試験に合格したのに、登録しない。
登録したのに、更新しない。
情報処理安全確保支援士の維持費は、IPAの実践講習A・B・Cを選ぶ場合、3年間で14万円です。
内訳は、毎年受講するオンライン講習が2万円×3回、3年に1回の実践講習が8万円です。受験料や初回登録費用とは別に必要になるため、「合格後も費用がかかるのか」と負担を感じる人がいるのは不思議ではありません。
一方、2026年4月から始まった、いわゆる「みなし受講制度」で実務経験が認定されると、実践講習を受けず、オンライン講習だけで更新できます。申請手数料を含めた3年間の基本費用は6万3,500円です。
本記事では、分かりやすさを優先して「みなし受講制度」と呼びます。IPAの正式名称は「実務経験者に対する講習制度」です。
制度変更によって負担を抑えられる人は増えました。しかし、維持費の問題は金額だけでは解決しません。
会社の業務で資格を活用しているのに、更新費用は個人が毎年稟議を申請する。資格取得時の一時金はあるのに、取得後の維持支援はない。このような制度の分断が、登録や更新を難しくしている場合があります。
情報処理安全確保支援士の維持費は、単に「高いか安いか」ではなく、取得後に誰が資格を活用し、誰が費用を負担するのかまで含めて判断する必要があります。
この記事でわかること
- 情報処理安全確保支援士の3年間の維持費
- みなし受講制度を利用した場合の費用
- みなし受講制度の対象になるための条件
- 維持費が高いと感じられる組織上の理由
- 会社が維持費を負担するか判断する基準
情報処理安全確保支援士の維持費はいくらか
通常は3年間で14万円
情報処理安全確保支援士として登録を維持するには、オンライン講習と実践講習を受講する必要があります。
IPAの実践講習A・B・Cを選ぶ場合の費用は次のとおりです。
| 費用項目 | 金額 | 頻度 |
|---|---|---|
| オンライン講習 | 2万円 | 1年に1回 |
| オンライン講習3回分 | 6万円 | 3年間 |
| IPAの実践講習A・B・C | 8万円 | 3年に1回 |
| 3年間の合計 | 14万円 | 3年間 |
オンライン講習とIPAの実践講習受講料は非課税です。
実践講習は、IPAの実践講習A・B・C以外にも、IPAが実施する別の講習や民間事業者等が行う講習から選べます。講習によって受講料が異なるため、「すべての登録者が必ず14万円」とは限りません。
ただし、IPAの実践講習A・B・Cを選ぶ場合の基本的な費用として、3年間14万円は一つの判断基準になります。
講習の種類と現在の受講料は、IPAの講習案内で確認できます。
初回登録費用は維持費と分けて考える
試験合格後、情報処理安全確保支援士として登録する際には、初回のみ次の費用がかかります。
| 費用項目 | 金額 |
|---|---|
| 登録免許税 | 9,000円 |
| 登録手数料 | 10,700円 |
| 初回登録費用の合計 | 1万9,700円 |
これは、登録後に継続して発生する維持費とは別です。
費用を比較するときは、次の3つを分けて考えると分かりやすくなります。
- 試験を受けるための費用
- 合格後に初めて登録するための費用
- 登録後に資格を維持するための費用
「取得費用」と「維持費」をまとめてしまうと、会社がどこまで支援するのか決めにくくなります。
登録更新の申請自体に費用はかからない
情報処理安全確保支援士の登録は3年ごとに更新します。
更新するためには、所定の講習を修了したうえで、期限までに更新申請を行う必要があります。通常の登録更新申請自体には費用はかかりません。
つまり、3年間14万円という金額は、主に講習の受講費用です。
更新申請の手数料と講習費用を混同しないようにしましょう。
みなし受講制度を使うと維持費はいくら安くなるか
みなし受講制度なら3年間で6万3,500円
2026年4月から、所定の実務経験が認定された登録者は、3年に1回の実践講習を受けず、オンライン講習のみで更新できる制度が始まりました。
