取引先からセキュリティ対策を聞かれても、「ウイルス対策ソフトは入れている。それ以外に何が必要なのか」と迷う。SCS評価制度への対応を始めようとしても、要求事項を読むだけで担当者の手が止まってしまう。そうした企業を支えるために用意されたのが、サイバーセキュリティお助け隊サービスの「新類型」です。
従来の監視や事故対応に加え、対策の不足を診断し、社内ルールの整備や教育、SCSの★取得に向けた申請まで伴走する仕組みです。IPAは2026年9月に実証事業の参加案内を公開しました。
この記事では、何を支援してもらえるのか、何が自社の仕事として残るのか、無料実証へ参加する前に何を確認するかを整理します。
お助け隊サービスの新類型とは?SCS対応をまとめて支援する仕組み
サイバーセキュリティお助け隊サービスは、専門担当者の確保が難しい中小企業でも、外部の支援を利用してセキュリティ対策に取り組めるようにする制度です。
新類型が目指すのは、SCS評価制度の★3・★4に向けた対応を、診断、対策の実施、申請支援までつなぐことです。SCSとは、企業のセキュリティ対策状況を共通の基準で評価し、取引先にも伝えやすくするための制度です。
例えば、機器の設定だけでなく、事故時の連絡先、従業員への教育、社内規程などが整っているかも確認します。「製品を買えば終わる」対策と、「会社の仕事として決めて続ける」対策をまとめて支援するのが新類型の特徴です。
現在は正式な新類型の制度化に向けた実証段階です。 SCS評価制度は2026年度末頃の運用開始予定、新類型の制度化は2027年度末までが目標とされており、この二つの時期は異なります。
SCS自体の目的や企業の備えは、セキュリティ対策評価制度を中小企業向けに解説した記事で確認できます。
従来のお助け隊サービスと、何が違う?
| 比較する点 | 従来のお助け隊サービス | 新類型の実証 |
|---|---|---|
| 中心となる支援 | ネットワークや端末の監視、相談、事故時の対応など | SCSの要求に対する不足を見つけ、対策と申請まで支援 |
| 確認する範囲 | サービスで守る機器や、事故への備え | IT対策に加え、規程・教育・対応手順など組織の運用 |
| 利用を考える場面 | 攻撃への備えや、困ったときの相談先を確保したい | SCSへの対応を進めたいが、何が足りず、どう直すか分からない |
例えば、ネットワークを監視するサービスに入っていても、「不審な動きを見つけた後、誰が業務停止を判断するか」は社内で決める必要があります。新類型では、こうした機器だけでは埋まらない部分も支援の対象になります。
従来サービスを利用している会社も、まず既存契約で対応できていることを確認すると、追加で頼む仕事を絞れます。サービスを二重に契約すること自体が目的ではありません。
何を任せられる?診断・対策・申請の3段階で考える
IPAは実証の支援を三つの段階で整理しています。ここでは、それぞれの段階で自社が関わる仕事も併せて示します。

1.現状を診断して、足りない対策を整理する
最初に、SCSの要求事項と自社の対策を照合し、未対応の部分を改善計画へ落とし込みます。
この段階で自社が用意したいのは、使っている端末・クラウド・ネットワークの情報、現在の対策や契約、社内ルールなどです。完璧な台帳がない場合も、どこまで把握できているかを伝えれば、調べるべき範囲を相談できます。
例えば「共有フォルダーに顧客情報があるが、誰が権限を変更しているか分からない」。この状態を把握できれば、製品選定より先に、管理者と利用者を確認する仕事が見えてきます。
2.IT対策と、社内で続けるルールを整える
診断結果に基づき、必要な機器・ソフトの導入や、規程・手順書・教育などを進めます。
外部の専門家に文書のひな形や設定作業を頼めても、自社の業務で守れるルールにする判断は、経営者や部門の担当者が引き受けます。 例えば、退職者のアカウントを止める手順なら、人事から誰へ連絡し、いつまでに誰が停止するかを決めなければ運用できません。
事故対応も同じです。立派な手順書より、社員が最初に何をし、誰へ連絡するかが共有されていることが重要です。中小企業のインシデント対応手順では、この分担を具体的に説明しています。
3.要求事項の充足を確認し、申請を支援する
対策が整ったら、専門家による確認・評価や、申請書類の作成支援へ進みます。支援を契約した事実と、要求を満たして評価を得ることは別です。
申請時には、作った規程だけでなく、実際にどのように管理しているかを説明できる状態を目指します。担当者が変わっても続けられるよう、運用の担当、記録の置き場所、見直しの時期も社内に残します。
無料実証の費用・期間・参加条件
| 確認する項目 | IPAの参加案内の内容 |
|---|---|
| 実証への参加費 | 無償。実証参加に関する費用は請求しないと案内 |
| 実証期間 | 2026年10月~2027年9月の1年間を予定。サービス内容・期間は事業者ごとに異なる |
| 実証後 | サービスを継続する場合は有償。事業者から別途案内 |
| 参加対象 | IPAが示す中小企業等の定義と、各事業者の参加条件に合う企業 |
| 協力すること | 制度づくりへの意見提出や、セキュリティ対策に関する情報提供など |
| 申込先 | 採択された15事業者のうち、希望する事業者へ直接連絡 |
「無料だから、とりあえず入る」よりも、実証後に何を引き継げるかまで見て選ぶほうが有効です。例えば、導入したツールの継続費用、作成した文書の利用、記録の取り出し、支援が終わった後の相談先です。
情報提供には、不審な通信を検知した際の関連情報も含まれます。自社がどの情報を、誰に、どの方法で提供するかを、参加時の説明で確認してください。
実証への参加方法|15事業者からどう選ぶ?
