PMP取得後に意味を感じにくい理由|個人の活かし方より先に見るべき組織の問題

PMP取得後に何かが変わったか。この問いに「変わった実感がない」と答える人は少なくないかもしれません。

PMBOKの知識を習得し、試験に合格した。しかし職場に戻ると、プロジェクトは相変わらず属人的に動いている。会議は増えるが意思決定は遅く、スコープは曖昧なまま拡大していく。PMPで学んだフレームワークを使おうとすると「うちのやり方とは違う」と言われる。

ここで重要なのは「PMPの知識をどう活かすか」という問いではないかもしれません。「なぜ、PMPで学んだ型が組織の中で機能しないのか」という問いかもしれません。

本記事では、PMP取得後に意味を感じにくい理由として挙げられる通説を整理した上で、プロジェクト管理の型が組織に定着しにくい構造的な背景を解説します。

この記事でわかること

  • PMP取得後に意味を感じにくい理由として挙げられる通説とその限界
  • PMPの知識が組織で機能しにくい構造的背景
  • プロジェクト管理の型を組織に定着させるために確認する価値があること

PMP取得後に意味を感じにくいとはどういう状態か

「活かせていない」と「活かす場がない」は別の問題かもしれません

PMP取得後に意味を感じにくい状態にも、二つのパターンがある可能性があります。

一つは「活かせていない」状態です。PMPの知識やフレームワークを理解しているが、業務の中で実際に使えていない状態です。知識はあるが実践に結びついていないケースがこれに当たります。

もう一つは「活かす場がない」状態です。PMPの知識を使おうとしているが、組織のプロジェクト運営の仕組みがPMBOKのフレームワークと合わず、個人の努力だけでは変えられない状況です。

この二つは似ているようで、対処が根本的に異なります。「活かせていない」なら個人のスキル開発や実践の場を増やすことが改善につながります。「活かす場がない」なら組織のプロジェクト運営の仕組みを変えることが先に必要になります。どちらのパターンに当たるかを確認することが、PMP取得後の悩みへの対処の出発点になるかもしれません。

PMPが組織にもたらし得る価値

個人のキャリアへの影響に加えて、PMPは組織にとっても価値を持つ可能性があります。

PMBOKは、プロジェクト管理の知識体系として国際的に標準化されたフレームワークです。組織内にPMP保有者が増えることで、プロジェクト管理の共通言語が生まれ、チーム間の意思疎通がしやすくなる可能性があります。

しかしこの価値が機能するためには、個人がPMPを取得するだけでなく、組織としてプロジェクト管理の型を採用する意思決定が必要になります。個人の資格取得と組織の仕組み変更は、別のレベルの問題です。


よく挙げられるPMP取得後に意味を感じにくい理由とその限界

通説① 実務経験が伴っていない

知識はあるが現場でプロジェクトを動かす経験が少なく、資格を活かしにくいという説明です。PMPの試験はシナリオ形式の問題が多く、実務経験なしには合格も難しいとされています。

実務経験の重要性は確かにあるかもしれません。しかし一つの問いを持つ価値があります。実務経験が豊富なPMP保有者でも、組織のプロジェクト運営が属人的・場当たり的な場合、PMBOKのフレームワークを個人として持ち込んでも機能しにくくなります。実務経験の問題というより、組織としてプロジェクト管理の型を持っているかどうかの問題かもしれません。

通説② リーダーシップ・ソフトスキルがない

資格があっても現場でプロジェクトを動かすリーダーシップやソフトスキルがなければ評価されないという説明です。PMPはあくまで知識の証明であり、実際にプロジェクトを成功させる能力とは別という指摘です。

ソフトスキルの重要性は否定できません。しかしここでも問いを持つ価値があります。優れたリーダーシップを持つPM(プロジェクトマネージャー)が組織にいても、プロジェクトの意思決定権限が曖昧だったり、スコープ変更のプロセスが定まっていなかったりする場合、個人のスキルで補える限界があります。

[日本企業プロジェクト構造論]でも整理していますが、日本企業では役職者がプログラム責任を兼任する構造が多く、PMが本来持つべき権限と実際に与えられる権限の間にギャップが生まれやすい状況があります。ソフトスキルの問題というより、権限設計の問題である可能性があります。