本記事では、この仕組みを「みなし受講制度」と呼びます。
みなし受講制度で認定された場合の基本費用は次のとおりです。
| 費用項目 | 金額 | 頻度 |
|---|---|---|
| オンライン講習 | 2万円 | 1年に1回 |
| オンライン講習3回分 | 6万円 | 3年間 |
| 実務経験の認定申請手数料 | 3,500円 | 申請1回 |
| 3年間の合計 | 6万3,500円 | 3年間 |
IPAの実践講習A・B・Cを受講する場合の14万円と比べると、基本費用は7万6,500円低くなります。
| 更新方法 | 3年間の基本費用 |
|---|---|
| IPAの実践講習A・B・Cを受講 | 14万円 |
| みなし受講制度で認定 | 6万3,500円 |
| 差額 | 7万6,500円 |
実務に継続して携わっている登録者にとって、「維持費は3年間で必ず14万円」という前提は変わっています。
実務経験があれば自動的に適用されるわけではない
みなし受講制度は、実務経験がある人に自動適用される制度ではありません。
対象になるためには、所定の期間に申請し、実務経験についてIPAの認定を受ける必要があります。
主な流れは次のとおりです。
- 対象となる実務を経験する
- 上長や顧客等に実務経験を証明してもらう
- 所定の申請期間内に申請する
- 申請手数料3,500円を支払う
- IPAの審査を受ける
- 認定後、別途、登録更新を申請する
申請しただけで実践講習が不要になるわけではありません。
審査期間内に認定されなかった場合は、更新申請期限までに実践講習を受講する必要があります。
対象になる実務経験
対象になる実務は、大きく次の3種類です。
- サイバーセキュリティに関係する実務
- 中小企業へのセキュリティ支援
- IPAまたは民間事業者等が行う実践講習の講師
サイバーセキュリティに関係する実務では、担当業務の内容によって必要な期間が異なります。
| 実務の位置づけ | 必要な従事期間の目安 |
|---|---|
| セキュリティ経営、監査、統括、脆弱性診断、監視・運用など | 6か月以上 |
| デジタル経営、システム戦略、開発、運用等にセキュリティが含まれる場合 | 1年以上 |
法人に所属して担当した業務は、原則として企業内の上長による証明が必要です。個人として受託した業務は、顧客による証明が必要になります。
詳しい対象業務、申請時期、証明方法は、IPAの実務経験者向け制度案内で確認してください。
みなし受講制度を会社任せにしない
会社の業務としてセキュリティ実務を担当していても、本人が自動的に制度対象になるわけではありません。
本人と会社は、次の点を早めに確認する必要があります。
- 担当業務が対象実務に該当するか
- 必要な従事期間を満たしているか
- 誰に証明を依頼するか
- 申請受付期間はいつか
- 証明に必要な業務記録が残っているか
- 認定されなかった場合に、実践講習を受けられるか
会社が維持費を負担する場合は、申請費用だけでなく、証明書作成や上長確認の手続きも支援対象に含めると運用しやすくなります。
維持費が高いと感じられる理由
受験料より合格後の負担が大きく見える
情報処理安全確保支援士試験は、試験に合格しただけでは登録セキスペを名乗れません。
登録後も講習と更新が必要です。
受験前に維持費まで確認していなかった場合、合格後に3年間14万円という費用を知り、「思っていたより高い」と感じることがあります。
一方、みなし受講制度の対象になれば、3年間の基本費用は6万3,500円になります。
取得前には、試験の難易度や受験料だけでなく、自分がどちらの更新方法を利用できそうかまで確認しておくと、登録後の判断がしやすくなります。
個人が毎年稟議を申請する仕組みになっている
維持費の負担が大きくなる原因は、金額だけではありません。
会社の業務で資格を活用していても、講習のたびに本人が個別に稟議を申請する運用になっていることがあります。
たとえば、次のような状態です。
- 資格取得時の報奨金はあるが、更新費用は対象外
