AWS Certified Security – Specialtyは、AWS上のシステムを守るための専門知識を確認する認定資格です。アクセス権、暗号化、監視、事故対応を、AWSのサービスや設定に結び付けて学びます。
企業が取得を検討するときは、「セキュリティ資格を増やす」よりも、AWSを使う社員がどこまでの設計・運用を担当するのかを先に見ると選びやすくなります。単一サービスの操作から、複数のAWSアカウントをまたぐ権限や監視へ担当が広がる人には、特に内容を照合しやすい資格です。
この記事では、現行のSCS-C03について、試験と費用、学習範囲、経験別の準備、企業での使い道を整理します。制度・料金の確認日は2026年10月29日です。
AWS認定セキュリティは、どこの何を認定する資格か
認定主体は、米国Amazonのクラウド事業であるAWS(Amazon Web Services)です。AWS認定のSpecialtyに位置付けられ、セキュリティという専門領域を扱います。資格内に初級・上級の級別認定があるわけではありません。
現行の試験コードはSCS-C03です。2025年12月2日に提供が始まり、旧版SCS-C02から更新されました。現行版では検出とインシデント対応が別分野になり、生成AI・機械学習に関わるセキュリティも範囲に含まれます。教材を購入する際は試験コードを確認してください。公式資格案内、C02とC03の比較
AWSが公表している2025年1月時点の数字は、AWS認定全体で有効な認定が142万件超、認定保有者が105万人超です。Security – Specialty単独の世界・日本の保有者数は、今回確認した公式資料では確認できませんでした。AWS認定の公表情報
日本で学ぶ意味は、AWSの設定を具体的に判断できる知識にある
対象となる仕事は、クラウドエンジニア、セキュリティエンジニア、AWSの設計・構築を支援する技術者などです。日本の企業でもAWSを使う担当者であれば、学ぶサービスや権限の仕組みを業務と結び付けられます。
例えば「顧客データを担当部署にだけ使わせたい」という要求を、誰がどの権限を引き受けるか、どのデータを読み書きできるか、暗号鍵の利用を誰に許すかへ落とし込む仕事です。認定が扱うのは、このような要求をAWS上で実現するための知識です。
セキュリティ資格同士でも対象は異なります。製品を横断して安全なIT運用を学ぶSSCPや、攻撃の手口を理解して調査・対応するGCIHに対し、AWS認定セキュリティはAWSのサービス選択や設定に踏み込みます。自社の主なクラウドが何か、担当するのが構築・運用か事故調査かによって、優先する学習は変わります。
試験の難易度・受験条件・日本語対応
170分・65問。サービス名だけでなく、条件に合う構成を選ぶ
| 項目 | 現行SCS-C03の内容 |
|---|---|
| 試験時間・問題数 | 170分・65問 |
| 問題形式 | 択一選択、複数選択、並べ替え、内容一致のうち1つ以上 |
| 採点 | 50問が採点対象、15問が採点対象外 |
| 合格基準 | 100~1,000の換算スコアで750。試験全体で判定 |
| 受験方法 | Pearson VUEのテストセンター、またはオンライン監督付き試験 |
| 他のAWS認定 | 受験の必須条件ではない |
| 不合格後の再受験 | 14日間待って再受験。受験料は再度必要 |
試験ガイドが想定するのは、クラウド環境の保護について3~5年相当の経験がある人です。一方、資格紹介ページのFAQには、ITセキュリティ5年とAWSワークロードの保護2年以上という目安も残っています。これらは想定する経験の説明で、勤務年数の証明を提出する認定制度ではありません。
難しさは、知っているサービスが問題に出るかだけでは決まりません。同じ機能でも、利用するアカウントや地域が異なる場合、運用負担を抑えたい場合など、条件を踏まえた選択が求められます。学習の出発点として、IAMによる権限管理、ネットワーク、ログ、暗号化をAWSで扱った経験があると理解を進めやすくなります。
合格率と一律の標準学習時間は、今回確認した公式案内では確認できませんでした。準備時間は、後述する取得者の前提知識と合わせて判断するのが実用的です。
試験・教材・監督の言語を分けて確認する
| 区分 | 日本語対応と確認点 |
|---|---|
| 試験 | 日本語で受験可能。英語、韓国語なども提供 |
| 公式の学習資料 | 日本語の試験ガイドやAWSドキュメントあり。講座・演習は個々の教材で提供言語を確認 |
| オンライン試験の監督 | 日本語の監督対応は月~土の9~16時(日本時間)と案内。予約枠を確認 |
| 予約・手続き | 日本語の受験案内あり。本人確認書類や受験環境は予約時の案内に従う |
試験は簡体字中国語、ポルトガル語(ブラジル)、スペイン語(ラテンアメリカ)でも提供されていますが、この3言語は2026年12月31日に終了予定です。日本語はその終了対象に含まれていません。試験言語、受験方法・監督言語
何をどこまで学ぶのか――6分野を仕事に置き換える