通説③ 維持・更新費用の負担

3年ごとの更新制で、PDU取得や更新費用(約555ドル+年会費)の負担があることが、「割に合わない」という感覚につながるという指摘です。

維持コストの問題は確かにあるかもしれません。しかし組織として「この資格を持つPMが必要だ」という位置づけがあるとき、維持費を組織が負担することは自然な方向性かもしれません。維持費が個人負担になっているとき、その背景に組織としてPMPを位置づけていないという判断の問題がある可能性があります。


PMPの知識が組織で機能しにくい本質的な背景

背景① プロジェクト管理の型が組織として定義されていない

PMPの知識が組織で機能しにくい最も根本的な背景の一つは、組織としてプロジェクト管理の型を持っていないことかもしれません。

PMBOKはプロジェクト管理の知識体系ですが、それをそのまま適用するのではなく、組織の状況に合わせてカスタマイズする「テーラリング」が必要とされています。しかしテーラリングを行うためには、組織としてどのようなプロジェクト管理の型を採用するかを先に決める必要があります。

[PMP資格の意味とは何か]でも整理していますが、PMP保有者が増えても、組織としてプロジェクト管理の型が定義されていないとき、各自がバラバラに知識を持っている状態になりやすくなります。共通の型がないと、コミュニケーションのコストが下がらず、PMBOKの知識が共通言語として機能しにくくなります。

背景② PMの権限と責任が組織として設計されていない

PMBOKの前提には、PMがプロジェクトの計画・実行・コントロールに対して一定の権限を持つという考え方があります。しかし日本の多くの組織では、実質的な意思決定権限が上位の管理職や経営層に集中しており、PMが動かせる範囲が限定されていることがあります。

権限のないPMは、プロジェクトの問題を発見しても解決策を実行できず、エスカレーションに時間がかかります。この状況でPMBOKの知識を持っていても、それを活かせる場面が生まれにくくなります。

PMの権限と責任を組織として設計することなしに、PMP取得者を増やしても、プロジェクト管理の質が上がりにくい構造が残り続けるかもしれません。

背景③ プロジェクトの成否基準が曖昧なまま運営されている

PMBOKでは、プロジェクトのスコープ・スケジュール・コストの制約をバランスさせることがPMの役割とされています。しかし組織としてプロジェクトの成否基準が明確でないとき、何をもってプロジェクトが成功したかの判断ができません。

成否基準が曖昧なまま運営されているプロジェクトでは、スコープが際限なく拡大したり、期限が曖昧なまま延長されたりしやすくなります。この状況でPMがPMBOKのフレームワークを使って管理しようとしても、基準がないために管理の効果が見えにくくなります。


プロジェクト管理の型を組織に定着させるために確認できること

組織としてプロジェクトの定義があるか

全ての業務がプロジェクトとして管理される必要はありませんが、どのような業務をプロジェクトとして扱い、どのような管理プロセスを適用するかの定義があることは、PMBOKの知識を活かす前提条件になるかもしれません。

「このような特性を持つ業務はプロジェクトとして立ち上げ、PMを任命し、スコープを定義する」という基準が組織にあるとき、PM(PMP保有者)が知識を活かせる場面が生まれやすくなります。

PMの権限範囲が明確になっているか

PMP保有者が実際にプロジェクト管理の知識を発揮できるためには、権限の範囲が明確になっている必要があります。どの判断をPMが単独で行えて、どの判断は上位者の承認が必要かが定まっているとき、プロジェクトの進行がスムーズになりやすくなります。

この権限設計は、PMP取得支援と同時に検討する価値があるかもしれません。資格取得を支援しながら、その知識を活かせる権限を与えない状態は、投資が機能しにくい前提条件を生んでいる可能性があります。


まとめ|PMP取得後の手応えのなさは個人より組織の問いかもしれません

PMP取得後に手応えを感じにくい状況は、個人の活かし方の問題として捉えられることが多いかもしれません。しかし組織としてプロジェクト管理の型を持っていない、PMの権限が設計されていない、成否基準が曖昧という状況が変わらない限り、個人がどれだけ知識を持っていても、機能させられる範囲に限界が生まれやすくなります。

この記事を読んで「自社に当てはまる」と感じたなら、その感覚を言語化してみることが最初の一手になるのではないでしょうか。「自社でPMP保有者が力を発揮できているプロジェクトと、そうでないプロジェクトの違いは何か」

その問いへの答えを探るとき、個人のスキルより先に、組織としてのプロジェクト管理の型と権限の位置づけが見えてくることがあります。

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