対応する★・地域・業種から候補を絞る
まずIPAの一覧で、目標とする★への対応、対象地域、業種、支援内容を確認します。★3を中心にする事業者も、★4を一部対象とする事業者もあり、全社が同じサービスではありません。
候補が決まったら、その事業者へ実証参加を希望する旨を直接伝えます。条件が合わない場合や募集枠が埋まっている場合は参加できず、複数事業者への重複参加もできません。
最新の事業者一覧と窓口は、末尾のIPA「実証事業」ページにまとめられています。
自社が困っている仕事を伝えて、支援範囲を確かめる
比較するときは、製品名の数より、自社に残る作業が何かを確認します。次のように聞くと、支援の違いを把握しやすくなります。
| 自社の困り事 | 相談時に確かめたい内容 |
|---|---|
| 専門担当者がいない | 社内窓口にはどの程度の知識・作業時間が必要か。会議や訪問の頻度はどうか |
| 社内規程はあるが、実態と合っていない | ひな形の提供だけか、現行業務を聞いて修正するところまで含むか |
| 既に監視やウイルス対策を契約している | 既存サービスを生かせるか。切替が必要なら何が変わるか |
| 取引先に対策状況を説明したい | どの記録や資料を整え、誰が更新していくか |
| 実証後も少人数で続けたい | 継続料金と、支援終了時の引き継ぎ内容はどうか |
ここに挙げたのは、サービス選定に使う当サイトの確認例です。全てが一律に提供されるという意味ではありません。
お助け隊サービスの新類型についてよくある質問
利用すればSCS★3・★4を必ず取得できますか?
取得を支援するサービスであり、契約だけで評価が決まるものではありません。対象となる要求への対応状況を確認し、不足する対策を実施する必要があります。目指す★が事業者の支援対象かも確認します。
IT担当者がいなくても相談できますか?
人的資源が限られる中小企業の支援を意図した実証です。ただし、現状を伝え、社内のルールや担当を決める窓口は必要です。専門知識よりも、社内の関係者に確認を取れる人を置くと相談を進めやすくなります。
自社の委託先にも同じサービスを使ってもらう必要がありますか?
自社が新類型を利用することと、委託先へ同じサービスの利用を求めることは別です。まず委託する業務と情報を整理し、必要な管理を契約や運用で確認します。具体的には、委託先のセキュリティ管理とSCS★3への対応を参照してください。
支援を使って、社内で続けられる対策を作る
新類型は、「何をすればよいか分からない」と「分かっても実行できない」の間をつなぐ支援です。専門家の力を借りられることは、兼任担当者にとって大きな助けになります。
参加を考えるなら、現在の対策、困っている作業、目指す状態を簡単に整理して、対象の事業者へ相談しましょう。診断や文書作成を受けるだけでなく、実証が終わった後に自社の誰が何を続けるかまで決められれば、支援が会社の実力として残ります。
参考資料
- IPA:サイバーセキュリティお助け隊サービス(新類型)実証事業 — 2026年9月18日公開。参加条件、期間、15事業者の一覧・連絡先。
- IPA:お助け隊サービス(新類型)実証説明資料 — 実証の狙い、サービスの流れ。
支援と自社の役割を示す図、相談時の確認例は当サイトが作成しています。アイキャッチはAIで生成しています。
本記事の文章・表・図解・グラフは、Skill Business Architecture Labが独自に編集・作成しています。引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名・サイト名・記事URLをご記載ください。


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