試験範囲は、対策の導入から異常の検出、事故対応、複数環境の統制までを含みます。下表は現行ガイドの内容を、担当者が扱う作業に置き換えたものです。
| 分野・配点比率 | 学ぶ対象と、仕事で確認すること |
|---|---|
| 検出:16% | CloudTrailなどの操作ログを集め、必要な記録が欠けていないか、異常を見つけられるかを確認する |
| インシデント対応:14% | 調査に必要な権限やログを準備し、影響範囲の確認、封じ込め、復旧の手順を整える |
| インフラストラクチャのセキュリティ:18% | ネットワーク、サーバー、コンテナなどを保護し、脆弱性や不適切な通信に対応する |
| IAM:20% | 人やシステムの身元と操作権限を管理する。ロール、一時的な認証情報、最小限の権限を使い分ける |
| データ保護:18% | 保存・通信時の暗号化、鍵やシークレットの管理、保存期間、バックアップを扱う |
| セキュリティ基盤とガバナンス:14% | Organizationsなどを用い、複数のAWSアカウントへ共通ルールを適用・点検する |
出典:検出、事故対応、インフラ、IAM、データ保護、ガバナンス
公式演習で見る「権限を付ける」の中身
学習する内容の深さは、AWSが公開する「ロールを使用したAWSアカウント間でのアクセス権限の委任」というチュートリアルからも分かります。これは実際の試験問題ではなく、設定して確かめるための公式教材です。
題材は、別のAWSアカウントにあるS3のデータへ、開発者がアクセスする構成です。ここでいうAWSアカウントは、環境や課金を分ける単位で、社員一人ひとりのログイン名とは異なります。
演習では、データを置く側でロールを作り、二つの内容を設定します。一つは「誰がこのロールを引き受けられるか」という信頼関係、もう一つは「引き受けた人がS3で何をできるか」という操作権限です。利用者側にもロールを引き受ける許可を設定し、最後に実際に切り替えてアクセスを試します。
この手順を理解すると、アクセスできない原因を「権限不足」で終わらせず、ロールを引き受ける段階なのか、引き受けた後の操作なのかに分けて確認できます。AWS公式チュートリアル

暗号化されたデータでは、暗号鍵の利用権限も関係します。AWS KMSの別アカウント利用では、鍵を持つ側のキーポリシーと、利用者側のIAMポリシーの両方で許可が必要です。データへのアクセスと鍵の利用を分けて理解することが、IAMとデータ保護を併せて学ぶ意味になります。AWS KMSのアカウント間アクセス
監視の導入後に、調査へ使える状態まで考える
検出分野では、ログを集めるサービスの選択に加え、複数のアカウントからの収集や、記録が不足している原因の調査も扱います。事故対応分野では、対応手順書や調査権限を準備し、手順を試すことまでが範囲です。
したがって、学習後に仕事へ戻す対象は、サービスの導入候補だけではありません。「どの環境の、どの記録を、誰が調査できるか」というログ収集・閲覧の設計や、封じ込めと復旧の手順書も対象になります。
一方、暗号アルゴリズムそのものの設計や、パケット単位の通信解析は、現行ガイドで試験対象外とされています。企業が求める専門業務と、認定が確認する範囲を合わせて見ることが大切です。
勉強時間はどれくらいか――経験者の30~50時間をどう読むか
取得者の前提知識と試験の版をそろえて見る
| 公開体験記 | 取得前の状況 | 本人が記した学習時間・期間 |
|---|---|---|
| Qiita、2026年5月9日公開、SCS-C03 | AWSプリセールスを2年経験。SAA、SAPなど複数のAWS認定を取得済み | 約30~40時間。暦では3か月、途中に約3週間の中断あり |
| エーピーコミュニケーションズ技術ブログ、2025年4月4日公開、旧SCS-C02 | クラウド事業部所属。SAA、SOA、SAP、ANSを取得済み | 約40~50時間、約2か月 |
現行C03の体験者は、仕事と既存資格の学習で基礎を理解していると考えて問題演習から始めました。それでも規格・基準に関する用語で苦戦し、知らない言葉を調べて整理。KMSなど理解が不十分なサービスは、AWSの解説動画で補っています。本人は、分かっていたつもりのサービスへの理解が深まったと振り返っています。SCS-C03の本人談
旧C02の体験者も、未使用のサービスを公式ドキュメントで確認し、公式講座や練習問題で苦手分野を洗い出しています。既にAWSの上位資格があっても、普段の案件で使わない機能まで把握しているとは限らないことが分かります。旧C02の本人談
どちらもAWSの基礎を身に付けた人の記録です。初学者の標準時間としてではなく、既存知識を補う場合の参考にできます。
社員の経験によって、学習の始点を変える
AWSを日常的に使い、IAMやネットワークを説明できる人は、現行試験ガイドと公式の問題セットで未経験領域を洗い出すところから始められます。本人談のように、暗号鍵、複数アカウント、監視・統制などの不足へ時間を振り分けます。
