや発信へ戻るほうが確認の道筋をつくれます。
この問題は親世代に限りません。広告を受け取る側だけでなく、名前や顔を使われる人、正規の商品や情報を届ける側の信頼にも関わります。動画への親しみが広がるほど、見た目の説得力と発信元の確かさを分けることが、情報環境全体の課題になります。
親の動画利用とどう付き合う?まず何を楽しみ、何が失われたか
家族が最初に知りたいのは、本人にとってその動画が何の役に立っているかです。好きな音楽なのか、生活の工夫なのか、誰かとつながる感覚なのか。楽しみを理解すると、残したいものと変えたいものを分けられます。

たとえば「見る時間を半分にして」と伝える前に、「食事の間は話したい」「夜更かしで朝の予定がつらそう」「この買い物が毎月続くか一緒に確認したい」と、具体的な困り事を伝える方法があります。人格や世代への評価より、変更したい場面が伝わります。
本人も時間の使い方に困っているなら、視聴履歴や利用時間を一緒に振り返り、終わりの時刻や自動再生の扱いを相談できます。情報が心配なら、同じ主張を繰り返す動画を何本も比べるだけでなく、元資料や異なる説明へ戻る。支出なら、単発、月額、自分で額を決める支援を分け、生活に必要なお金との関係を確認する。問題に合わせて入口を変えられます。
深刻な生活上の支障や、本人・家族だけで扱いきれない困り事がある場合は、適切な専門窓口へ相談する選択もあります。ただし「ドパ親」という呼び方から症状を診断することはできません。相談時にも、ラベルより実際に起きた変化を伝えるほうが状況を説明しやすくなります。
情報を届ける側にも、長く見られたことだけでは分からないものがあります。料理を理解できたのか、不安を解消できたのか、納得して商品を選べたのか。視聴時間や反応の数は行動の記録ですが、それだけで満足や信頼の質まで決まりません。親世代の動画利用を考えることは、人がなぜ見続け、何を根拠に次の行動へ進むかを考えることでもあります。
まとめ:見る・信じる・買うの変化を、別々に理解する
「ドパ親」という言葉の背後には、親世代にも動画が広く普及し、楽しみ、情報、親しみ、買い物が同じ画面でつながる変化があります。米国の利用率や英国のテレビ画面でのYouTube視聴を見ると、その変化は日本だけのものでもありません。
一方、調査は単純な高齢者像を支えてはいません。年代によって利用するサービスや時間は違い、クリエイター支援の経験は若い層ほど多い。誤情報の共有、正確さの評価、推薦内容、実際の意見の変化も、違う対象を測っています。
だからこそ、親が長く動画を見ているという一つの観察から、信じ込みや浪費まで一度に決めつけず、生活の中で何が起きているかを分けて見ることが役に立ちます。本人の楽しみを理解し、必要な場面で情報の根拠や支払いを一緒に確認する。画面を取り上げるか放置するかの間に、家族が話せることは残っています。
参考資料
- 総務省「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」本文・図表の利用率、日記式時間。
- 内閣府「令和8年版高齢社会白書」人口、就業、所得・資産。
- ハルメク生きかた上手研究所、2025年シニア女性YouTube視聴調査。
- 消費者庁掲載、三菱UFJリサーチ&コンサルティング「クリエイターエコノミー」2022年12月23日資料。
- Ofcom「Tuning into YouTube: UK’s media habits revealed」、Pew Research Center「Social Media Fact Sheet」。
- ABEMA TIMES、Intelligencerの家族報道。研究結果や全国頻度とは区別。
- Lyons(2023)、Guessら(2019)、Brashier・Schacter(2020)、Tukachinskyら(2020)、Haroonら(2023)、PNAS(2025)の研究。各該当箇所に原資料リンク。
- ASAの2025年詐欺広告対応報告、デジタル庁の2026年合同要請。警告・要請と被害統計を区別。
本記事の文章・表・図解・グラフは、Skill Business Architecture Labが独自に編集・作成しています。引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名・サイト名・記事URLをご記載ください。


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