- 維持費を人事と情報システム部門のどちらが負担するか決まっていない
- オンライン講習と実践講習で申請先が異なる
- 更新のたびに、資格の必要性を最初から説明しなければならない
- 会社負担が認められるか、申請するまで分からない
この状態では、本人が毎回「自費で払うか、更新を諦めるか」を判断することになります。
問題は、14万円という金額だけではなく、会社として資格を維持する方針が決まっていないことです。
資格取得支援と資格維持支援が分かれている
多くの資格支援制度は、合格時の受験料補助や報奨金を中心に設計されています。
しかし、情報処理安全確保支援士は、登録後にも講習費用が発生します。
取得と維持を同じ制度の中で考えていない会社では、合格までは支援されても、その後は個人負担になります。
資格補助制度の設計方法でも整理していますが、制度を作るときは次の費用を分けて決める必要があります。
- 受験料
- 初回登録費用
- オンライン講習
- 実践講習
- みなし受講制度の申請手数料
- 学習・受講に使う時間
- 更新できなかった場合の再登録費用
「合格したら支援終了」という制度では、継続的な専門人材の育成にはつながりません。
資格をどう活用するか決まっていない
会社が維持費を高いと感じる背景には、取得者へ何を任せるか決まっていないこともあります。
資格を維持していても、取得者がセキュリティに関係する業務へ参加していなければ、会社は費用対効果を判断できません。
資格保有者には、たとえば次のような役割が考えられます。
- セキュリティ規程や手順の見直し
- IT資産やリスクの整理
- インシデント対応体制の整備
- 委託先のセキュリティ確認
- 社内教育への助言
- 経営層へのセキュリティ課題の説明
- 外部専門家やベンダーとの連携
資格を維持するだけで、これらの業務が自動的にできるわけではありません。
会社としては、維持費を負担する前に、取得者の知識をどの業務へ接続するかを決める必要があります。
会社が維持費を負担するべきか
会社負担が妥当なケース
次のような場合は、会社が維持費を負担する合理性があります。
- 会社が取得を推奨または指示した
- 現在の担当業務で資格の知識を利用している
- セキュリティ規程、監査、教育、インシデント対応等を担当している
- 顧客や取引先への説明で資格を利用している
- 今後、セキュリティ責任者や専門担当者として育成する
- 資格保有者を人材配置や提案体制に組み込んでいる
この場合、維持費を個人の自己研鑽費として扱うより、業務に必要な教育・人材維持費として扱う方が自然です。
IPAでは、オンライン講習と実践講習A・B・Cについて、法人名義で支払う方法も案内しています。IPA「講習受講料の企業単位での申込み・支払い」
個人負担も選択肢になるケース
すべての登録者について、会社が一律に費用を負担する必要はありません。
次のような場合は、個人負担または一部負担も選択肢になります。
- 現在の業務と資格の関係が薄い
- 本人の転職や独立を目的として維持する
- 会社が取得を求めていない
- 取得後の活用計画がない
- ほかの資格や研修を優先する合理的な理由がある
重要なのは、会社負担か個人負担かを更新のたびに場当たり的に決めないことです。
あらかじめ支援基準を決め、本人と会社の双方が確認できる状態にします。
会社負担を判断するチェック表
| 確認項目 | はいの場合 | いいえの場合 |
|---|---|---|
| 会社が取得を推奨・指示した | 会社負担を基本にする | 本人の取得目的を確認する |
| 現在の業務で資格知識を使っている | 維持支援の対象にする | 今後の活用予定を確認する |
| 取得後に担当する役割が決まっている | 継続支援を検討する | 役割設計を先に行う |
| 顧客・取引先への説明に利用している | 事業上の必要性を評価する | 社内での活用価値を確認する |
| みなし受講制度の対象になり得る | 申請支援を検討する | 実践講習の費用を計画する |