ITセキュリティの経験はあってもAWSをほとんど使っていない人は、AWSの責任共有モデル、ネットワーク、ストレージ、権限管理を実際に触る準備が必要です。クラウドの基礎から学ぶ人なら、Solutions Architect – Associate相当の構成知識を先に学ぶ方法もあります。その資格自体を先に取得する義務はありません。
公式の準備案内は、問題セットでの確認、知識の補強、演習、模擬試験という流れです。Skill Builderや日本語ドキュメントを使い、読む学習と設定を試す学習を組み合わせられます。講座の受講は受験の必須条件ではありません。公式の試験準備案内
取得・維持にかかる費用と更新方法
受験料は40,000円。教材・講座は別に選ぶ
| 費用 | 確認した公式料金と条件 |
|---|---|
| Specialty試験1回 | 日本円価格40,000円。適用される税は別途加算。米ドルの基準価格は300ドル |
| 公式ドキュメントなど | 無料で利用できる学習資料あり |
| AWS Skill Builder個人月額 | 29米ドル。利用は任意 |
| AWS Skill Builder個人年額 | 449米ドル。Digital Classroomなど月額版と提供範囲が異なる |
| 書籍・外部講座 | 選ぶ教材・講座により別途必要 |
出典:公式の受験料金、Skill Builderの料金・提供内容
Skill Builderの有料契約は解約まで自動更新されます。試験料と学習サービスの契約を分けて予算化してください。トレーニングFAQ
有効期間は3年。再受験とSkill Builderで延長期間が異なる
AWS認定の有効期間は3年です。Security – Specialtyの現行案内には、次の二つの方法が掲載されています。
| 方法 | 条件と延長期間 |
|---|---|
| 最新版の同じ試験に合格する | 有効な認定を更新。試験完了日から3年。有資格者向けの50%割引バウチャーを利用可能 |
| Skill Builderで認定維持の活動を完了する(Beta提供) | 有効期限まで90日以内の認定と、有効な月額・年額・チーム契約が必要。活動完了日から1年 |
Skill Builderによる方法は、有料契約に入るだけで延長されるものではなく、対象の維持活動を完了する必要があります。社員の更新計画は、認定管理画面で利用できる活動と期限を確認して組みます。公式の更新・維持案内
企業は誰の育成に使い、取得後に何を確かめるか
優先しやすいのは、既にAWSを使い、担当をセキュリティ設計や複数環境の管理へ広げる人です。学習前に担当範囲を決めると、受験勉強で終わらせず仕事へ戻しやすくなります。
例えば、権限設計を担当するなら、ロールの信頼関係と操作権限を整理した設計書やアクセス確認結果を見ます。監視を担当するなら、ログの収集対象と不足、閲覧できる担当者を整理した一覧を見ます。運用責任を持つなら、事故対応の手順書を実際に試した結果まで確認します。これらは、学習範囲を担当業務へつなぐ成果物の例です。
採用では、認定をAWSのセキュリティ知識を確認した情報として使い、実際に扱ったアカウント構成、設計・変更・調査の担当範囲を併せて聞くと判断しやすくなります。試験合格と、自社環境で安全に変更・運用できることは、別に確認する項目です。
経営者やマーケティング責任者が、自分で受験する必要は必ずしもありません。顧客データ基盤やWebサービスをAWSで動かしているなら、「データを使う権限」「暗号鍵を使う権限」「問題発生時の調査権限」が誰の設計責任かを、技術担当者と確認するために資格の範囲を理解する使い方があります。
まとめ:AWS上の保護を、サービスと設定の関係まで学ぶ資格
AWS認定セキュリティは、AWSのアクセス権、データ保護、監視・事故対応、組織全体の統制を学ぶ専門資格です。現行SCS-C03では、複数のサービスやアカウントをまたぐ条件も踏まえて知識を整理します。
取得を検討するときは、社員のAWS経験と担当予定を、6分野の内容に照らしてください。普段扱わない領域を補う学習に時間を使い、受験料だけでなく更新方法まで含めて計画すると、自社に必要な育成かを判断できます。
参考資料
- 公式資格案内
- C02とC03の比較
- AWS認定の公表情報
- 現行試験ガイド
- AWS認定FAQ
- 受験方法・監督言語
- 検出
- 事故対応
- インフラ
- IAM
- データ保護
- ガバナンス
- AWS公式チュートリアル
- AWS KMSのアカウント間アクセス
- SCS-C03の本人談
- 旧C02の本人談
- 公式の受験料金
- Skill Builderの料金・提供内容
- トレーニングFAQ
- 公式の更新・維持案内
本記事の文章・表・図解・グラフは、Skill Business Architecture Labが独自に編集・作成しています。引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名・サイト名・記事URLをご記載ください。


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