| 更新後の活用状況を確認できる | 次回更新の判断材料にする | 評価方法を決める |
一つでも「いいえ」があれば支援しない、という表ではありません。
会社と本人が、何のために資格を維持するのかを話し合うための確認表です。
更新しない場合はどうなるか
登録更新申請を行わなかった場合、更新期限の翌日付で登録セキスペの資格は失効します。
ただし、情報処理安全確保支援士試験の合格まで無効になるわけではありません。
失効後は「情報処理安全確保支援士」や「登録セキスペ」という名称を使えなくなりますが、試験合格者であることは変わりません。
将来、再び登録する場合は、その時点の登録手続きや講習要件を確認する必要があります。
「今後も登録資格が必要か」と「試験合格をキャリア上どう扱うか」は、分けて判断できます。
情報処理安全確保支援士を登録・維持する意味については、情報処理安全確保支援士は意味ない?でも詳しく整理しています。
ほかの資格と比較して考えたい場合は、セキュリティ資格は必要かも参考にしてください。
まとめ|維持費ではなく活用方針から判断する
情報処理安全確保支援士の維持費は、IPAの実践講習A・B・Cを選ぶ場合、3年間で14万円です。
みなし受講制度で実務経験が認定された場合は、オンライン講習3回分と申請手数料を合わせた6万3,500円が基本費用になります。
制度変更によって費用を抑えられる人は増えました。
しかし、維持費の問題を解決するには、金額を下げるだけでは不十分です。
会社の業務で資格を活用するのに、更新費用は個人負担。取得支援制度はあるのに、維持支援制度はない。更新のたびに、本人が資格の必要性を最初から説明する。
このような状態では、費用が6万3,500円になっても、登録者が更新をためらう可能性があります。
会社が確認すべきなのは、「14万円は高いか」だけではありません。
- 取得者に何を任せるのか
- その役割は会社に必要か
- 取得後に資格を活用できているか
- 会社と本人のどちらが費用を負担するのか
- みなし受講制度の申請を会社が支援するのか
これらを方針として決める必要があります。
情報処理安全確保支援士の維持費は、資格を持つ個人だけの問題ではありません。
専門人材をどのように育成し、活用し、維持するのかという、組織の人材設計の問題です。
FAQ
情報処理安全確保支援士の維持費は3年間でいくらですか?
IPAの実践講習A・B・Cを選ぶ場合、オンライン講習3回分の6万円と実践講習8万円を合わせて、3年間で14万円です。民間事業者等の実践講習を選ぶ場合は、講習によって受講料が異なります。
みなし受講制度を利用すると維持費はいくらになりますか?
実務経験が認定された場合、オンライン講習3回分の6万円と申請手数料3,500円を合わせて、3年間の基本費用は6万3,500円です。
実務経験があれば実践講習は自動的に免除されますか?
自動的には適用されません。対象となる実務経験について上長や顧客等の証明を受け、所定期間内に申請し、IPAの認定を受ける必要があります。
登録更新に手数料はかかりますか?
通常の登録更新申請自体には費用はかかりません。ただし、オンライン講習や実践講習の受講料は必要です。また、みなし受講制度を利用する場合は、実務経験の認定申請手数料として3,500円かかります。
更新しないと試験合格も無効になりますか?
登録を更新しなくても、情報処理安全確保支援士試験の合格まで無効になるわけではありません。ただし、登録資格が失効すると、「情報処理安全確保支援士」「登録セキスペ」という名称は使用できなくなります。
講習費用を会社から支払うことはできますか?
IPAのオンライン講習と実践講習A・B・Cは、法人名義で支払う方法が用意されています。社内の資格支援制度とIPAの企業支払い手続きを確認してください。
本記事の文章・表・図解・グラフは、Skill Business Architecture Labが独自に編集・作成しています。引用・紹介する場合は、引用箇所が分かる形で、記事名・サイト名・記事URLをご記載ください。


コメント